寒い冬に身体を温めてくれる、しょうが。でも実は、生のまま食べてもその効果は得られない。加熱&乾燥させることが大事なのだ。医師おすすめの食べ方で、この冬を不調知らずで乗り切ろう!
加熱&乾燥でぽかぽか成分増!
寒い冬、身体が冷えやすい女性にはつらい季節がやってきた。冷えからくる肩こりや腰痛、むくみ、血圧の上昇……実はこれらの不調の原因は、すべて血流の悪さだ。
「健康も美容も、カギになるのは血流です。体内の栄養や酸素は血液に乗って細胞に届けられるので、血流が悪いとさまざまな不調が起こるのです」と教えてくれたのは医師の石原新菜先生。
寒さで縮こまりがちな身体の血流をよくしてくれる食材といえばしょうがだが、生で食べてもその効果はあまり期待できないという。
「大切なのは血の巡りをよくして身体を温める『ショウガオール』という薬効成分。生のしょうがにはわずかしか含まれていませんが、加熱・乾燥させることで、量を何十倍にも増やすことができます」
生のしょうがに多く含まれるのは身体の深部の熱を末端に広げる「ジンゲロール」という成分で、手足は温まるものの深部の熱が奪われ、体温は下がってしまう。
しかし、加熱・乾燥によって、ジンゲロールがショウガオールに変化すると胃腸を内側から刺激して血流を高め、身体の深部の熱をつくり出せるようになるのだ。
ショウガオールに変化する温度の目安は80度。あまり高温で加熱すると成分が壊れてしまうが、以降で紹介している蒸すという穏やかな加熱方法なら、生の33倍以上に増やすことが可能だ。
また、全身の血流がよくなり、体温が1度上がると代謝が12%アップするというデータもある。体温が低めの人は蒸ししょうがで代謝が上がれば、冷えの改善のほか、ダイエット効果なども期待できる。女性の強い味方なのだ。
毎日の習慣にしたい蒸ししょうが、その作り方と手軽にとれるレシピを紹介する。
オーブンで焼くだけ! 簡単「蒸ししょうが」の作り方
効果抜群の蒸ししょうが。材料のしょうがさえあれば、オーブンで簡単に作ることができる。粉末にしておけば、すぐに使えてとっても便利!
(1)しょうがを切る
しょうが(水分が多くて乾燥しづらい新しょうがはNG)を洗い、皮の汚れをそぎ落とす。皮のまま縞模様に沿って1ミリ厚さに切る。
(2)オーブンで加熱
(1)を耐熱皿に並べ、80度(80度が選べない場合はいちばん近い温度)で1時間加熱する。
(3)乾燥したことを確認
手で割れるくらいパリパリに乾燥したらできあがり。
【電子レンジの場合】
1ミリ厚さに切ったしょうがをシリコンスチーマーに並べてフタをし、レンジで10~15分加熱。甘い匂いがしたら取り出し、天日なら1日、室内なら1週間干して乾燥させる。
※レンジで乾燥させるとしょうがが燃えだす可能性が高いので、絶対に行わないこと。
→これをフードプロセッサーや、すりこ木ですりつぶすと、粉末蒸ししょうがの完成!
◆手軽にとれて身体ポカポカ 冬の蒸ししょうがメニュー
飲み物にも、料理にも、スイーツにも合う蒸ししょうが。もっとおいしく、もっと手軽にとれる、冬にぴったりのレシピをご紹介。
【おすすめ飲み物】
蒸ししょうがは、紅茶はもちろん、チャイやココアとも相性抜群。「アルコールに合わせるのもおすすめです。ホット赤ワインにサッと振りかけるとおいしいですよ。サングリアや甘酒にもよく合います」
・蒸ししょうが紅茶 [作り方](1人分)
ティーカップに好みの濃さで紅茶を入れ、蒸ししょうが小さじ1/2と黒糖(はちみつでも可)適量を入れてかきまぜたらできあがり。
【おすすめ料理】
鍋、ポトフ、豚のしょうが焼き……どんな料理も最後にかけるだけでOK。「中でも豚汁は温まるのでおすすめです。1杯で、味噌に豊富なアミノ酸やビタミンとミネラル、豚肉のタンパク質もとれますよ」
・蒸ししょうが豚汁 [作り方](1人分)
お好みの豚汁1杯に蒸ししょうが小さじ1/2~1をかけたらできあがり。豚汁にショウガオールと似た働きをするアリシンを含んだねぎや玉ねぎ、ニンニクを入れると、血管拡張などの相乗効果が期待できる。
【蒸ししょうがの主な効果】
●冷え改善
血管を拡張させることで血流がよくなり、身体を温める。
●ダイエット効果
脂肪を燃焼させてエネルギーに。血流がよくなって代謝が上がり、やせやすくなる。
●免疫力アップ
血液の流れに乗って免疫細胞が全身を巡って免疫アップ。アレルギー症状の改善も。
●更年期障害改善
しょうがにはホルモンバランスを整える亜鉛が多く含まれている。また、子宮や卵巣の血の巡りがよくなることで女性ホルモンの分泌も促進。
万能「蒸ししょうが」体験談
〜冷えによる膀胱炎が3日で改善! 本間美千代さん(50代)〜
10年以上にわたって、つらい冷え性に悩まされていた老舗和菓子店おかみの本間さん。
「立ち仕事なので身体がとにかく冷えて。背中や腰にカイロを貼っても効果がありませんでした」
冷えが原因で膀胱炎になり、腎盂腎炎まで発症。困り果てていたころ、石原先生のクリニックでしょうが紅茶をすすめられ、同時に、おなかにもカイロを貼り、暴飲暴食を控えるようにした。
「何を試しても治らなかった症状が、3~4日で治ったんです。驚きました。しかもそれまでは3か月に1度くらいの割合で膀胱炎が再発していたのに、それ以降再発していないんです」
さらに、風邪もひきにくくなり、更年期障害も軽くなったという。以来、毎日蒸ししょうがをとっている本間さん。ミルクティーに入れたり、黒蜜のビンに粉末にした蒸ししょうがを混ぜておいたりと簡単さが続けられるコツだそう。
「しょうがは甘酒や小豆にもよく合うんです。あんこやお汁粉にひと振りすると温まりますよ」
〜不調が改善して体重も10kg減! 石原新菜先生〜
「若いころは健康にまったく気を使わなかったので、ひどい肩こりや頭痛、生理痛持ちだったんです。体重も今より10kgも多く、むくみや巨大ニキビ、重度の花粉症に悩まされていました」
そんなとき、医師でもあるお父様から、しょうが紅茶を持ち歩くことをすすめられ、湯船での入浴や運動など生活も改善。
「すぐに症状が改善しはじめて、半年くらいですべての症状がなくなったんです」
以降しょうがをとり続け、現在は10kg減の体重を維持。
「当時の私のように、いつもどこか体調が悪い状態が普通だと思っている人も多いと思います。でも、きちんと治せることを知ってほしいですね」
蒸ししょうがQ&A
Q1:1日にとっていい量は?
A:しょうがはアメリカ食品医薬品局が「副作用のないハーブ」としている食品。1日1個程度のしょうがをとっても問題ない。毎日とる最低限の量として、生なら20g、粉末なら2gを目安にしよう。2g=1円玉2個分と覚えておきたい。
Q2:効率的なとり方は?
A:しょうがの効果が続くのは3~4時間。一度にたくさんとるよりも、朝・昼・午後・夜など、こまめにとるほうがいい。
Q3:とらないほうがいい人は?
A:熱が39度くらいあるときや、しょうがを食べると胃の不快症状が出たり、動悸が激しくなる人は控えるべし。
Q4:粉末蒸ししょうがの保存方法は?
A:密閉容器に入れて保存を。常温で3か月ほど保存可能だが、水分が入るとカビが生えるので、乾燥剤を入れておくと安心。また、蒸ししょうがを水に溶かして冷やすとショウガオールがジンゲロールに戻ってしまうので、液体に混ぜたら使い切るようにしよう。
イシハラクリニック副院長。医師。漢方医学、自然療法、食事療法を行う。講演、テレビ、執筆活動と幅広く活躍。『病気にならない蒸しショウガ健康法』など著書多数。
《取材・文/後藤るつ子》