都内に続々出店するデカ盛り店K。1Kgのおにぎりも飛ぶように売れていく

 コロナ不況で所得が減った世帯も多いはず。でも、家計がキビシイからと“安くてお腹がいっぱいになる”炭水化物ばかり食べていたら肥満になるばかり……。不況でも安定価格で栄養ばっちりのあの食材を活用して、脱・ボンビー肥満!!

新型コロナによる経済ダメージが肥満を増やす!?

 経済成長の低迷が続く日本にコロナ不況が追い打ちをかけ、経済格差は広がっている。さらに、長引くステイホームで運動不足や体重増加といった健康被害も……。収入は少なくなっていくのに、お腹の脂肪は増えるばかり。この先、どうなるの?

コロナ太りの影響は大きいと思います。運動不足や仕事がリモートになり間食が増えるなど、太る原因が積み重なっています。コロナ明けは、運動不足と肥満で、生活習慣病が増えるのではないかと予想しています。すでに、生活習慣病の人は、心筋梗塞など心血管疾患が心配です

 と、管理栄養士の赤石定典さん。実際にコロナ生活が長引くにつれ、赤石さんの栄養相談に訪れる患者さんは、体重の増加を訴えるそうだ。

 今後心配なのは、低所得化によって、健康被害が増えると予想されること。

 2018年に行われた国民健康・栄養調査では、世帯所得が高いほど健康診断の受診率が高く、2014年の同調査では、世帯所得が低いほど、肥満率が高くなっていた。

その原因の1つとして考えられるのは炭水化物でお腹をいっぱいにしてしまうことです

 野菜や肉・魚に比べて、米やうどんは、お腹いっぱいになるうえに価格が安い。所得が下がってまっ先に買うのは米やパンだろう。

肥満傾向にある人のやりがちな食生活の例として、ごはん+から揚げ+マヨネーズ! タンパク質は含まれるものの、野菜や果物がどこにもありません。これをお腹いっぱい食べてしまえば、太るのは当然です

 2018年国民健康・栄養調査によると世帯所得200万円以下は、201万〜600万円以下と比べて、男性で69g、女性で42g野菜摂取量が少ない。一方、穀類は男性で41g、女性で20g多くなっている。つまり、世帯所得が低いほど野菜が少なく、穀類が多いという結果になっている。

安いとはいえ炭水化物の食べすぎは太るのでNG。低価格かつ安定価格の野菜を使って、なんとか乗り切りましょう

 赤石さんに低価格食材でコロナ太りを乗り切る方法を教えてもらいましょう!

 ボンビーがついつい手を出してしまう「ごはん+から揚げ+マヨネーズ」はNG

「つまりアブラと炭水化物ですから、これでお腹いっぱいにしたらまちがいなく太ります!」

これはボンビーめしの典型!

白米は後回し、低価格野菜&きのこをまず先に

 近年ダイエットといえば、糖質制限ですが、糖質を極端に少なくする必要はありません。野菜+タンパク質+炭水化物を、毎食しっかりとりましょう」

 問題は、先ほどの調査報告のように、野菜が少ない分、炭水化物の量が増えてしまうこと。どれくらいが適切かというと、

ごはんでいうと軽くお茶碗1杯分。パックごはんの180~200gくらいです

 炭水化物はとってよいのだが、食べる順番が重要だ。

食物繊維が多く含まれる野菜から食べましょう。特に緑黄色野菜は、βカロテンなど抗酸化物質が豊富でダイエットに適しています

 赤石さんが糖尿病の患者さんに栄養指導をするときには、GI値をもとに食品の説明を行う。

「GIとはグリセミック・インデックスの略で食後血糖値の上昇を示す指標です。値が小さいほど、食後の血糖値が上がりにくくなります。白米などGI値が高いものを食べると血糖値が急上昇し、インスリンというホルモンが働き、糖を細胞のエネルギーとして使います。しかし、急上昇した糖は余ってしまい、それらは脂肪として蓄えられてしまうのです」

管理栄養士・赤石定典さん 撮影/齋藤周造

 つまり、食べる順番が大事なのだ。空腹だからといって“まず白米から”なんて言語道断なのだ!

野菜やきのこ、果物など、食物繊維が多く含まれる食品を先に食べると、血糖値が上がりにくいことがわかっています。ベジファーストといわれるサラダや生野菜を先に食べる方法は味けないかもしれませんが、炒め物などこってりした料理にしてもOKです。ただし、野菜は水溶性ビタミンなど水に溶けやすい成分が多いので、ゆでる場合はスープにして栄養をくまなく摂取しましょう

●食べる順による血糖値上昇の違い
 米を先に食べると、血糖値が急に上昇するが、野菜が先なら血糖値の上昇は緩やかになる。(グラフ参照)

【グラフ】食べる順による血糖値上昇の違い

 ここで心配なのは、やはりお値段。野菜は高いのが悩み。

季節に関係なく、価格が安定している低価格の野菜を使えば大丈夫。例えば、もやしや豆苗です。豆苗は根から1~2回芽が出てくるのでおトク。また冷凍野菜も利用しましょう。旬の時期に収穫し冷凍するので、栄養面ですぐれています。価格も安めなので利用してみては?

食にお金がかけられなくても、健康に

 野菜を安いときに買っておいて家で冷凍するのもオススメだとか。また、

ムダなく皮ごと使い切りましょう。野菜の皮にはポリフェノールが豊富に含まれ、健康効果が期待できます。特にポリフェノールの抗酸化作用は動脈硬化の予防になります。

 皮ごと使うとおいしくないのでは?という質問をよく受けますが、ゴボウを皮ごと使ったきんぴらと皮をむいたきんぴらを比較すると、皮ごと使ったほうがおいしかったという実験結果があります。ピーマンも種やワタは食べられないと思っている方が多いようですが、きちんと食べられます。私はピーマンをまるごと焼いて食べるのが好きです

 また、炭水化物も低GIのものに変えるとさらに効果があるとか。

玄米など茶色の炭水化物はGI値が低い。さらに、ごはんは冷やして食べるのがオススメです。レジスタントスターチというでんぷんの一種が増えて、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます

 最後に、コロナ太り解消には運動もとても大切!

食後すぐに動くのが血糖値を上げないためのポイント。気軽に家でもできる運動を紹介しますので、実践してみてください

 たとえ、食にお金がかけられなくても、健康になりたい! 元気だけは高所得者に負けないぞ!

●食べ方のポイント

(1)野菜+タンパク質+炭水化物を毎食
 食事はバランスよく、3つの要素を偏りなく食べる。炭水化物を極端に減らすことなく、お茶碗1杯分くらいは食べてOK。

白米 ※写真はイメージです

(2)野菜料理を先に食べる
 野菜料理をまず先に食べて血糖値の上昇を抑える。20分くらいかけて食べると満腹中枢が働いて食べすぎを抑えられる。

健康的なご飯 ※写真はイメージです

(3)野菜はまるごと使う
 皮やワタが食べられるものは、すべて食べる。皮にはポリフェノールが含まれているため、健康維持、病気予防にも役立つ。

ピーマンは種まで食べる! 経済的だしフードロスにもつながります

●コロナ太り解消運動
“食事と運動は両輪”! この2つでボンビー肥満を乗り越えよう!

(1)つま先立ち
 キッチンや歯磨きをするときに、つま先立ちになる。ふくらはぎの筋肉を鍛えるだけでなく、バランスが必要なので深部筋肉も刺激。

(2)もも上げ
 腕を大きく振って、ももを高く上げて歩く。筋肉の7割は下半身にあるので、脚の大きな筋肉を鍛えることがポイント。

(3)姿勢をよくする
 姿勢をよくするだけで、姿勢にかかわる筋肉が緊張。立っていても座っていても、お腹を引き締めて背中をすっと上に伸ばす。

●低価格&安定価格の野菜をうまく活用!

 野菜は価格変動が激しく、同じ野菜でもびっくりするほど高いことも……。

 そこで、豆苗やもやし、きのこなど季節や天候に関係なく価格が安定し、しかも安い野菜を使うのがポイント。

・豆苗・もやし
 豆苗は油と相性がいいβカロテンが豊富なので炒めものはベスト。もやしは家計がピンチのときの定番お助けアイテム。水溶性のビタミンCが含まれるため、味噌汁やスープなど煮汁ごと食べるのもオススメ。

豆苗(1袋)約100円 もやし(1袋)約30円

〜豆苗ともやしの野菜炒め〜
 豆苗ともやしをあわせて炒めるだけ。味噌、しょうゆ、焼き肉のたれなど味つけを変えれば飽きずに食べられる。キャベツなど安い野菜があるときはそれをプラス。低価格タンパク質代表、卵を一緒に焼くと彩りアップ。

豆苗ともやしの野菜炒め

・きのこ
 食物繊維たっぷりのきのこは、何にでも応用できる万能アイテム。しいたけは栄養価が高いが価格も高め、低価格で栄養的にオススメなのがまいたけ。ひらたけ、ぶなしめじ、えのきだけもお手ごろ。

しめじ(1袋)約100円

〜きのこポタージュ〜
 きのこを牛乳や豆乳で煮て、ブイヨンや塩・コショウで味つけするだけでできあがり。このままでもよいが、ミキサーにかければとろとろポタージュに。洋食のパンを食べる前にきのこポタージュを1杯。

きのこポタージュ

・冷凍野菜
 冷凍野菜は、旬の野菜を急速冷凍するので栄養価が高いうえにコスパがよい。常備野菜として冷凍庫に入れておけば、いつでも使えてコストも気にならない。

カットほうれん草(1袋)約150円 揚げなす(1袋)約200円

〜揚げなすの揚げびたし〜
 揚げなすの冷凍食材は重宝しておいしい1品。すでに揚げてあるのでだしじょうゆで煮るだけで、揚げびたしのできあがり。味噌とあえてもよし、麻婆なすの素を加えてもおいしくなる。

揚げなすの揚げびたし
教えてくれたのは……管理栄養士・赤石定典さん
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部勤務。レシピ本『慈恵大学病院のおいしい大麦レシピ』(東京慈恵会医科大学附属病院栄養部監修)のプロジェクトリーダー。健康本やレシピ本の執筆、監修に関わる一方、テレビやラジオの出演多数。

《取材・文/山崎ますみ》