※画像はイメージです

 たるんで妙に膨らんだ涙袋、重力に負けて垂れ下がった頬、顔を膨張させる二重あご……。それらを指で押すと「ぷにょぷにょ」としていないだろうか。

 認めたくないだろうが、それはまさしく老化による「たるみ」。常時マスクをするご時世となり、私たちの顔はさらにたるみやすくなってきている。

マスク生活で老け顔に

マスク生活が長くなり、動かさない、話さない、無表情でいる、といったことがみなさん普通になってきているんです。そうなると、“私、最近顔が老けてきてるわ”と。

 顔を動かす表情筋と、表情筋と連動している表在性筋膜(SMAS/スマス筋膜)の働きが弱くなり、さらに、その下の脂肪組織も変化するからなんですね」

 そう語るのは奥田医師(以下同)。『すぐ実感! 「マイナス10歳」カオキン体操』(青志社刊)を上梓、マスク時代の顔たるみを防ぐ、フェイスエクササイズを紹介している。

 目の周りや頬の周りなど、顔の筋肉を適度に気持ちよく動かすことを日常化することで、リフトアップ効果を得られるとは耳寄りだ。

「コロナ禍は、多くの方の生活に暗い影を落としました。ため息をつきながらはずしたマスクの下が老け顔。そんな悲しい状況を年齢問わず、多くの人に改善してもらえたら。1日2~3分、週2回ほどでも続けるうちにきっと効果を感じられると思います

「マスク老け」の3つの原因

【1】動かさない

 不織布マスクの密着度はウイルスなどの侵入を防ぐ反面、マスク下の皮膚を動かしづらくしている。

【2】話さない

 飛沫防止の観点から、公共の場での会話は控えることが推奨された。さらに休日の外出も敬遠されるようになり、会話の頻度が落ちてしまった。

【3】無表情

 マスクによって顔のほとんどが覆われたことにより、わざわざ表情をつくって相手に伝える必要がなくなった。これにより、コロナ禍前よりも顔の筋肉を動かすことが少なくなった。

老け顔の原因は表情筋!

 顔には約30種類の表情筋がある。この表情筋とこれをつなぐ表在性筋膜が表情を生み、顔の年齢を決めている。つまり、これらの筋肉が衰えると皮膚がたるみ、シワが深く刻まれ、締まりのない顔になってしまう。

 実は、「老け顔」かどうかは自分自身で比較的簡単にチェックできる。

 座った状態とあおむけになった状態とで消えるシワがあるか、頬の位置がズレるかを確かめればいい。あおむけになったときは気にならなかった頬やほうれい線、目元のたるみが、座り直して出てくるようなら要注意。すでにあなたは「老け顔」になっているのかもしれない。

表情が豊かな人は見た目が若々しい。CT画像を見ると表情筋がしっかりしていることがわかります。つまり、顔年齢は表情筋を鍛えることで若返るのです。対策はとれるということ」

 奥田医師は松田聖子と同年代、まもなく還暦だ。

 しかし仲間内からは実年齢より圧倒的に下の年代だと信じられてきたという。仕事柄、コロナ禍以前からマスクを着けるのが当然であっただけでなく、基本的にはひとりで作業を行うことが多く、日常的に人と会話する機会も少ないという奥田医師。つまり日ごろから表情筋を動かしているとはいい難く、むしろ「老け顔」へ一直線という環境……。それにもかかわらず、若く見られてきたのはなぜか。

「思い至ったのは、プライベートでの過ごし方。仕事中は“表情筋オフ”でも、プライベートになると自分でも“表情筋オン”のスイッチがものすごく入るんです。よく笑い、よく話し、表情豊かに過ごしていることで、若見え効果があるなと」

老け顔になる4つのポイント

〈1〉ほうれい線の有無

 年々くっきりしてくる部分なので、最初に顔の老化に気づくポイント。

〈2〉二重あごの有無

 体重が増えたから二重あごは仕方ない、などと考えているとせっかくの解消方法に気づかず手遅れになってしまう可能性もあるので注意。

〈3〉目尻の位置の下垂や目の下の袋状のたるみ

 若いころより垂れ目になっていたり、目の下に触るとぷよぷよした膨らみがあるかどうかをチェック。

〈4〉頬のたるみ

 ふと気づけばチークの位置が下がっていたり、頬に以前のような張りがなくなる。

 カオキン体操の目的は表情筋の活性化。顔の土台となる表情筋を立て直すことで、印象は大きく変わる。

表情筋には30種類近くの筋肉があり、顔のたるみやシワは、この表情筋と表情筋同士をつなぐ繊維状の筋膜、表在性筋膜を鍛えることで改善が見込める。(イラスト/久保木侑里)

『カオキン体操』は顔中の表情筋を動かし鍛えるための4つの運動からできている。

 筋肉は基本的に、縮める運動と緩める運動を交互に行うことで鍛えられる。動かさなければ衰えるし、動かしているつもりでも、小さな筋肉は動きづらい。そこで、あえて大げさに筋肉を動かすのがこの体操であり、それによって表情筋を簡単に鍛えられるように考案されている。

 そのなかから、頬のたるみやほうれい線に影響する大頬骨筋を鍛える「ニパニパ体操」を紹介しよう。

「ニパニパ体操」は4ステップ

(1)口を閉じ、少し口角を上げる

(1)口を閉じ、少し口角を上げる

(2)口角を上げ口を開き、「ニッ」と笑う

(2)口角を上げ口を開き、「ニッ」と笑う

(3)筋肉が硬くなっているのを確認、5秒キープ

(3)筋肉が硬くなっているのを確認、5秒キープ

(4)パッと力を抜き、口を閉じる

(4)パッと力を抜き、口を閉じる
頬のたるみ、ほうれい線に大きく影響している大頬骨筋を鍛える運動。連動して小頬骨筋なども鍛えることができる。

 この「ニパニパ体操」では、頬骨付近の大頬骨筋を動かすだけでなく、その周りにある小頬骨筋まで動かす。コロナ禍の日常生活では動く機会が少なくなってしまった筋肉も、しっかり鍛えることができるのだ。

 本の中にはこの「ニパニパ体操」に加え、「ギュッパー体操」「ウーイー体操」「リガメントほぐし」などの顔の運動だけでなく、日ごろの姿勢を少し見直すだけで顔年齢をグッと引き下げる秘訣や若々しく見られる習慣がたくさん詰まっている。

「表情筋は、腹筋を鍛えるよりずっと楽に強化できます。『えびす顔』のニコニコした表情を心がけるだけで十分。老け顔に悩む前にぜひ読んでほしいです」

 医学と科学の力から生まれた『カオキン体操』。「若い顔」をラクに手に入れるチャンスを逃す手はない。

『すぐ実感!「マイナス10歳」カオキン体操』(青志社刊)著者=奥田逸子※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします
お話を伺ったのは……●奥田逸子先生●国際医療福祉大学三田病院准教授。加齢画像研究所ONIを立ち上げ所長を務める。専門としているCT、MRIを活用した画像診断を応用し、加齢による顔のたるみに着目。『カオキン体操』と称した独自の老け顔改善運動を推奨している。

〈取材・文/オフィス三銃士(松本一希)〉