第七世代といえば霜降り明星

 そういえば最近、「第七世代」という言葉を以前ほど聞かない気がする。

「第七世代」とは、お笑い芸人の霜降り明星・せいやがラジオ番組で何気なく提案したことに端を発する、2010年代後半から活動し、活躍している若手芸人の総称だ。霜降り明星を筆頭に、EXIT、四千頭身、宮下草薙、3時のヒロイン、ハナコ、ぼる塾などが、昨年より「お笑い第七世代」としてメディア界を席巻した。

 これらの芸人たちは現在も露出は多く活躍中だが、“お笑い第七世代の番組”と銘打たれた番組もいつの間にか見かけなくなり、昨年のような、集団としての勢いが感じられなくなってしまった。同時に台頭した先輩世代にあたる、千鳥やかまいたち、チョコレートプラネットがメディアのメインストリームに踊り出し、さらに、M-1グランプリやキングオブコントでの活躍を契機にマヂカルラブリー、ニューヨーク、見取り図、そして空気階段らの活躍が目立つ。

 いわば世代の逆転現象のようなことが起こったことにより、「第七世代が消えた」「第七世代ブームは終了?」といった趣旨の記事も見かけるようになった。

“流行”として過ぎ去った「第七世代」という言葉

「やっぱりお笑い芸人は、その才能とともに、経験値が必要」と、芸能ライターが続ける。

「かつて、はんにゃ、しずる、フルーツポンチらが一気に人気が出たことがありましたが、その旬も長くは続きませんでした。アイドル的な旬が去ってしまうと、それぞれの力がモノをいうわけで、そんなときに実力はあったけど、“きっかけ”がなかった先輩芸人たちが、新鮮な受け入れられ方をして売れていくのは当然の流れではないでしょうか」

 とはいえ「第七世代」は、番組や代理店の発案ではなく、芸人発信でブームを巻き起こしたことは新鮮だった。番組制作側も、芸人単体ではなく集団で起用することができ、芸人の顔や名前、さらにはキャラクターも一気に知ることができ、視聴率にも貢献した。

「ぺこぱなど、厳密には第七世代ではない芸人も、売れた時期が重なったことで、第七世代と共演する機会も多かったですね。もっといえば、吉本興業の闇営業問題で、中堅以上の芸人に不信感や嫌悪感を抱く人が多いところに、さわやかな若手集団が台頭してきたという流れもよかったのではないでしょうか」(同前)

 と、第七世代の存在意義は大きいと話す。

 人気バラエティーを手がける放送作家は「第七世代」という括りがなくなり、「若手芸人」として一列に並ぶ状態になったと分析するが、なぜ「お笑い第七世代」を前面に出した番組は減ってしまったのだろうか。

「それは単に“流行”だったのかもしれません。制作サイドが企画を立てるときに“第七世代が〜”と銘打ってしまうと、もう古い感じが否めません。第七世代の芸人さんが複数出演していても、それだけをウリにすることはなくなりました。今は、千鳥さんやかまいたちさんが一気に売れて、空気階段さんたちにも注目が集まっています。括りを取っ払い、以前のように本当におもしろい人が売れる時代が戻ってきました。第七世代芸人からも、実力のある人たちは売れ続けると思いますよ」

 年末のM-1グランプリで、新たな実力者の誕生を楽しみにしたい。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉