口の中がカラカラだったり、のどがなんだかヒリヒリしたり……。そんな朝を迎えた経験のある人は多いだろう。今だと「コロナかも!?」なんて少しヒヤヒヤしてしまうかも。
あなたは大丈夫?5~6割の人は口呼吸をしている!!
口と顔の体操『あいうべ体操』の考案者で、鼻呼吸を推奨する「みらいクリニック」今井一彰院長(以下、今井先生)によると、
「寝ているときに口が開いている、つまり口呼吸をしていると、朝起きたときに口の乾きや、のどの痛みを感じます」
“ふ~ん、でも自分は口呼吸をしていない”なんて思っているそこのアナタ! 自分で口呼吸をしていることを自覚していない人は実はすごく多いのだ。
「アンケート調査で“口呼吸をしている”と自覚している人は2割程度ですが、専門家によるチェックでは“実際には5割~6割の人が口呼吸をしていた”という報告もあります」(今井先生、以下同)
口呼吸は、のどを乾燥させ、免疫力を下げ、口腔内の環境を悪化させる。そのほかにも左の表のように、さまざまな不調や病気を引き起こす。しかし、
「逆にいえば鼻呼吸にするだけで、さまざまな不調や病気の改善が期待できるんです」
鼻呼吸は口呼吸に比べると気道抵抗が高いため、より多くの筋力が必要となる。これに対して、身体にさまざまな弊害をもたらす口呼吸は楽な呼吸であるため、一度口呼吸の癖がついてしまうと、鼻呼吸をすると“キツい”と感じてしまうという。
「新型コロナウイルス感染症によって常時マスクを着用する生活では、なおさら無自覚のうちに口呼吸になっている人も多いはずです」
それもそのはず、マスクの中は酸素飽和度が低く、つけていると脈拍も上がってしまう“苦しい”状態。どうしてもラクな口呼吸をしてしまいがちなのだ。
この口呼吸をしている人に顕著に表れる症状の1つにいびきがあるが、実は20歳未満の人のいびきは異常。大人のいびきも健康面に大きな影響があるが、子どものいびきはさらに、成長障害などの悪影響を及ぼす。しかし、口呼吸を鼻呼吸に変えるだけで、いびきが改善される。
このように健康面に大きな悪影響を引き起こす口呼吸。これを改善するために今回紹介するのが、就寝時に口にテープを貼るマウステープ健康法だ。安価なテープさえあれば、誰でも口呼吸から鼻呼吸に変わることができる。まさにノーリスク、ハイリターン、夢の健康法! 詳しいやり方を学ぼう。
口呼吸で起こる……こんなコワイこと!!
アトピー性皮膚炎
花粉症
ぜんそく
睡眠時無呼吸症候群
リウマチ
高血圧……etc.
身体を冷やす口呼吸をやめる
そもそも、なぜ鼻呼吸が身体にいいのだろうか。
「人間の鼻には空気の浄化作用のほか、乾燥と温度変化から身体を守る役割があります」
鼻毛や粘膜に覆われた鼻腔内を通り体内に取り込まれる空気は、チリやウイルス・細菌などを濾過し、途中の上咽頭部分の扁桃リンパ組織がさらに防御して異物が肺に入るのを防いでくれる。さらに鼻腔内は常時適度に湿りけを帯びているため、冷たく乾燥した空気が取り込まれると速やかに湿度と温度を与えてくれるのだ。逆に口呼吸は「熱のロスが大きく、身体を冷やします」
わかりやすくいうと犬がハアハアと口呼吸するのは、体内にたまった熱を逃がし体温調節をするためだが、これと同様に、人間の口呼吸も身体を冷やしてしまうのだ。身体の冷えは免疫力の低下を招き、ひいては前ページで列挙したような身体全体の不調を引き起こす。
例えば、中高年女性の多くが悩まされる夜間頻尿もそのひとつだ(下参照)。いびきの重篤化である睡眠時無呼吸症候群から起こる夜間頻尿。そして、その睡眠不足からほかの不調が生まれる可能性も。口呼吸はつまり、万病のもとであるといっていい。
夜間頻尿が起こる仕組み
睡眠時無呼吸症候群
↓
睡眠の質が下がり、交感神経が
優位のままの状態に
↓
いびきをかく
↓
心臓に負担がかかる
↓
利尿作用のある
ホルモンが分泌される
↓
頻尿に
※横になると心臓から腎臓へ送られる血液の量が急激に増加し、大量の尿が作られる
正しい舌の位置を意識する
口呼吸になる原因にはさまざまなものがあるが、加齢によって舌の力が弱まることも大きな原因のひとつだ。舌の力を測るには、舌が正しい位置にあるかどうかを確認しよう。
「口を閉じたときに、舌の先端が上の前歯の根元の約1㎝内側(のど側)についているのが正しい舌の位置です」
これが、下の前歯の内側や歯肉についている人は舌の力が弱く、口が開きがちになり、口呼吸につながるという。
「気がついたときに口を閉じ、舌の正しい位置を意識して。舌の力が弱くなると飲み込みが悪くなり、高齢者に多い誤嚥性肺炎の原因にもなりますので、40代、50代のうちから舌の正しい位置を意識するのは重要です」
また、舌が正しい位置にない人は、顔周辺の筋力低下も関係しているという。特に今井先生が指摘するのが、コロナ禍の影響だ。以前のように人と会って話す機会そのものが減ったうえに、長期にわたるマスク生活で、表情を作ることなく日常生活を送ることができるようになった。このことが顔周辺の筋力低下に大きく影響しているという。上のチェックリストにある《口を閉じたときに、梅干しのような膨らみとシワ》は、口を閉じるときに使う筋肉だが、本来はこの部分の筋肉を使わずとも口は閉じられる。これも舌や顔周辺の筋力低下が影響しているわけだ。
起きている間は鼻呼吸なのに睡眠時には口呼吸になっている人も少なくない。そこで睡眠時に有効な手段が今井先生おすすめの口にテープを貼る方法だ。
「マウステープ健康法は、即効性があります。睡眠時に鼻呼吸に変えることで、まずは体調の変化を感じてください」
また、のどの乾燥を防ぐためにマスクをして就寝するという人も多いが、マスクをして寝ると呼吸が苦しく口呼吸になりがち。マスクをして寝る際には口にテープを貼ってからマスクをするのがおすすめだ。
新型コロナウイルスの感染者数は大幅に減ってきているが、口呼吸を誘発するマスク生活は続き、これからインフルエンザの季節もやってくる。
マウステープ健康法で、さまざまな不調や病気を引き起こす口呼吸を防止して、健康な身体を手に入れよう!
教えて今井先生!マウステープQ&A
Q.寝ている間に息ができなくならない?
A.息ができなくなることはありません。不安な人は、まずは起きているときに試してみましょう。
Q.子どもや高齢者でも大丈夫?
A.小学生以上でいびきや花粉症の症状があれば始めましょう。ただし、自分で剥がせない人は使わないように。
Q.鼻が詰まっていても貼っていいの?
A.鼻水が出ているとき以外は、鼻はどちらかの穴が通っているので大丈夫。鼻が詰まりやすい人の症状も改善します。
Q.剥がすときに痛い、無意識に剥がしてしまう場合は?
A.痛い場合は貼る前に手などに何回か貼り、粘着力を弱めてから貼りましょう。最初は無意識に剥がすこともありますが、毎日続けると剥がさなくなります。
教えてくれた人は……今井一彰先生
●みらいクリニック院長。内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。あいうべ体操、ゆびのば体操の考案者。『世界一簡単な驚きの健康法 マウステーピング』(幻冬舎)など著書多数。
〈取材・文/松岡理恵〉