「年金だけじゃとても暮らしていけない……!」そんな声をよそに、月に5万円の年金だけで毎日を楽しく生きる女性がいる。食費は月1万円。余ったお金は貯金にまわし、総額は200万円にも。話題の人気ブロガー女性の「おひとりさま節約生活」に密着!
楽しい節約でムリなく貯める!
70歳の人気ブロガー紫苑さんは、現在ひとり暮らし。5年前から年金生活がスタートしたが、フリーのライターだったため、加入していたのは国民年金のみ。毎月の支給額はわずか5万円弱だ。
年金生活の前までは家賃13万円の都内の賃貸住宅に住んでいたが、家賃を払い続けることに不安を覚え、同じく都内の築40年以上の中古住宅を貯金で購入。年金の範囲内でやりくりする生活を始めた。
「食費をきっちり節約し始めたのは、コロナ禍がきっかけです。外食することもなくなったので、自炊でどこまで食費を抑えられるか、実験的に始めてみました。食費がどんどん減っていくことがゲームみたいに楽しくなって、今ではすっかり節約にハマっています」(紫苑さん、以下同)
食費は月1万円ほどですませているが、決して貧弱な食生活ではない。スーパーで買った食材で朝昼晩きちんと食事を作り、好きなスイーツを楽しんで、おいしいコーヒーも飲んでいるという。以前は胃もたれに悩まされていたが、規則正しい食生活に変えたことで、身体にパワーがみなぎり元気にもなったそうだ。
「若いときより元気かもしれません(笑)。以前は子どもが好きなから揚げやパスタなど、がっつり系の食事が多かったのですが、子どもも自立して今は自分のためだけに食事を作れるようになりました。健康に気を使えますし、食費も以前の半分以下になって貯金も増えたんです」
不用品をフリマで売った金額も加えると、5年間の年金生活で貯めた金額はなんと約200万円! 定期預金とは別の老後資金が増えたことは安心感にもつながっているという。
「月5万円というあまり余裕のない年金生活は開始当初はとても不安でしたが、食費1万円台でもやっていけることがわかったので不安は少なくなりました。決して余裕のある生活ではありませんが、工夫たっぷりの節約暮らしは楽しいですよ」と微笑む。そんな紫苑さんの詳しい月の収支と“食費1万円生活”の秘訣を紹介しよう。
■紫苑さんのココがすごい!
・食費は月にたった1万円!「節約食」でも楽しい&おいしい毎日!
・月5万円の年金生活でやりくりし、余ったお金は貯金。その額は5年で約200万円!
■紫苑さんの1か月の収支大公開!(2021年10月)
<収入>
国民年金 49,456円
<支出>
食 費(米代、酒代含) 11,564円
外食費 1,500円
光熱費(水道代含) 7,392円
通信費 7,560円
医療費 600円
交通費 3,000円
雑 費 5,000円
合 計 36,616円
余った12,840円は貯金!
【節約術1】レシピどおりには作らない
食費1万円生活の1つ目の秘訣は「料理をレシピどおりには作らないこと」。レシピを無視するわけではないが、レシピに書いてあるとおりに作ろうとすると、足りない材料や調味料をその料理のために買うことになって無駄な出費になりかねない。しかも、甘すぎる、しょっぱすぎるなど、味が自分の口に合わないことも。より安く、自分好みの味にするためには家にある食材といつも使っている調味料で作ったほうがいい。
レシピどおりのほうがおいしいかもしれないが、自分ひとりで食べるなら自分好みの味になっていればそれで満足と紫苑さん。
「例えばハンバーグを一般的なレシピで作ると結構手間がかかるし高くつく。私は安い鶏ひき肉と脂分の多い合いびき肉に、安くて節約料理に重宝するはんぺんをちゃちゃっと混ぜるだけ。玉ねぎのみじん切りやとき卵、パン粉などは入れません。はんぺんがつなぎの代わりになって、ふわっとした仕上がりになりますよ。タネが余れば冷凍。解凍して家にあるソースやケチャップなどで煮込めば、おいしい煮込みハンバーグになります」
【節約術2】余り野菜はレンチンで干し野菜に
「安売りになっているからといって多めに生鮮食品を買うと、腐らせてしまって無駄になることも。それに、同じものを何日も食べたくないので私は1、2回で使い切る量しか買わないようにしています」
紫苑さんは卵なら6個、魚なら1尾、じゃがいもや玉ねぎなら1個だけとミニマム買いして、なるべくすぐに使い切るようにしている。それでも野菜が一度に使い切れない場合は干し野菜にする。
薄くスライスして天日干しにするか、電子レンジで水分を飛ばすだけ。
「エリンギ、しめじ、にんじん、ブロッコリー、トマトなどが余った場合は干し野菜にしてストックしています。うまみがグンと増して味噌汁やチャーハンの具など、いろいろ使えるのがいいところ。ただし、ほうれん草などの葉物は向かないので、ジッパー付きの保存袋に入れて早めに使うようにしています」
また、食べ切れないイワシやサンマは焼いてぶつ切りにして、にんにく、ローリエ、鷹の爪を入れたオリーブオイルにつけておけば日持ちするお酒のアテに早変わり!
【節約術3】防災用の食品で手抜きする
天気が悪くて買い物に行きたくない、帰宅が遅くなってご飯作りが面倒。そんなときは家にある防災用の備蓄食で手抜きする。
「買い置きの食材があればそれを使いますが、ないときは、防災用のツナ缶や板チョコ、シリアルなどの備蓄食を使います。備蓄食は長い間使わないと劣化するので、たまに料理に使って、その分を補充すると、無駄にならないし効率的ですよね」
例えば、板チョコを電子レンジで溶かしてプレーンシリアルにかけて混ぜて簡単朝食に。また、パンにマヨネーズ入りのツナをのせ、トースターで焼いて好みでカレーパウダーをかけると立派なお惣菜パンに変わる。どちらもとても簡単で手間いらずだ。
ちなみに、ときどき焼き鳥屋さんで焼き鳥をテイクアウトすることもあるという紫苑さん。これも手抜き料理に使う。
「貧血予防や鉄分補給のためにレバーを食べたいけど、わざわざスーパーで生レバーを買って調理するのは面倒ですし、食べ切れない場合も。だから焼き鳥のレバーを買ってどんぶりの材料にします。効率的で無駄がないのでおすすめです」
【節約術4】讃岐うどんと比べて無駄買いなくす
讃岐うどんで有名な香川県は、県民の貯蓄高が国内の上位にランクイン。その理由は、何を買うにしてもうどんの値段と比べるからだとか。讃岐うどんは1杯100円ほど。例えば1000円の安くてキュートなTシャツがあったとしても、同じ金額でうどんなら10杯も食べられると考えるのだ。
「買い物のときに、いちいちこれはうどん何杯分かを考えると無駄買いが減りそうですよね。ぜひまねしたい節約ワザです」
■紫苑さんの節約参考本はコレ!
・『激せまキッチンで楽ウマごはん』草野かおる著(ぴあ)
「手間暇かけず、パパッと簡単に作れる料理のレシピがいっぱい載っています。ヘルシーでコスパがいいので、とても役に立っています」
・『OKUDAIRA BASE 自分を楽しむ衣食住』奥平眞司著(誠文堂新光社)
「少ない生活費で暮らす知恵がいっぱい詰まっています。こんな若い男性でもこれだけ節約して楽しく生活できているのだから、自分にもできるはずと思って参考にしています」
【節約術5】賞味期限切れショップを大活用!
なかには定価の半額以下になっている商品もある「賞味期限切れショップ」もよく利用しているという紫苑さん。
「賞味期限というのはおいしく食べられる期限なので、過ぎるとすぐに食べられなくなるわけではありません。といいつつ、私は生鮮食料品は買いませんが、パスタやオリーブオイル、サバ缶やトマト缶、またパンを作るための小麦粉など、保存がきくものを主に購入しています」
賞味期限切れショップは上手に使えば食費を浮かす強い味方になる。近所にあるならぜひ一度ためしてみてはどうだろう。なお、「安全に食べられる期限」を意味する消費期限が過ぎている場合は要注意。
【節約術6】“欲望の波"は10分で引く
賞味期限切れショップに並んでいる商品は、とにかく安い。そういったお値打ち品を目の前にすると「欲しい!」という欲望の波が押し寄せてきて、あれもこれも買いたくなってしまうが、それでは不要なものまで買って結局無駄遣いになることも。だから商品をすぐに買い物カゴには入れず、店の中を歩きまわって間をおくことで、冷静さを保つのが肝心だ。
「私の場合は10分くらいたつと“欲望の波”がさっと引いて、必要か不要か冷静に判断できるようになります。大波がくるけど、そのうち引いていくイメージで、私はこれを『欲望の引き潮』と呼んでいます(笑)」
【節約術7】100均アイテムを使い倒す
紫苑さんは100円均一ショップ、いわゆる100均で売られているものも料理作りに大いに活用している。フライパンや鍋などの大きな調理器具は買わないが、小さな器具や皿などはフル活用。
「よく選ぶのは丈夫で長く使えて便利なものが多いです。かわいいゴミ袋や吸水性のいいスプーンなど、ちょっとしたものを工夫して使うととても役立つのでおすすめ。コスパがいいと思えば、100円のものだけでなく、300円や500円のものも買いますよ。100均は商品の入れ替えが早いのでまめに棚をチェックするようにしています」
■紫苑さんのヘビーユース100均アイテムベスト4
「紙の袋は、キッチンのシンクの中で生ゴミを入れる防水加工のもの。絵柄が可愛いので気に入ってます。内側にビニール袋を入れて汚れないようにすれば何度か使えます。グリル皿は肉や海鮮とオリーブオイルを入れてオーブンにかければ、アヒージョの完成。そのまま食卓へ出せるスグレモノです」
「珪藻土のスプーンはよく水分を吸うので、調味料をストックしているボトルに入れておくと、いつも粉がサラサラです。アルミ製の箱型飯ごうのメスティンは、中に網と桜チップなどを敷き、肉や魚、チーズなどを入れて直火にかけると本格的なスモーク料理もできるんです。これは500円しましたが、コスパは最高です」
【節約術8】洋服はリメイクして長く楽しむ
紫苑さんは、若いときはブランドものを買ったり60代では着物に凝ったりと、お金をかけてファッションを楽しんでいたが、最近は新しい服をほとんど買わない。
「買ったとしてもリーズナブルな古着ぐらい。下のコートはベルトを締めてワンピースとして着てもいいし、インナーの上に羽織って、アウターとして着てもいいですよね。着回しの利くものを重宝しています。これはもともと紺一色だったので、襟部分をチェックの布に付け替えてリメイクし、可愛いテイストをプラスしました。ちょっと甘いテイストが好きなんです」
このように手持ちの服をリメイクするなどして雰囲気を変え、着こなしている紫苑さん。細身のスレンダーな体形なので、今風のファストファッションもよく似合う。
「もともと針仕事が大好き。集中してやっていると雑念を忘れられるので、気分もスッキリします。仕上がった服を着て写真を撮ったり、散歩に出かけたりすると気分も上がります。お金を使わなくても自分好みのおしゃれはできますよね」
【節約術9】不用な服をフリマで現金化
紫苑さんは着物や洋服をフリマに出して、定期的に収入を得ている。自分がもう着ない不用品の断捨離にもなるのでおすすめだという。
「よく売れるのは着物関係です。以前たくさん買った着物や帯をフリマに出しているのですが、いちばん高い値がついたのは、ある有名女優さんが使っていたものと同じ花帯。なんと5万円にもなりました! それ以外にも、自分で作った帯が7千円ほどに。洋服は千円ぐらいにしかなりませんが、自分が着なくなったものが誰かの役に立ち、さらにお金になるのはうれしいですよね」
【節約術10】格安DIYでインテリアを気軽にチェンジ
料理だけでなく、インテリアにも100均グッズが大活躍。そのまま使ったり、組み立てたりしてDIYにも挑戦している。
「100均で売っているものを使ってインテリアを自分で作ることもできます。家の中を整理整頓しつつ、あまりお金をかけずに部屋を自分好みに変えていきたいですね」
100均で売っているきれいな色の布を使ったり、鉢植えの台にキャスターを付けて移動しやすくしたりして、居心地のいい部屋を目指している最中だという。
年金が多いとか少ないとか言うのは簡単だ。大切なのは、今ある状況をどう楽しむか。紫苑さんの暮らしぶりに学ぶことは多い。
ブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」が人気の70歳、一般女性。30代で離婚し、1男1女を女手ひとつで育てたフリーライター。子どもたちが結婚したことで都内に一軒家を購入し、快適なおひとりさま生活をエンジョイ中。
(取材・文/東野りか)