「私の都合でシニア人生ゆっくり過ごしたいんですよ。したがって、この番組のレギュラーを今年いっぱいで卒業します」
11月28日、情報番組『サンデーモーニング』(TBS系)で、コメンテーターを務める元プロ野球選手の張本勲が年内で番組を卒業することを発表した。
『サンモニ』は、関口宏が総合司会を務め、'87年から毎週日曜日の朝に生放送されている長寿番組。その中でも、張本が1週間に起きたスポーツニュースを解説する『週刊御意見番』は人気コーナーだ。
「いい出来事や好プレーには“あっぱれ”、怠慢なプレーや不祥事には“喝”とコメントします。張本さんの歯に衣着せぬコメントを楽しみにしている視聴者も多かったんですけどね……」(スポーツ紙記者)
張本が卒業したら、名物コーナーはどうなるのだろう。
「後任者はまだ決まっていませんが、新しい人で継続していきます。『サンモニ』は、平均視聴率が10%を超え、『週刊御意見番』になると瞬間視聴率も上がる傾向にあります。ただ、張本さんの代わりをあと1か月で見つけるのは簡単ではないので、現場はバタバタですよ」(芸能プロ関係者)
ご意見番にとって厳しい時代
人気番組の“顔”になるためには、“絶対条件”があって……。
「メイン視聴者層である50~60代に刺さる人を選ばなければなりません。スポーツ選手から選ぶなら現役から退いた人になると思いますが、ある程度の実績があり、高齢者層に広く認知されている必要がある。張本さんはそうした層からの支持も厚いですし、誰かに忖度せず、自分の意見をはっきり言うので、コメンテーターとしては申し分なかったんですよ」(同・芸能プロ関係者)
コラムニストのペリー荻野さんも、張本のようなタイプはこの番組に必要だと話す。
「ある程度インパクトのある人でないと番組がぼやけてしまうので、テレビ局もタフなご意見番を求めています。ただ、世の中がハラスメントに敏感になっている昨今、ご意見番と呼ばれる人たちは厳しい立場に置かれています。ひと昔前は笑ってすませられたことでも、いまは批判されることもありますからね」
そうした厳しい状況に対応できる後任者は誰がふさわしいのだろうか。
響いた“差別発言”での炎上
「以前、プロ野球やメジャーで活躍した上原浩治さんが張本さんの代わりで出たこともあるので、彼なら問題ないと思いますが、それだと新鮮さに欠ける可能性が。あえて、一塁と三塁の区別もつかない“野球オンチ”と言われる黒柳徹子さんが出て、彼女に解説する人がいて、徹子さんが“あっぱれ”と言う形式にしてもおもしろいかもしれません。また、みのもんたさんが本人だと明かさず、AI風に出演してもいいと思いますよ」(ペリーさん)
後任者を誰にするかで対応に追われる『サンモニ』。今回、なぜ張本は卒業することになったのだろうか。
「表向きは、体力的に厳しくなったためとされていますが、8月の“ボクシング発言”が大きかったようです。張本さんは、東京オリンピックのボクシング女子フェザー級で入江聖奈選手が金メダルを獲得したことに対して、“嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴りあう。こんな競技、好きな人がいるんだ”と発言。この発言に対して世間は猛バッシングし、日本ボクシング連盟もTBSに抗議。その後、番組は謝罪することになりました」(TBS関係者)
これまでも、張本の発言が問題視されることは少なくなかった。
「番組開始当初は元プロ野球選手の“大沢親分”こと大沢啓二さんも出演していました。2人で出ていたときは、暴走しがちな張本さんを、親分肌の大沢さんがコントロールしていいバランスをとっていました。しかし、'10年に大沢さんが亡くなってから張本さん1人になり、飛躍したコメントが増えた印象です。スタッフの間でも“このまま張本さんを起用し続けていいのか”という声が以前からあがっていたそうです」(同・TBS関係者)
120日間の“遺恨”があっても、すぐに降板にならなかったのは、“盟友”の存在が大きかったようだ。
「張本さんの“暴走”を懸念する声も出ていたそうですが、関口さんは彼を責めたりせず、フォローすることが多かったそうです。20年以上、一緒に仕事をしていたので、張本さんの仕事に対する思いを誰よりも理解していたのでしょう」(同・TBS関係者)
とはいえ、“ボクシング発言”は世間でも“男女差別ではないか”など、厳しい批判にさらされた。そうなると、番組としても何の対応もしないわけにはいかなかったのかもしれない。
「関口さんも番組のMCとして、今回の発言は看過できなかったようで、さすがにかばいきれなかったんです。彼は“できるだけ出演者は変えたくない”というスタンスですが、張本さんの卒業は受け入れざるをえなかったのでしょう。ただ、長年番組を共にした張本さんがいなくなることに複雑な思いを抱えているようです」(前出・芸能プロ関係者)
20年以上続けた仕事を辞めることに対して、張本はどんな思いを持っているのだろうか。11月下旬のお昼ごろ、都内にある自宅に帰宅した張本を直撃した。
関口宏の名前を出すと口調は重くなり
─20年間、お疲れさまでした。『サンモニ』を卒業することになった心境は?
「ええ、あー……」
番組への思いを尋ねると、歯切れの悪い答えが返ってきた。いつもの眼光鋭く“喝”を入れる姿とは対照的だ。
─体力的なことを考えて辞められるそうですが、話題になったご自身の発言も関係ありますか?
「…………」
“ボクシング発言”の話題になると、表情が曇った。
─卒業を発表後、関口さんと何かお話はされましたか?
「誰だって?」
記者の質問がよく聞こえなかったのか、聞き返してきた。
─関口さんです。
「……ご苦労さま」
関口の名前を出すと口調が重くなり、その後は口をつぐみ、家の中に入っていった張本。番組に対する思いを語ることなく、歩き去っていく背中は心なしか小さく見えた。
ここ最近の張本は、“エラー”を気にしてか、以前のような強気な発言が激減していた。このまま番組を卒業することは“あっぱれ”なのか“喝”なのか……。