「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
長谷川京子(2019年)

第65回 長谷川京子

 女優・長谷川京子(以下、ハセキョー)がポルノグラフィティ・新藤晴一と離婚を発表しました。驚いた方もいるでしょうが、私には離婚は既定路線というか、何年も前から危ういものを発していたように思えるのです。

 ハセキョーと言えば、ここ最近、見た目の“変化”が話題に上がることが増えていました。顔も身体もどんどん変わっていく。変化に対する受け止め方は人それぞれですが、それよりも、私がヤバさを感じたのは、彼女の服装なのでした。

露出過多に感じる“夫の存在感の薄さ”

ベストジーニスト賞で、“広い背中”を見せた長谷川京子

 2019年にハセキョーは「第36回ベストジーニスト2019」の「協議会選出部門」を受賞します。胸の谷間が少し見える黒のキャミソールとデニムで登壇したのですが、ふとしたときに後ろを向いたところ、背中がぱっくり開いていることがわかります。日ごろのトレーニングの成果というか、贅肉のないすっきりした背中を見せたかったのかもしれません。むきだしの背中から推察するに、ノーブラということでしょう。お子さんを産んでなお、美しい背中とバストを維持する女性芸能人は尊敬されますから、これは彼女のお仕事の範疇と言えるでしょう。

 しかし、どうも、露出は仕事のときに限らないようです。今年の5月30日、《子どもはやはり、デニーズが好き》というコメントとともにインスタグラムにアップされた画像は、またしても胸の谷間が見えたもの。仕事で必要に駆られているわけではなく、ビーチでもない。家族連れが多いファミレスという場所での露出は、あまり適切ではないように個人的に思いますが、私の意見などどうでもよい。この状態がほのめかすのは、夫の存在感の薄さ、会話の少なさではないでしょうか。

 大人になると、多少おかしなことをしていても、正面切ってそれを他人に指摘されることは少なくなります。例えば最近の日本の気候はほぼ熱帯と化していますが、夏場、外回りをしてきた営業マンが、汗をかきすぎてクサいとします。職場の人たちは迷惑だと思ってもデリケートな問題なので、「クサいですよ」とは言いにくいもの。こういうとき、頼りになるのが家族だと思うのです。信頼する家族に指摘されれば「そうだったのか! 気をつけなくては」と思うでしょうし、「言ってくれてありがとう」と家族に感謝もするはずです。

 しかし、家族であっても精神的な距離が遠いと、相手がクサいことにすら気づかないこともあります。また、家族との関係性がよくない場合、家族の指摘を頭から聞き入れないこともあります。そんなことが続くと、家族も「もう注意してやらない、会社でクサいと思われればいい」とさじを投げることもあるでしょう。

 服装やにおいのように、直そうと思えば簡単に直せることを放置すると「ヤバい人」と言われがちです。しかし本当にヤバいのは、その背後にある、夫婦もしくは家族とのコミュニケーション不全ではないでしょうか。

プライドを傷つけられた夫の不倫疑惑

 夫の精神的不在を証明するかのように、『グータンヌーボ2』(関西テレビ系)にレギュラー出演するハセキョーの発言がどんどん過激化していきます。1月の放送回で、ハセキョーは現在もモテたい願望があると明かし、「おもしろいお姉さんでもいいけど『長谷川京子とだったら付き合ってみたい』という選択肢に入りたいんですよ」と話しています。仕事ですし、バラエティー番組ですからリップサービスも必要でしょうが、こういう発言が続くと「あれ、この人、結婚してなかったっけ?」と疑問に思う視聴者もいるはず。

 芸能人の不倫はイメージダウンにつながりますが、恋心を持つことは責められることではありません。ですから、既婚の女性芸能人が「“推し”を見てときめきを補充する」くらいのエピソードを披露して笑いを取ることはあります。しかし、ハセキョーの場合、発言が露骨すぎるのと露出過多な服装が相まって、恋心を飛び越して「オンナとして扱われたい」という叫びに感じられてしまうのです。もしハセキョーが本当に「オンナとして扱われたい」と思っていたのだとしたら、それは実生活で「オンナとして見られていない」という飢えがある、もしくは夫に対して落胆があったことをほのめかしてはいないでしょうか。

新藤晴一、長谷川京子(2018年)

 しかし、そこで他の男に走って写真週刊誌に撮られたりしないのが、ハセキョーのすごいところ。3月放送の同番組では、ハセキョーは夫婦喧嘩する理由について「子どもいると子どものこととかで。あと仕事で長く家とか空けていたりすると『配慮が足りないよね』みたいなことは言ったりします」と打ち明けています。仕事だから家を空けても仕方がないと言ってしまえばそれまでですが、それを言うなら、ハセキョーだって仕事をしています。おそらくワンオペに近い育児で、仕事をしながら、お子さんのお受験を成功させて見事名門小学校に合格させているのですから、本当にたいしたものです。

 一方、元夫はどうでしょうか。独身時代と意識も生活も変わっていなかったのかもしれません。新藤と言えば、2015年に『FRIDAY』(講談社)に《ポルノグラフティ新藤「妻・長谷川京子も知らない」浮気現場》というタイトルで、不倫疑惑が報じられています。記事を読んでみると、不倫の決定的な証拠が掲載されているわけではないので、不倫だと決めつけるのは無理があると思います。しかし、仕事と子育て、お受験の準備をこなしていたハセキョーにとって、こういう報道が出ること自体、妻として母として女優として、プライドを傷つけられたかもしれません。

妻を女性として扱うことが軽視される現状

 夫婦の難しさについても、ハセキョーは2019年放送の『グータンヌーボ2』で率直に語っています。田中みな実が「結婚した後も男女の関係でありたい」と発言したところ、「(男女の関係は)なくなると思います」と答えたハセキョー。お子さんが生まれることで、男女というより子どもを中心にしたチームになることを経験を交えて話していました。確かに子どもが小さいときは、夫婦が男女でいることは難しいでしょう。しかし、だからといって、夫婦が男女でいる努力を放棄していいのかというと、それも違うように思います。

長谷川京子。ママ友と談笑したり、子どもの応援をしたり、電話をかけたりして1日中、動き回っていた('16年10月)

 子どもをなした夫婦だからこそ、相手を異性として称えることがお互いの信頼や自信につながっていくこともあるのではないでしょうか。日本では妻が夫に女性として扱ってほしいと要求すると「いい年して」「気持ち悪い」と言われがちです。もう女性として扱われなくてもいいという人もいるでしょうが、女性として愛されたいという人がいても、それがおかしなことだと私は思いません。

 特にハセキョーように独身時代、さんざんモテてきたであろう人が、結婚して妻となり、母となった途端に「はい、もうお母さんなんだから、子育てだけしてください」ではつらすぎるでしょう。収入の高い人の税金が高いのと同様に、モテる人を妻にしたのなら、夫はその妻を喜ばせる努力をよりしなければいけないのではないでしょうか。

 それなのに、有名な夫婦カウンセラーのセンセイ方(だいたい女性)は、夫婦円満のコツとして「妻が夫をほめろ」「夫が傷つくので、セックスは断るな」と口をそろえておっしゃる。あのぉ、センセイ方、妻の気持ちをいつも無視するのはなぜですか?

 ハセキョーの離婚は、妻を称える、妻を女性として扱うことが軽視されている現状と、いい妻である自負がある人ほど悩み、ときに病むという日本の結婚のヤバさをあぶりだしたようにも思えるのでした。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」