「ここのところアラ還のおひとり様男性と氷河期世代の女性のカップルが増えているのですが、トラブルも起きているんです」
と教えてくれるのは『週刊女性PRIME』の連載でもおなじみ、男女問題専門家の露木幸彦先生だ。
コロナ禍で増える年の差カップル
「まもなく2年が経過する新型コロナウイルスとの戦いですが、感染の恐怖により独身の中高年男性の人恋しさは増すばかりで、パートナーの需要が高まっているのです。
一方で女性は不安定な雇用が続いたり、コロナで解雇などの打撃を受けたり、おひとり様に疲れて40代を過ぎてようやく結婚に目が向く方も多いんです」
そこでマッチングするのが60代〜70代のアラ還男性と30代後半〜40代の氷河期世代女性のカップルなのだという。
「男性のほうは再婚という場合も多く、そこで金銭面でのトラブルが続出しているんです」
と露木先生。いったいどんなトラブルが起きているのか。事務所に相談に訪れた3組のケースを露木先生が解説する。
【1】バツ1夫(58)× コロナ失業妻(38)
「うつ病で苦しむ僕を救ってくれたのが彼女。私を癒してくれます!」
と語るのは白木孝之さん(仮名・58歳。航空会社のシステム事業部に勤め、当時の年収900万円)。お相手はネイルサロンの店長・裕子さん(仮名・38歳)で小島瑠璃子を大人っぽくした感じの庶民的美人。神経質な彼は爪の縦割れを隠したくて来店。珍しい男性客を快く接客してくれた彼女に心を奪われ、店に熱心に通いつめ、口説き落とした。
●養育費支払い中に役職定年で年収半減
孝之さんは10年前に離婚し、毎月4万円の慰謝料を払い終えたばかり。しかし、まだ長男(16歳)の養育費(毎月9万円)の支払いが残っている状況で一昨年、役職定年を迎え、主管の任を解かれ、年収は500万円に。
さらに追い打ちをかけたのは昨年からのコロナウイルスの蔓延。緊急事態宣言下で感染を恐れて裕子さんが働くネイルサロンの利用者が激減。宣言解除後も外出自粛でネイル需要が減り、売り上げは回復しなかったため、閉店せざるをえず、失業状態。
裕子さんは失業手当のない自営業者。孝之さんが養うことになったが、家計は毎月6万円の赤字へ転落。前妻との結婚生活の貯金は「妻総取り」が条件だったので離婚直後は一文無し。
離婚後に貯めた貯金も長男の高校の学資として渡したため、貯金は残りわずか。孝之さんは背に腹はかえられず、元妻に減額を頼むも、「だまされた! 途中で減らされるなら離婚しなきゃよかった!」と断固拒否。危機的状況になったという。
●こうして解決!
露木先生は「再婚相手を扶養に入れている場合の計算方法があるんですよ」と言い、家庭裁判所が公表している「新しい計算方式」を孝之さんに伝授。家庭裁判所へ調停を申し立て、調停委員が命じたところ、元妻の年収が300万円と判明。お互いの年収、長男の年齢に照らすと毎月3万円が妥当な金額。審判の結果、毎月6万円の減額が認められたので赤字を脱し、最低限の生活が戻った結果に。
【2】バツ1夫(63)× シングルマザー(42)
「前妻にとって僕はロボット。心は通じません。しかし、彼女は違います!」と岡本良太さん(仮名・63歳。年収600万円)。
お相手はマッチングアプリで知り合ったシングルマザーの美佳さん(仮名・42歳)。高校生の娘がいるとは思えないスタイルのよさで米倉涼子を彷彿とさせる容姿。
彼女は元夫からの養育費を当てにせず、介護職に従事し、月収は16万円。しかし、コロナにより職場の利用者が減少し、月収は12万円にダウン。生活に窮するなか出会ったのが良太さん。
●住宅ローン返済中に病気に……将来が不安
一方の良太さんも苦境の真っただ中。10年前、前妻との離婚条件は彼所有のマンションに妻子が暮らし、毎月10万円の住宅ローンは良太さんが支払うというもの。さらに3年前、糖尿病と診断され、現在も治療中。ローン残債はまだ900万円で完済時は70歳に。良太さんの求婚に彼女は「大丈夫なの?」と躊躇。
●こうして解決!
そこで良太さんは元妻にマンションの売却を打診。息子はすでに自立していたため、広い家を持て余しぎみ。割高な固定資産税や管理費が家計を圧迫。「売った利益(200万円)は渡す」と伝えると元妻は最終的に承諾。こうして浮いた毎月10万円で美佳さんと娘の扶養が可能に。お金の不安が消えた美佳さんは入籍を快諾したのです。
【3】末期がん男性(72)× 介護妻(48)
「まだ動けるうちにやっておきたい。何から始めれば……」と不安な表情の緑川隆夫さん(仮名・72歳)。露木先生の事務所へ来た隆夫さんはすでに満身創痍の状態。前立腺の肥大から前立腺のがん、そして大腸への転移。
隆夫さんは4年間、続々と病魔に襲われ、つらい治療に耐えたものの、もう治療法はなく、担当医に見放されたのは先月。相談時は肺に水がたまり、翌日に入院する予定でした。傍らに寄り添うのは賀来千香子似の美魔女の里美さん(仮名・48歳)。一見すると2人は親子。
しかし、隆夫さんは「娘じゃなく家内です。まぁ、娘と同じ年ですが」と告白。隆夫さんは30年前に離婚。前妻との間に48歳の長女がいます。
里美さんと知り合ったのはシニア向けの婚活サイト。登録時、女性は20歳以上なら年齢制限はなし。当時38歳の里美さんはすでに婚期を逃し、両親は他界。非正規の仕事に限界を感じており、藁をもすがる思いで隆夫さんと一緒になった。里美さんは10年間、特に隆夫さんが体調を崩してからも心身を支えてくれた存在。
●結婚も出産も知らせない長女と疎遠に
隆夫さんは「無理がたたって寿命を縮めました」と語気を強める。私立の高校、海外の留学、そして大学の薬学部…何の相談もなく隆夫さんが言われるがまま払った総額は3000万円超。離婚直後、国内銀行から外資へ転職し、ファンドマネージャー(全盛期は年収2000万円)として活躍したからこそ払えた金額。
養育費の支払いは当然でも、前妻から感謝のひと言もなし。長女の結婚、出産を知ったのは隆夫さんが「終活」目的で戸籍を閲覧したからで長女からの報告は皆無。隆夫さんが何もしなければ遺産は里美さんと長女が折半。何もしない長女と、献身的に看病した里美さんが同額とは……。
●こうして解決!
「彼女には感謝しています。だから……」と訴える隆夫さんの希望を叶えるため、露木先生は「遺留分を害しない形で遺言を作りましょう」と提案。遺留分とはどんな遺言を作っても残る相続分のこと。法律上、長女には遺留分が認められており、今回の場合、4分の1。つまり、遺言によって里美さんの相続分を2分の1から4分の3へ増やすことができます。
隆夫さんの一時退院を待ち、公正証書遺言の手続きをすませたが、翌月には帰らぬ人に。このように愛情の大小が金額に反映されるのが遺言です。隆夫さんにとって大事だったのは血のつながった長女より、長女と同い年の彼女。里美さんの多大なる貢献が報われた形です。
年の差カップルは若い女性側が何かと悪く言われがちだが、うまみはないというのが実情のようだ。
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。公式サイト:http://www.tuyuki-office.jp/