平原健一郎容疑者の犯行ツールは低コストの自転車だった(写真はイメージです)

 大阪市内の飲食店で働く20代女性は「捕まってよかった」と安堵の表情をみせる。

「だってな、仕事から帰宅するのは午前0時を回るし、夜中にコンビニへ買い物くらいは行くよ。もし、まだ捕まってへんかったら狙われてたかもしれん」(同女性)

 そんなふうに女性を怖がらせたのは、大阪府迷惑防止条例違反(卑わいな行為の禁止)の疑いで12月1日に再逮捕された大阪市旭区の無職・平原健一郎容疑者(53)。

 事件を担当する府警本部捜査一課によると、8月上旬の週末午前3時ごろ、府内の路上で40代女性(当時)に対し、自転車で追い抜きざま衣服の上から身体を触った疑いが持たれている。

 最初に逮捕されたのは9月3日のこと。8月下旬の週末午前3時ごろ、府内路上のベンチに座っていた20代女性(当時)に背後から襲いかかってケガを負わせたとして、強制わいせつ致傷容疑で捕まった。

女性を襲う犯行で4度目の逮捕

「40代女性にケガはなかったが、この20代女性は右ひざ擦過傷や両ひじ擦過傷など全治1週間のケガを追わせた。背後から女性を後方に引っ張って転倒させ、地面に引きずる暴行を加えてわいせつ行為におよんでいる。犯行は短時間で言葉は発していない。ほかにも余罪が判明しており、これが4度目の逮捕だ」(捜査関係者)

 犯行態様はいずれも似通っている。

 8月中旬の週末午前2時ごろ、府内の路上で20代女性に背後から走って近づき、驚いて振り向いた女性の腕をつかんで押し倒すなどの暴行を加えた強制わいせつ致傷の疑い。わいせつな行為をしようとしたが、抵抗されたため逃走。女性は打撲や擦過傷による全治1週間のケガを負った。

 さらに8月下旬の週末午前2時ごろ、府内の路上で自転車をこいでいた10代女性に走って近づき、自転車ごと引き倒してわいせつな行為をしようとした強制わいせつ未遂容疑。抵抗されて目的を遂げられず、逃走。女性にケガはなかったものの、襲われたショックは計り知れない。

 犯行は決まって週末の午前2〜3時ごろ。現場までの“アシ”や犯行、コンビニにいる女性や出歩いている女性の物色と尾行などに使ったのは、赤いフレームに赤い荷台の自転車だった。用もなさそうなのにコンビニの前を行ったり来たりする姿が確認されている。

 捜査員は「週末の赤チャリ男」と呼んで容疑者割り出しに全力を挙げ、周辺の防犯カメラ映像を細かく分析するなど、スピード逮捕にこぎつけた。容疑者は逮捕されるまで8月の毎週末、犯行を繰り返したとみられるため、さらなる被害が発生してもおかしくなかった。

 平原容疑者は、最初の逮捕時の取り調べで犯行動機について、

「風俗では満たされない性欲があった。(犯行は)スリルと興奮があった」

 などと供述していたが、その後は黙秘に転じたという。

 自宅は賃貸のワンルームマンション。間取りが狭く、共有スペースに住人が共同で使える洗濯機が複数置かれていた。

 同マンションに長く暮らす男性住人によると、

「転出入が頻繁にあり、住人同士の付き合いはほとんどない。事務所代わりに短期で借りる人もいて、挨拶をしても返さない人もいる。お互いに干渉しないのが暗黙のルールになっている」

 容疑者はこのルールに守られるようにひっそり暮らし、夜が深まると自己所有の赤い自転車にまたがり犯行に出かけていた。

平原健一郎容疑者はマンション住人が寝静まった真夜中に部屋から抜け出て……

 地域の自転車店の店主は言う。

「このあたりは自転車利用が多く、中古販売店では程度のいい自転車が数千円で買える。赤色の自転車はかつて女性に好まれたが、最近の流行は落ち着いたカラーリングのため新車の設定色から消えつつある。まだあるのは電動アシスト自転車ぐらいじゃないか。長く乗っているか、中古品を買ったのかもしれないが、うちでは容疑者は購入していない」

 犯行に使った自転車は電動アシスト付きではなく、いわゆるママチャリをやや小型にした前カゴのあるタイプとみられている。

 なぜ自転車を使ったのかーー。

 在阪記者は「乗用車と異なり維持費がほとんどかからないし、犯行は夏のため夜風も苦にならなかったのだろう」とした上でこう話す。

14か月で17人の女性を襲った過去

「この男は15年前の春にも強制わいせつ致傷事件を起こしている。当時は工員だったから定収入があり、軽自動車を使って犯行現場周辺を徘徊。狙った女性のあとをつけ背後から抱きつきスタンガン(高圧電流銃)を腹部に押し当てるなどして、身体を触るなどのわいせつ行為におよぶ手口。やはり週末の未明に犯行におよんでおり、当時の調べに“14か月で17人の女性を襲った。捕まらなければゴールデンウィークもやるつもりだった”などと供述している」(同・在阪記者)

 現在は無職のためか、逮捕直後には、生活不安へのストレスがあったと話していたとされる容疑者。ブレーキのきかない性癖を完全に治す手立てを講じてほしい。