買い物は、より安く買うことこそベストな節約法だと信じているのなら、考え直したほうがいい。
「安く買うのは節約の大前提ですが、それだけだと我慢ばかりで、次第に不満足な買い物が増えます。節約が楽しくなくなり、結局続かなくなってしまう。これまでたくさんの主婦の節約を見てきましたが、安値追求のせいで挫折したり、衝動買いに走ったりと、トータルで見ると節約になっていないケースはかなり多い」と語るのは、数多くの家計の相談にのってきたファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんだ。
プロが教える「6つの逆転節約術」
安いだけで気に入ってもいない商品を買っていると、発見も新鮮味もなくなり、人は無感動になる。この無感動は節約の意欲を妨げる最大の敵なのだ。
「コストパフォーマンスの点でも感動や新鮮さは大事です。初めて買うものは新鮮さがあるので満足度が高く、コスパがいいですが、同じものを買い続けると飽きがきてコスパが下がっていきます。コスパは値段だけではなく、満足感や幸せも重要な要素なのです」(山崎さん、以下同)
安いものを固定して買い続けるルーティン消費こそ要注意。新鮮さや驚きのない買い方はやめ、価格や買うものに意識的にメリハリをつけるのが効果的だ。
さらに言えば「買い物頻度」の低いバターやしょうゆなどは高級品を買ったり、ストレスがたまっているならコンビニで衝動買いしたりといった、節約の点では常識の逆と思われるようなことをあえてしたほうが、満足感を得られて本当のコスパもアップ、節約のモチベーションが上がるという。
「無感動で我慢ばかりの長続きしない節約は1日も早くやめて、幸せ感のある節約ライフにぜひ切り替えてください」
山崎さんに教えてもらった「逆転節約術」をご紹介する。
バターとしょうゆは高いモノを買う!
毎日食べるものは安いほうがいいと思い込んでいるが、ときにはこのルールからはずれてみよう。1回の消費量が少なくて長持ちし、買う頻度が低いものは、あえて高級品を買うのだ。例えばバターやしょうゆ。
1個約1500円のカルピスバターや特売品の2~3倍はする高級しょうゆは、いままでの“節約道”からは考えられない。でも、使いきるのに1か月半とか2か月かかるとすれば、1日あたりのコストはごくわずか。バターを60日間で消費するとしたら1回25円、これを6枚150円の食パンに塗れば1枚50円にもならない。
「食パンは安いものにして、それに高級バターを塗る。一度試してもらうとわかりますが、驚きのうまさです。150円の菓子パンを食べるよりずっと安いのに、幸せ度はそれをはるかにしのぐ。しょうゆにしても、閉店前のスーパーでお刺身を半額でゲットして、高級しょうゆで食べれば、満足度は比べ物になりません」
節約しながら満足度の高い買い物をしようと思ったら、より重要なのは購入単価より1日あたりの単価なのだ。「買う頻度」に注目するという視点を持てば高い買い物もでき、楽しみながらの節約も実現できる。
「今日のお買い得品」には手を出さない!
「今日のお買い得品!」というポップを見て、ラッキーとばかりにすぐにレジへ。この条件反射的な買い物は今すぐ見直そう。本当はそれほど安くないケースがあるからだ。
「その店の通常価格より30円とか50円くらいは安くなっているかもしれませんが、そもそもその店の通常価格が他店より高い場合も。たとえ値下げはされていても、結局はお得ではないことになります」
近隣のスーパーやドラッグストアは競合しながらも共存するため、商品ごとに得意分野のすみ分けがされている。商品によって最安値の店が違うので、「今日のお買い得品」が本当の安値とは限らない。
ポップにだまされず、お買い得品をあえてスルーする。これを可能にするのが日ごろからの「値段メモ」だ。スマホのメモ機能を使って「柔軟剤 〇〇円 T薬局」と記録するだけでOK。
「本当にお買い得なの?」と思ったら値段メモをチェック。ポップより自分の記録のほうがはるかに信頼できるのは言うまでもない。
大きな買い物のときはカフェでお茶する
欲しいものを見つけて手に入れる瞬間は至福だが、「見て吟味する」と「買う」の2つを分断するのが、お金をムダにしないためには大事だ。
「金額が大きい買い物はいったん店を離れるのが重要なポイント。店内で考えると『買わない』という選択をしにくくなります。『見る』と『買う』の間に『カフェでお茶する』を挟むのがおすすめです」
洋服を試着したときから店員がべったりついてくるのも、テレビ通販で「注文は24時まで!」とせかすのも、買う側に考えさせないため。そうやって買ったものは後悔することも多い。そんな目にあわないよう、お茶代がかかっても一度ものから離れてみる。
「私はいつも『見る時間』では店員と話もせず、見るだけ見たらカフェでじっくり検討します。あえてちょっと高いフラペチーノを頼むくらいのほうが、腰を据えてじっくり判断できます」
500円のフラペチーノ1杯で1万円以上の買い物の失敗が防げれば、むしろ賢い節約になる。
ストレスがたまったときは衝動買いする
衝動買いをしたいときは誰にでもある。ストレスがたまっていたり、疲れていたり、頑張った自分をほめたかったり。そんなときは、あえて思い切り衝動買いしてみる。ただし、コンビニで。
「コンビニの商品は単価が低いので、高いといっても知れています。また、有名パティシェ監修のスイーツやコンビニブランドの話題の新作などが次から次に発売されています。わずかな額でワクワクできる満足度が高い買い物ができるのです」
3万円の洋服を衝動買いして後悔することに比べれば、450円のスイーツだって安上がりこのうえない。何より思い切り買い物を楽しんだという満足感は節約のストレス解消となり、長続きの原動力に。
家電はまだ使えるうちに買い替える
家電は値が張るだけに、壊れるまで使うのが正しい節約のように感じるが、「あえてまだ使えるうちに買い替えるほうがお得なこともある」と山崎さん。
家電は省エネ化が進んでいて、以前のものに比べると消費電力が半分近くになっているものも。特にエアコンや冷蔵庫など、熱を発する家電は電力を食うので、購入してから5年以上たっていたら要検討だ。
季節はずれだと値下がりしていても、冬場にエアコンや暖房器具が壊れたら、たとえ納得できない価格でもすぐに購入せざるをえない。壊れるまで使ったことで高くつく場合もあることを肝に銘じたい。
ランチの満足度を高めるためにサイゼリヤに行く
たとえ節約の役に立っても、変化のない消費はつまらないもの。外食のランチも同じだ。予算が800円だとしたら、あの店かこの店と固定化しがちだが、そんな無感動ランチの繰り返しは満足度をすり減らすだけ。
「ランチは意図的に予算より低い日と高い日を取り入れるべき。例えば1日はサイゼリヤなどで安くすませ、ほかの日は数百円高いものを食べる。使う総額は同じでもメリハリをつけるだけで満足感が上がるはずです」
では、安くすませる日は不満足かといえば、そんなことはないという。いろんなメニューを試したり、安くて満足いく組み合わせを探したりと、たまにならゲーム感覚で楽しくなってくる。
「私は定期的に牛丼店に行きますが、その日が楽しみなくらい。おすすめなので、ぜひランチにも変化をつけてみてください」
(取材・文/野沢恭恵)