10月31日投開票が行われた衆議院議員選挙で、各局が選挙特番を組んで開票結果を逐一報じた。それぞれメイン司会やMCを立てて、各党の党首や現職大臣、注目の候補者らと中継を結んでは生討論を繰り広げたのだが、TBS系の『選挙の日2021 太田光と問う!私たちのミライ』の放送内容をめぐって大炎上が起きている。
中でも集中砲火を浴びているのがスペシャルMCを務めた、お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光だ。スポーツ紙芸能デスクがことの経緯を解説する。
「立憲民主党の枝野幸男代表らとの中継時に、“僕は立憲民主党に入れたんですけど”とまさかのぶっちゃけ。投票が締め切られた後の発言ですから法的にはセーフですが、公平な立場で仕切るべき番組司会としては少々問題ありと言えます。ただ、炎上の原因となっているのは、与党である自民党の大物たちを前にした発言と態度でした」
自民党幹事長の甘利明氏との中継で、まさかの苦戦を強いられていた同氏に対して《相当ショックな状態になってると思いますので、いろいろこれから考えてください。ヒャッハッハッハ。ご愁傷さまでした》と笑いながら言い放ったのだ。
二階氏に「死ぬまでやる?」
「他にも“日焼けしてますけどゴルフ焼け?”“これもう戦犯ですよ?”などと、投げかけられた甘利さんは終始苦笑いを浮かべるしかなかった。確かに“政治とカネ”問題で説明責任を果たしたとは言い難く、これに“よく言った”などと太田の姿勢を支持する声も見受けられました」(同・芸能デスク)
さらに、太田の“暴走”は止まることはなかった。当選が決まった前幹事長の二階俊博氏を相手にとり、《二階さんはいつまで政治家続けるつもりですか?》《死ぬまでやると?》と82歳の高齢であるからか、その去就について触れたのだ。
「この質問に“失礼だよ!”と不快な態度を示す二階さんに、“失礼じゃないよ、当然国民の権利じゃん、そんなの聞くの”とタメ口で応戦。ここで時間切れとなると、太田は“ダメだな。向いてないな、オレ”と反省の態度を見せたと思いきや、インタビューが中途半端になったことに対する反省でした。
フジテレビ系の選挙特番にコメンテーターとして出演していた橋下徹氏も、同様に候補者と激しいバトルを繰り広げてはいましたが、『れいわ新選組』の山本太郎氏への“詐欺師的”発言以外は一応の礼節は踏まえていました。太田が、国民が知りたいことを忖度なく聞いたのは評価すべきですが、“選挙特番の顔”としての態度と礼儀のなさが問題視されているのです」(同・芸能デスク)
放送翌日、太田の代わりに《皆さまのご指摘。ご愁傷様についてです》と見解を自身のツイッターで綴ったのが妻で、事務所社長の太田光代氏だった。
《この言葉。決して悪い言葉ではありません。ご愁傷様は、おきのどくさまです。です。漢字でもご理解いただけるように。ご愁傷様です。これは、心を慮りのゆえです》と、甘利氏へ向けた言葉は決して悪い意味ではなかった弁明。
さらに《アーリンに礼節など無理です。ただ、皆さんは礼儀正しく美しく。生きているのですか? そんな人は芸人出来ません。少なくとも馬鹿ですよ。芸人は》と、芸人・太田の立場を擁護してみせたのだった。
ところが、これが火に油を注ぐ形となり、ますます燃え広がる騒動に。光代社長が言う通り、確かに太田は“芸人”であることを貫いたのかもしれないが……。
「サンジャポ」のノリで選挙特番
「選挙特番はバラエティー番組ではありません」とは、キー局報道番組ディレクター。
「太田さんは、自身が出演するTBSさんの『サンデージャポン』と同じ“ノリ”で臨んでしまったのではないでしょうか。同番組は“ジャーナリズム・バラエティー”と謳っているだけに、MCの爆笑問題とレギュラー陣と一緒になって時事問題やニュースを面白おかしく取り上げる内容になっています。
たとえ太田さんがボケて笑いに走ったり、ゲストをいじり倒したとしても“バラエティーだから”と許して見られる部分があります。でも、国の未来と国民の生活を左右する国政選挙で、それを伝えるのが選挙特番。TBSさんは独自の色を出そうとしすぎたのでは?」
NHKや民放キー局が、それぞれ一斉に開票結果を伝える選挙特番ではどうしても互いに似た番組構成になってしまうのも事実。そこで、少しでも他局との差別化を図るために、選挙特番初挑戦という不安はあれども、忖度なしにズバズバ切り込む太田に白羽の矢が立ったのだろう。彼は自分に課せられた仕事を全うしたとも言える。
「それでも太田氏の発言は到底受け入れられるものではありません」とは与党関係者。
「政治の世界では、与野党に関係なく“発言は否定しても、人格や人間性は否定するな”という不文律があります。テレビで、しかも生放送の場で強く言い返すことのできない公人に対して、一方的に批判をする、それこそ“誹謗中傷”とも取られかねない言葉ではないでしょうか。もちろん、司会者やMCの立場で本音を引き出したい気持ちはわかりますが、怒らせることを、また陥れることを前提とした質問や中継には疑問に思います」
“怒らせたら勝ち”で視聴率アップ
この「わざと怒らせる」のは太田に限らず、選挙特番における常套手段だとも。前出の報道番組ディレクターが明かす。
「ニュースに政治家が出演した時にも言えますが、例えば党員の汚職や不祥事、政策の矛盾点や公約違反などは徹底的にしつこく追及します。それこそ太田さんほどでなくとも、少々煽るような言い方をするよう指示が出ることも。すると、それまで平静を保っていた政治家がイライラして本音をこぼしたり、不満げな表情が大写しされるのです。
そうなればもうこちらの“勝ち”で、“はい、お時間です。ありがとうございました!”と中継が切られることも。今回もテレビ東京系で特番を任された、“池上無双”でお馴染みの池上彰さんにも通じる手法ではないでしょうか」
さらに、最近の司会者やMCに見られがちなのが、“独りよがり”のインタビューだという。前出の与党関係者もうんざりした様子だ。
「とにかく前にしゃしゃり出て持論を話したがる。1つの質問において、まず自分が言いたいことだけを長々と主張して、相手側の答えを最後まで聞かずに“はい、時間です”と(苦笑)。知ったか風で自身の能力を高く見せたがる司会者が多いのです。本来は政治家が何を考えているのかを聞き出して国民に届けることが彼らの仕事のはずですが、局側も視聴率さえ取れればいい。太田氏の振る舞いも“よし”としていたのではないでしょうか」
蓋を開けてみれば、選挙特番を制したのはNHKで世帯視聴率17.7%を記録。一方で、6.2%と民放最下位に沈んだのはTBS系だった。どうやら政治家だけでなく、視聴者の機嫌も損ねていたようで。