小栗旬主演の日曜劇場『日本沈没‐希望のひと‐』(TBS系)の初回から第3話までの平均視聴率が、15・7%と、高い数字をキープしている。
「'73年に発売された小松左京氏の不朽のSF小説が原作。これまで何度もドラマ化や映画化がされており、昨年には、動画配信サイトのネットフリックスで『日本沈没2020』として初のアニメ化もされました」(テレビ誌ライター)
今作では主人公を含めた登場人物のほとんどがオリジナルキャラクターに。'23年の東京に舞台を移し、原作でも描かれていた“環境問題”が現代版にアレンジされている。
新たなビジネスモデル
「小栗旬さんや杏さん、松山ケンイチさんといった主演クラスが顔をそろえていて、局の看板枠である『日曜劇場』への本気度が伝わってきます」(同・テレビ誌ライター)
初回放送日の直前には、関東で震度5強の地震が発生するなど、地震に対する危機感も相まってドラマへの注目度も上がっているが、着目すべき点はほかにも。
「『日本沈没』は放送直後の深夜0時から毎週1話ずつ、ネットフリックスで世界190か国以上に一斉配信されています。TBSは今夏放送された鈴木亮平さん主演の『TOKYO MER~走る緊急救命室~』について、動画配信サイトのディズニープラスでの世界配信を10月27日から開始することも発表しています。これは日本ドラマでは初となる試みで、動画サイトでの配信に力を入れ始めているんです」(スポーツ紙記者)
テレビ解説者の木村隆志さんは、テレビ局が動画配信サイトと手を組むメリットについてこう語る。
「インターネットの広告費がテレビの広告費を超えるなど、これまでテレビ局が採用してきた、スポンサーからの広告収入による従来のビジネスモデルでは立ち行かなくなってきたという現状があります。
それ以外の収益源を確保する必要に迫られ、目をつけたのが動画配信サービス。再生回数によっては莫大な配信料を得られますし、世界配信をすることで国外のファンを獲得して、最終的にはビジネスの可能性を広げるところまでを目指しているんでしょう」
『日本沈没』は第1話の見逃し配信再生回数が261万回を記録。日曜劇場の初回放送の中では歴代1位の再生回数となっただけに、世界的ヒットも期待できそうだが……。
「海外の映像作品評価サイト『IMDb』では2573位と、注目が集まっているとは言えず苦戦していますね」(映画ライター)
『日本沈没』が海外でウケない理由はどこにあるのか?
生き残りをかけた“海外ウケ”
「日本のドラマは日本の社会を経験していないとわからない、日本人特有の文脈を含んでいることが多いため、海外ではなかなか理解されにくいんですよね。リメイクなどで国境を超えることはあっても、そのままの形で海外公開されることは稀。
興行収入が80億円を突破した映画『シン・ゴジラ』が世界でヒットしなかったのもそのあたりが理由だと言われています」(ドラマ評論家の成馬零一(なりまれいいち)さん)
脚本チームの構成にも、問題があるという。
「日本のドラマは1人だけで脚本を担っている場合が多く、脚本家の個性が反映されたオリジナリティのある作品が生まれやすい、という一面もあります。
しかし海外では、基本的に複数の作家で脚本を担当していて、日本とは比較にならない莫大な予算もある。そのため日本では実現できない、スケールの大きな長編作品を制作することができるんです」(成馬さん)
予備知識がないと作品を楽しめない。そんな脚本の“内輪ノリ”が世界進出の弊害となってしまっているようだ。しかし前出の木村さんは、日本のドラマの今後に期待を抱いていると話す。
「映像の技術やノウハウ、経験値はすでに世界で通用するレベルにあります。今回、『日本沈没』の世界配信が実現できたのも、スポンサーからの信頼が厚い“日曜劇場”という看板があったからでしょう。今後、生き残りをかけて民放各局が戦いの場を世界に移していく中で、海外からの評価を意識したドラマ制作が主流になってくると思いますよ」
TBSの新しい試みは、テレビ業界の“希望”となりそうだ。