11月27日、新宿・歌舞伎町にある雑居ビルの屋上で、職業不詳の氏家彰さんが少年グループに殴り殺されるという事件が起きた。
逮捕されたのは、いずれも職業不詳の関口寿喜(じゅき)容疑者(26)、亀谷蒼(あおい)容疑者(24)、少年2人の計4名。
被害男性は歌舞伎町のホームレス
亡くなった氏家さんは、歌舞伎町でホームレスとして暮らしていたという。
「歌舞伎町にはDVを受けている、家族と仲が悪い、などさまざまな理由で家に居場所のない若者が至るところにたむろしています」(全国紙社会部記者)
そのたまり場の1つが新宿東宝ビル周辺。通称“トー横”だ。氏家さんはトー横周辺のホテルや公園などで寝泊まりする“トー横キッズ”と呼ばれる若者たちの支援活動を行っていたという。
「彼らの中には15~19歳くらいの未成年の子が多く、男性なら万引きや当たり屋、女性の場合はSNSを通じた売春などで日銭を稼いでいます。寝るところがなく、1人がホテルを借りて、そこを5~6人で使うなんてことを当たり前のようにやっています」(歌舞伎町の飲食店関係者)
そんな子どもたちをサポートしていた氏家さんが、なぜ殺されなければならなかったのか─。
氏家さんの知人で、歌舞伎町によく訪れるという男性Aさん(40代、無職)が、生前の氏家さんについて語ってくれた。
「氏家さんが歌舞伎町にやってきたのは、今年の9月ごろでした。彼はよく日中から公園のベンチに座って酒を飲んでいたので、そこで一緒に話すようになったのが出会ったきっかけです」
どんな人物だったのかというと、
「普段の寝泊まりはビルの階段の下などでした。なぜ歌舞伎町に流れてきたかはわかりませんが、昔は格闘技や土木系の仕事、クラブのDJなど職を転々としていたと話していましたね」(Aさん、以下同)
トー横キッズのお父さん
歌舞伎町での氏家さんは、若者たちの“お父さん”的な存在だったようだ。
「よく若い子の相談に乗ったり、売春している子の悩みを聞いて心のケアをしたりしていました。家庭で暴力を受けている女の子と父親の間に入って、仲裁をしてあげたこともあった」
みんながいる前で突然、リストカットを始める少女や、小学生くらいの子どもまでこのトー横界隈に流れ着いてくるという。
「中には集まってくる少女を食っちゃう悪い大人もいるのですが、氏家さんは手を出すことは一切なかったですね。むしろ慕われていて、少女から関係を求められることもあったほど。反対に、氏家さんもお金のある子どもからご飯をおごってもらったり、衣服などをもらったりもしていました」
Aさんも氏家さんのことを気にかけて、食事をごちそうしたり、自宅に招いたりしたという。
さらに彼をなんとかホームレスの状態から救ってあげようとも努めていたが、
「本人にその気がないようなので結局、諦めました。歌舞伎町が居心地よかったのか、離れられなかったようです」
そして時は流れ、寒い季節が近づく中、氏家さんは事件へとつながる不幸に見舞われる……。
トー横界隈によく出没するというBさん(20代、学生)が一部始終を語りだす。
「氏家さんとはよく路上で飲み交わす仲でした。事件があったのは、11月の半ばくらいでしょうか。千葉県の木更津を本拠とする暴走族の少年グループがある日、歌舞伎町に乗り込んできたんです」
いつもどおり、広場で若者と話していた氏家さん。
「ひょんなことから木更津のグループと歌舞伎町のグループとの抗争が始まってしまったんです。そのときに氏家さんが木更津のグループに目をつけられた」(Bさん、以下同)
壮絶なリンチを受けて…
公園に連れていかれた氏家さんはボコボコに殴られたうえ、ウイスキーのボトル2本を無理やり飲まされた。
気を失っている氏家さんを見つけたBさんは、すぐに警察と救急車を呼んだのだが。
「木更津のグループが捕まることはなく、氏家さんは目白にある病院で2週間、入院することになりました」
退院後も歌舞伎町に戻ってきた氏家さんだが、たびたび現れる木更津のグループからその後も呼び出されては、集団リンチをされるようになったという。
そしてとうとう11月27日、悲劇が起きてしまった。
逮捕された4人について事情を知る歌舞伎町関係者によると、
「逮捕された少年2人のうち1人は木更津のグループの少年だったようです。しかしほかの3人は歌舞伎町の“住人”だった。関口容疑者はもともと、氏家さんと親交のあったトー横界隈のグループの一員でしたし、亀谷容疑者もトー横を仕切る中心人物でした」
氏家さんと容疑者との接点については、
「関口容疑者はトー横で弁当を配るなど氏家さんとも面識があったはずなのですが、なぜ今回のようなトラブルに発展してしまったのかわかりません……」(同・歌舞伎町関係者)
居場所を失い、歌舞伎町へと流れ着いた子どもたちの支えとなっていた氏家さん。少年らにリンチされる日々が続く中、最後まで歌舞伎町を離れることはなく、最期を迎えてしまった……。