フィギュアスケートのグランプリシリーズ第2戦『スケートカナダ』が幕を閉じた。
「ネイサン・チェン選手は連戦となり、ほかに出場したのは、田中刑事選手や樋口新葉選手ら。一部の出場選手のビザ発給が遅れるトラブルはありましたが、無事に開催されました」(スポーツ紙記者)
第2戦は試合前にひと波乱が起きていたが、第1戦の『スケートアメリカ』は、波乱の試合結果だった。
「ネイサン選手がショートプログラム冒頭のジャンプで転倒してしまい4位に。フリープログラムでもジャンプのミスが続き、3位にとどまりました。'18年から続く連勝記録も、13でストップ。一方、日本の宇野昌磨選手は好発進。宇野選手史上いちばん難しいという構成に挑み、ネイサン選手を越える2位に輝きました」(同・スポーツ紙記者)
自らの試合を目前にして、羽生結弦はこの結果をどう捉えているだろうか。
羽生との共著『羽生結弦 未来をつくる』(集英社)を発売したばかりのスポーツジャーナリスト・折山淑美さんによると、
「ネイサン選手は、出だしが不調で、徐々に調子を上げてくるタイプ。羽生選手は“4回転アクセルを入れたプログラムを完成したい”、そして“ショートを完璧に滑りたい”ということに向けて集中しているので、ほかの選手の試合結果を気にしていないと思います」
と、“夢達成”に一直線だという。
羽生に立ちはだかるコロナの壁
「羽生選手が出場するのは、11月12日から東京で行われる『NHK杯』と、26日から'14年のソチ五輪と同じ会場で行われる『ロシア杯』です。しかし、羽生選手が初めて冬季五輪の金メダルを手にした“出発の地”で不穏な話が聞こえてきて……」(フィギュアスケート関係者)
いったい、どういうことか。
「ロシアでは新型コロナウイルスの感染者数や死者数が、急増しているのです。10月28日には、1日あたりの感染者数が初めて4万人を突破したとニュースになりました。対策として、10月30日からの1週間を、ロシア国内全土の企業や学校などを休みにする“非労働日”として、通勤通学を控えるよう呼びかけています」(現地ジャーナリスト)
医療ジャーナリストの村上和巳さんによると、感染拡大の一因には“ワクチン接種率の低さ”があるという。
「全世界で、ワクチンの2回目の接種を終えている人の割合は約38%です。日本は現在70%を超えていますが、ロシアは約33%しかいません。一部例外はありますが、日本のようにワクチン接種率が伸びている国は、ウイルスの生存環境が少なくなり、一時的に感染者数も減ります。ところが、ロシアはアフリカの国々と同じくらい接種率が低いので、感染が拡大してしまうのは、ある意味自然というか、当然というか……」
さらに、別の懸念も。
「ロシアでは、新たな変異株『AY.4•2』も発見されています。一部ではデルタ株より10%ほど感染力が増しているという発表がありますが、まだ情報が少ない。
ロシアは、ワクチン接種率が低いので感染が拡大しやすい。感染が拡大しやすいので変異株が登場しやすくなるという、いわば負のスパイラル状態なのです」(村上さん、以下同)
『ロシア杯』の開催までは、残り1か月を切っている。
「ロシアが独自で開発したワクチンは、“表面上”は効果が高い。しかし、国民からの国産ワクチンに対する信頼性が低く、接種が進まない。なので、1、2か月で状況が改善するような見込みはありません。ロシアは当面“ダークスポット”といえるでしょう」
ソチで開催されるメリット
今のところ、『ロシア杯』は開催される予定だが……。
「羽生選手は、昨年のコロナ禍でのグランプリシリーズを気管支ぜんそくの持病を理由のひとつとして欠場しています。感染が拡大している地域での試合には、人一倍不安を抱えていると思うのですが……」(前出・フィギュアスケート関係者)
しかし、前出の折山さんによると、昨シーズンの経験を活かせば乗り切れるそう。
「“どういうふうに感染を防げばいいか、だんだんわかってきている”と羽生選手本人が言っていました。大会の運営側も、ノウハウができてきています。そういう中での、細心の注意を払っての開催なので、大丈夫だと思います」
ソチで開催されることも、安心材料のひとつ。
「スケートの大会はすべて“バブル方式”という、選手やスタッフを泡の中に入れるように外部と接触させない方法で行っています。
モスクワなどの都市と比べて、『ロシア杯』が開催されるソチは人口が少ないので、外部との接触機会は減らしやすい。なので、開催に影響はないと思います。
羽生選手は、バブル方式での試合も昨シーズンに2回経験しています。そこでの対処の仕方もある程度わかっています」(折山さん)
ゆづは仙台でどう過ごしてる?
試合が近づく中、羽生はどのように過ごしているのか。地元・仙台で街の人に聞くと、
「昔は近所のスーパーで買い物したり、公園で遊んだりしていましたよ。高校生くらいのころには『アイスリンク仙台』の近くにあったCDショップにも、よく行っていたみたい。
でも、世界的な活躍をするようになってからは見かけなくなりました。だから最近の暮らしぶりは何もわからないんです。“あそこで見たよ”みたいな話も聞かなくって。ひっそり暮らしているんだと思いますよ」(仙台市民)
と、聞こえてくるのは、ずいぶん以前の話ばかり。比較的最近の出来事も本人は不在で、家族のエピソードだ。
「'14年に羽生選手が『ゼビオアリーナ仙台』に出演したとき、ご両親や祖父母などの親族一同で来てくださって。みなさんとても優しい方でした。'18年には、羽生選手の祖父母と、叔母さんがお手紙を持ってきてくださいましたよ」(『漁亭 浜や』あすと長町店)
そこで、観光アンバサダーを羽生に委嘱している仙台市観光課に、羽生が仙台市民にとってどんな存在なのか聞いてみた。
「仙台には、羽生選手が幼いころから、その後活躍して、世界へと羽ばたいていくのをリアルタイムで見ている方が多くいます。そのことが、羽生選手への愛着や親しみにつながっているように感じます。仙台市民は、羽生選手のさらなる活躍を心より応援しています」(仙台市観光課)
地元からの応援を糧に、不安を払いのける──。