「11月23日に更新されたフィギュアスケート男子の世界ランクで、鍵山優真選手(18)が1位となりました。羽生結弦選手(26)は5位、宇野昌磨選手(23)は6位です。羽生選手は、シニア2年目の後輩選手に、順位を抜かされる形になりました」(スポーツ紙記者)
鍵山の快挙に、ファンからは祝福の声が寄せられているが……。
鍵山1位に祝福、羽生や宇野にも期待
「フィギュアスケートの世界ランクは、今シーズンと過去2シーズンの成績からポイントを算出して決まります。なので、現在は右足のケガで試合に出場できていない羽生選手の順位が下がるのは当然です。
とはいえ鍵山選手は、出場した試合できちんと結果を残し続けているからこそ、世界ランク1位になれたのでしょう」(同・スポーツ紙記者)
実際、鍵山はグランプリシリーズ2戦の合計獲得ポイントで決まる、12月9日から開催されるグランプリファイナルへの進出も、トップの成績で決めている。
「『イタリア杯』と『フランス杯』に出場し、どちらも優勝しました。それでも、演技にミスがあったことから“実力が足りない”と、もっと練習したいと話しています」(同・スポーツ紙記者)
また、宇野昌磨もグランプリファイナルに進出。
「『スケートアメリカ』で2位、『NHK杯』では優勝を果たし、“世界のトップと競い合う存在に戻ってこられた”と手ごたえを感じているようです」(同・スポーツ紙記者)
スポーツジャーナリストの折山淑美さんは、今シーズンの2人の好調ぶりについてこう分析する。
「宇野選手は“4回転5本の難しい構成に挑戦しないと世界のトップに立てない”と明確に意識しています。やることがハッキリしたから顔つきも変わりましたし、迷いなくできていますね。
鍵山選手は、シニア1年目だった昨シーズンの世界選手権で2位になったので、“もっと進化しなくちゃ”という焦りもあったと思います。ですが“今無理をしても仕方がない”と冷静に考え、持っている力を100%出したときに、自分がどのくらいの位置にいるかを確かめるシーズンにしている。その落ち着きが、今の結果に出ているのだと思います」
愛知県で暮らす宇野の祖父で画家の宇野藤雄さんは、孫の活躍に太鼓判を押す。
「今度は優勝すると見ています。この先は全部1位です。“王者の風格”が出てきているのと、フリーの舞いには華麗さが加わっているからです。これは天性のもので、練習すれば身につくものではありません。もちろん練習もしなければいけないですが、その上にある得体の知れない風格は、その人が持つ天性のものなのです。
芸術は、人の心を打たないとダメ。技だけではダメで、天性のものを出さないといけません。そういう感覚からとらえていくと、いちばんいいところに来ました」
一方、鍵山の通う『星槎国際高校横浜』スケート部監督の松下清喜先生は、教え子の謙虚な素顔を教えてくれた。
鍵山「ロシア、半端ねぇ」
「『フランス杯』の前に神奈川の高等学校体育連盟の会議があったので、“インターハイの出場選手が確定するんだけど、エントリーしておくか?”というメールを送ったら“エントリーお願いします!”という返信が来ました。
インターハイは北京五輪直前の1月の終わりなので、出なくてもいいんじゃないかと言ったのですが、“万が一(北京五輪代表に)選ばれなかったら……”なんて弱気なことを言っていましたね(笑)。
北京五輪の選考会でもある全日本選手権が終わるまでは、確実に出場できるかはわからないので、本人は慎重。出場する試合については、お父さんの正和さんとも相談しているようです。
やっぱり、オリンピックは出てほしいですし、出るだけではなく、メダルもとってくれたらうれしいです」
学校では高校生らしい様子も見せているという。
「世界ジュニア選手権で優勝経験もある体操の岡慎之助くんと“ロシア、半端ねぇ”と話していたのが面白かったです。“どうして強いのか?”についても、2人で悩んでいましたね。体操もフィギュアスケートも、ロシアは強豪国ですから」(松下先生)
後輩の活躍で羽生は集中しやすくなった
グランプリシリーズを欠場した羽生は、後輩たちの台頭をどう感じているのだろうか。元フィギュアスケート選手で冬季五輪の出場経験もある渡部絵美さんに、若手選手に対して抱く思いを聞いた。
「私がスケートの大会に出場するようになってから10年ほどたって、伊藤みどり選手が脚光を浴びるようになりました。そのとき、私はすでに引退していましたが、ジュニアのときに3回転ジャンプを跳んでいて驚きましたし、これからの選手が出てきたな、と思いましたね。
羽生くんはベテランですから、後輩たちの躍進に焦りはないと思いますが、“4回転半が目標”と聞くと、順位はどうであれ“スケート人生の総決算としてそれを跳ぶ”ということに懸けるのではないでしょうか」
また、後輩たちが世界のトップと争うことで、羽生の“夢”達成を後押しするのではないかという声も。
「最近の羽生選手は“4回転半の成功が目標”と何度も口にして、試合の勝敗にはこだわっていない様子に見えました。それでも試合に出場すれば、どうしても“勝つ”ことを求められてしまいます。
しかし、宇野選手や鍵山選手が世界のトップを狙える存在になったことで“勝たないといけない”というプレッシャーから多少なりとも解放されるはず。そのおかげで、気負うことなく真っさらな気持ちで4回転半に挑むことができるのではないでしょうか」(スポーツライター)
とはいえ、ロシア杯欠場を発表したときのコメントで、
《まだスタートラインにはたどり着いていません》
と語っていた羽生。いったい“夢”達成はいつになるのだろうか。前出の折山さんは、こう話す。
「今は、4回転半を入れたプログラムを完成させたらどう評価されて、どういう結果になるかを純粋に考えている、そういう気持ちだけだと思います。どの大会で4回転半を入れた演技が見られるかわかりませんが、12月22日から始まる全日本選手権には出るのではないでしょうか」
前出のスポーツライターも、
「全日本でよい結果を出すことができれば、その先に続く“大舞台”でも素晴らしい演技を見せてくれることでしょう」
と、期待を寄せる。
羽生の見据える先には、どんな未来が待つのか──。