安達祐実

 安達祐実(40)が『カムカムエヴリバディ』に出演することが発表された。NHKの朝ドラは25年ぶりで、前回は15歳のとき。つまり、現在は40歳ということになる。

 にもかかわらず、その見た目から「永遠の少女」などとも呼ばれている。3年前には『しゃべくり007』(日本テレビ系)で「年齢の限界」企画に挑戦。セーラー服からランドセル、園児服とコスプレしていき、それが不思議と似合ってしまっていた。

 が、その年齢不詳ぶりは見た目のせいだけではない。なんというか、人生の時間軸が特殊なのだ。

安達祐実の人生の時間軸

 例えば、25年前に出た朝ドラは『ひまわり』。松嶋菜々子がヒロインだった。安達より8歳年上だが、芸能界では安達のほうが先輩。何せ、デビューしたのが2歳のときだ。「ウッチャンナンチャンさんと同期」というのは本人もよくネタにしている。

 そして、9歳のとき「具が大きい」というセリフのカレーCMでブレイク。12歳のときには主演ドラマ『家なき子』(日本テレビ系)が大ヒットして、決めゼリフの「同情するなら金をくれ」が流行語になった。

 この時期のイメージが強すぎることに加え、当時の面影を色濃く残していることから、まるで時間が止まっているような印象がもたらされるのである。

 実際、2歳からずっと芸能界にいるというのはすごいことだ。かつて、キャンディーズは「普通の女の子に戻りたい」と言って解散したが、つまり芸能人とは普通ではない存在。安達は人生のほとんどをそういう存在として過ごしてきた。

 それゆえ、普通ではない経験もたくさん味わうことに。テレビ局のADに初恋をして、憧れの彼がいきなり父親になったというのもそのひとつだ。母親がステージママで、安達の初恋の相手と再婚したためである。

 13歳のときには、日本テレビに彼女の名前あてで爆弾が送られ、爆発する事件も起きた。本人は無事だったものの、事務所社員が指の一部を失うなどしている。

 その後、デキ婚からの離婚を経て、カメラマンと再婚。プライベートでも四六時中、写真を撮られているという。その一部は写真集にもなった。2歳からの芸歴を思えば、彼女は歴史上最も多く写真に撮られている人間なのではないか。そりゃ、時間軸だってゆがんだりするだろう。

マツコの分析に納得

 そんな安達について最近、マツコ・デラックスがこんな分析をしている。

「いろんな経験をしてきてもなんでか残る少女的なところだったりというのが、いい意味で気持ち悪いんだと思う。世の中の人が引っかかるっていうのは違和感だから」(『マツコ会議』日本テレビ系)

 これに対し、本人は「あー、すごいうれしい」と反応。性別不詳と年齢不詳同士、通じ合うものがあるようだ。

 3年前には、ヤフーニュースの取材で彼女はこんな発言をしていた。

最新の安達祐実は、もう“(同情するなら)金をくれ!”なんて言ってないよ!って感じで(笑)

 自分のイメージをアップデートしてくれない世間に対し、笑えるようにもなったわけだ。自らの特殊さを持ち味にできているのが、ここ数年の彼女の強みといえる。

 しかも、芸能人にどんどん普通が求められるようになってきている今、彼女の特殊な魅力はますます際立つことになる。

 ただ、それは自分だけの時間軸をさまよい続けることだから、孤独でもある。その孤独を理解できる人は、20年後の芦田愛菜くらいだろうか。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。