すき間をなくして立てて収納

 “1円でも安く”とがんばって買い物しても冷蔵庫がぐちゃぐちゃなら、お金は確実に出ていっています。冷蔵庫の中を見れば、その人の家計の状態がわかるといわれるように、節約のキモは冷蔵庫の使い方にあるのです。年末に向けて出費が増えやすいこれからの季節。スッキリと見直して財布の中身に余裕を持たせましょう。

月に3000円もの食材を捨てている!

「家庭でムダにしてしまった食べ物を、お金に換算してみてください」

 と話すのはライフオーガナイザーの大野多恵子さん。

「日本国内における食品ロスは年間500万トン~800万トン。コンビニなどさまざまな場所から出ていますが、家庭からのロスがいちばん多いんです」(大野さん、以下同)

 捨てている食材をお金に換算すると、一家庭で平均して月3000円ほどになるというから驚き! 3000円分となれば、買い物袋がいっぱいになるくらいの量。それを全部捨てているなんて……。

「食品ロスは、大切なお金を失う行為。そしてその原因となるのが、冷蔵庫の収納にあるんです」

 冷蔵庫の扉を開けてみて、食材がパンパンに詰め込まれていたり、奥のものが見えにくい状態なら要注意。使い切れない食材が生まれやすく、捨てることになればお金のムダに直結。

「冷蔵庫は食材を収納する場所ではあるものの、“常に使い切る”ことにフォーカスすることが大事です」

冷蔵庫収納の2ステップ
「大片づけ」で土台をつくれば、普段の片づけは一気にラクに!

冷蔵庫 ※画像はイメージです

STEP1 ゴミ・美味・ギリギリに分ける

「まずは“大片づけ”で、今の状態をリセット」と大野さん。冷蔵室、野菜室、冷凍室と、庫内にある食材をすべて取り出し、仕分け作業をするのが最初のステップ。

 分け方は、食材の鮮度別に(1)賞味期限や消費期限がかなり過ぎている、傷んでいて食べられない=ゴミ(2)まだおいしく食べられる=美味(3)早めに食べたいもの=ギリギリ、の3つに分類。

 このとき、赤、緑、黄の信号色の布を敷いて、その上にゴミは赤、緑は美味、ギリギリは黄色、というふうに分けると一目瞭然。マスキングテープで仕切りを作り、仕分けてもいい。

「美味とギリギリの食材のみ冷蔵庫に戻します。調味料はドアポケットにまとめ、細かい食材は透明の容器に仕分けるなどし、見えやすく使いやすいように収納してください。具体的には、次ページで紹介する“見えない型の収納法”を参考に」

 そして、ゴミに分類された食材はゴミ箱行きとなるのだが、このとき「なぜゴミになったのか」を考えるのが重要!

「原因を見つけて対策を練ることで、リバウンドが防げます。買い物の仕方や、料理の方法が原因となりやすいので、自分の行動パターンをあぶり出し、対策をしましょう。あとは日々の“小片づけ”で、散らかり冷蔵庫とは永遠にさよならです」

なるべく早く召し上がれの“なるべく”とは?

「開封後はなるべく早くお召し上がりください」と表示されているが、冷蔵庫保存をしていた場合、目安となる期間は左記。もちろん、「においを嗅ぐ」「色を見る」などの感覚で判断することも必要。

●豆腐 1~2日
●牛乳 2~3日
●プレーンヨーグルト 2~3日
●バター 2週間
●缶詰類 1~2日
●めんつゆ 1~2週間
●マヨネーズ 1か月
●ジャム 2週間

違いがわかる?

【消費期限】
 弁当や惣菜など、品質の劣化が早い食材に表示されることが多く、この期間を過ぎると衛生上の危害が生じる可能性が高くなるというもの。
【賞味期限】
 缶詰やスナック菓子など、品質が比較的長く保持される食品が多く、この期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではないもの。

「消費」は品質の劣化が早く、「賞味」は劣化が遅いという特徴が。賞味期限のものは「1日でも過ぎたら捨てなくては」と思う必要はなし。多少過ぎてもOK。

STEP2 タイプ別に傾向と対策を練る

 リバウンドしないためには「収納」「買い物」「料理」という3つの行動にカギが! チェック項目が多いところがあなたのタイプ。以下で紹介する対策法の実践を。

タイプ:見えない型 対策:収納
□冷蔵庫の奥に何が入っているかわからない
□食材を取り出すのに時間がかかる
□家族に「○○どこ? 」と、よく聞かれる

タイプ:ため込み型 対策:買い物
□目的がなくても買い物に行くのが好き
□お得、安売りを見るとつい買ってしまう
□ストックがたくさんないと不安

タイプ:手作り料理多め型 対策:料理の見直し
□いつも手作り惣菜のストックが大量にある
□多く作りすぎて、時々捨てることがある
□家族が残すことが多い

タイプ:珍し食品多め型 対策:料理力アップ
□珍しい食材、調味料があるとつい買ってしまう
□食品の土産もの、もらいものが多い
□調味料、もらいものを使い切れず、捨てることが多い

「見えない型」は収納法を見直す

 ぎっしりと食材が詰まって奥に何が入っているかわからないタイプ。食材を使うたびに、「あれ、どこいった? 」となる人は収納法を徹底的に見直して。

「美味」と「ギリギリ」を庫内に戻すときに、なんとなく入れてしまうと元の木阿弥。定位置を決める、空間を空けるといった基本テクニックで、散らからない仕組みづくりを確立させよう。

収納ポイント

(1)定位置決めと見える化は必須
 ドアポケットなど、入れるものが決まっている場所から取りかかる。「ドリンクや調味料はドアポケット、卵は卵ケース、肉・魚はチルドへ。その後、空いている空間に、その家庭ならではの指定席を決めます」。このとき、空間を空けて収納を。「取り出しやすく、食材がすべて見渡せるように、ゆったりと配置を」

(2)透明な容器が役立つ
「見えない」は使い忘れにつながりやすい。食材を入れる容器は、深さが浅く、透明なものがベスト。中身が見え、食材が取り出しやすくなるので、扉を開けてカゴを引き出して、その中をのぞき込んで、食材を探す、という手間も減らせる。

(3)冷蔵室下段はフリースペース
 いちばん広い下段は、空けておくのがおすすめ。「一時置き場として活用。鍋ごと入れたり、ケーキを箱のまま入れたりという具合。食べてしまえば、また空いた空間になります」。定番品はドアポケットや上の段が指定席となり、下段は日々変わる食材を入れる場所、とルール決めを。

(4)野菜室と冷凍室は立てる収納
 引き出し式の野菜室と冷凍室は、「立てる」のがお約束。「上から積み重ねる収納はNG。使い忘れにつながります。便利なのがブックエンド。本棚のように立ててしまいやすく、仕切り代わりにも」。野菜室のスライドケースには、使いかけの野菜をカゴにまとめて入れて。

「ため込み型」は買い物の仕方を変える

 買い物自体が好き、お得などの言葉に弱い、在庫がないと不安な人が多い「ため込み型」。「大片づけで、食材がたくさん出てきた人や、“ゴミ”や“ギリギリ”が多かった人は、在庫が多すぎる証拠。買い物の頻度や量を見直す必要があります

 必要な量だけ買う習慣をつけることが、すっきり空間をキープする秘訣だ。

買い物の仕方のポイント

(1)在庫が多すぎたら買い物に行かない
「美味」と「ギリギリ」を庫内に戻しても、まだ食材がたっぷりと入っているようなら、しばらくは買い物に行かず、使い切ることを優先。「思った以上に何日分もの食材があった……という人は多いです。在庫を減らしながら、1日にどのくらいの食料が適正なのか、改めて考えてみて。ついつい買ってしまう悪習慣を絶ちきりましょう」

(2)買い物は必ずメモ持参で
 メモには、買うものと、いま庫内にあるものを書く。「主に、早く食べてしまいたいギリギリのものを書きます。これらを使い切ることを優先して献立を考え、買い物をします」。余ったものやギリギリのものから使い切る。その流れが「いまあるものメモ」でできていく。これが食材のムダをなくす大切なコツ。

(3)買い物頻度を見直す
 冷蔵庫は「一時置き」の場所であり、買って、置いて、食べるというサイクルを意識したい。「毎日買い物に行くなら、1日で食べられる量を。週に1回の買い物なら、1週間で食べられる量を購入。食材が余るなら、買い物頻度が多いか、買う量が多いという証拠です」

■体験エピソード:すべてにチェックがついた末期的な冷蔵庫が激変!
 高校生と大学生の息子をもつKさん(50代)。食べ盛りの子がいることもあり、作りすぎた惣菜や、ストック食材などで、冷蔵庫はいつもパンパン。チェックリストではすべてに該当したほど。「このままじゃいけないと一念発起して大片づけ! 奥からは古くなった食品がたくさん出てきて大反省でした。冷凍室にもいつ入れたかわからない食品が大量に。大野さんの指導をもとに散らからない仕組みをつくってからは激変。リバウンドもなくなり、冷蔵庫だけでなく家中もきれいになって、その後片づけの資格までとってしまいました」

「手作り料理多め型」「珍し食品多め型」は料理を見直す

 前者は、家族思いで大量に惣菜を作りがちなタイプ。多く作りすぎて、家族に飽きられ捨てることになったり、煮物は大鍋で作らないと……といった固定観念があるかも。

 後者はグルメで交友関係の広い人タイプ。「料理」を見直すと同時に、料理力のアップも課題。

料理のポイント

まとめて作り置きして最終的に食べ切れずゴミになっていない?

(1)作り置き惣菜の量を見直す
 惣菜を多めに作る人は、余ったら捨てるのが習慣になっていることが多い。「家族構成が変わったのに、多めに作る習慣が抜けない人も。作る量を見直しましょう」。また料理はレシピどおりばかりではなく、あるもので作るのが理想。「そうめんや春雨を使って焼きそばを作るなど、意外な組み合わせを楽しむ料理力も身につけたいですね」

(2)「消え物」の贈り物が鎮座
「贈り物には、消え物がいいといいますが、意外にももらった側が食べ切れずに余らせているケースが多いんです」。いつまでも保存しておかずに、感謝の気持ちを大切にしつつ、周囲に配ったり、料理に活用するなど、積極的に使い切るよう意識して。

(3)調味料は持ちすぎない
 調味料は「開封後は冷蔵保存」と書かれたものが大多数。しかも「開封後はお早めに」ともあり、使い切れずにゴミになりがちな食品。「便利そうというイメージから、○○のタレなどがどんどん増えてしまいがち。買うときは、使い切れるか自問しつつ購入を」

 ちなみに、大野さんは、なるべく基本調味料しか持たいないようにしている。

冷蔵庫の収納力をアップする0円&100均アイデア

身近なアイテムを使って使いやすく収納するコツをレクチャー。

冷蔵室…アイテム別にして取り出しやすく

片手で取れるドリンクケース

1ケースに4本の缶ビールが収まる100均グッズ。バラつかないので見た目にもスッキリ。片手で取り出せてラク

 1ケースに4本の缶ビールが収まる100均グッズ。バラつかないので見た目にもスッキリ。片手で取り出せてラク

ドリンクはカゴにまとめても。このとき、傾斜がつくように、裏側にクリップやペットボトルのふたを貼り付ける。1本取ると、次が手前に転がってくる仕組み

 ドリンクはカゴにまとめても。このとき、傾斜がつくように、裏側にクリップやペットボトルのふたを貼り付ける。1本取ると、次が手前に転がってくる仕組み

小袋ものはクリップでつるす

使いかけのかつお節や小袋調味料などは、文具用のクリップでドアポケットに挟む。目につきやすく、使い忘れにくい

 使いかけのかつお節や小袋調味料などは、文具用のクリップでドアポケットに挟む。目につきやすく、使い忘れにくい

野菜室…葉物と根菜を分けておいて

葉物は「立てる」が原則

 ほうれん草などの葉野菜は、ペットボトル容器にイン。ボトルの上部をカットし、手を切らないよう、切り口にビニールテープを巻く

紙袋で仕切ってすっきり

 上部を外側や内側に折り込んだ紙袋に、根菜類を入れて。土などで汚れてもすぐに変えられて衛生的。食材別に分ければ庫内スッキリ

冷凍室…すき間をなくして立てて収納

すき間をなくして立てて収納

ブックエンドできれいに整列

 転倒防止にブックエンドを活用。仕切り役にもなるので、肉、魚、冷凍食品など種類別に分けるのにも便利。在庫管理が一目瞭然

かさばる外箱はオフ!

 箱入りアイスをそのまま入れると、かさばる。冷凍用保存袋の上部を外側に折り、筒状にして立てて中身だけ収納

冷蔵室は7割以下冷凍室は7割以上に

「見える、まとめる、取り出しやすいが、冷蔵庫収納のキーワード」

 と話すのは冷蔵庫収納&食品保存アドバイザーの島本美由紀さん。食材は種類別に分け、ごちゃつくものはカゴやトレーにまとめるといい。

「かといってカゴを多用するのは避けて。冷気をふさいで、食材が傷みやすくなってしまいます。浅いトレーか、メッシュ状のカゴを選ぶといいでしょう」(島本さん、以下同)。

 加えて冷蔵室は、7割以下の収納を心がけたい。

「それ以上だと、奥のものが見えにくくなり、使い忘れてしまうし、冷気も回りにくいからです」

 逆に冷凍室は、冷凍食品同士で冷やし合うので、7割以上詰め込むのがおすすめだ。

家庭の食品ロスでいちばん多いといわれる野菜は、在庫が見やすいようペットボトル容器などを使って立てて収納しましょう」

 畑で生えていたのと同じ状態を保つと、鮮度も長く保たれるというメリットが。

「次いで、ムダになりがちな出番の少ない調味料は、開封した日付を書いておくといいですね」

「冷蔵庫で家計が変わる!」
大野多恵子さん●ライフオーガナイザー、ハッピー冷蔵庫アドバイザー。片づけ・整理の資格を取得し、冷蔵庫の整理や活用法について多くの講座を開催。著書に『冷蔵庫さえ片づければ、なにもかもうまくいく』(竹書房)
「在庫がすぐにわかるのがベスト!」
島本美由紀さん●料理研究家。ラク家事アドバイザー。冷蔵庫と食品保存のスペシャリストとして、テレビや雑誌を中心に幅広く活躍中。『栄養素も鮮度も100%キープ! おいしい冷凍保存術』(宝島社)など著書多数。

《取材・文/樫野早苗 撮影/山田智絵(アイデアグッズ収納)》