第19回 いしだ壱成
日本テレビが長きに渡り密着しているシリーズに『7男2女11人の大家族・石田サンち』があります。人が生きていればいろいろあるのは当たり前。ましてや子だくさんの大家族なら、問題はしょっちゅう起きるでしょう。その様子をカメラは追いかけるわけですが、芸能界の石田純一サンちも大変なようです。
純一と壱成は内面も似ているのか?
俳優・石田純一は2020年4月に新型コロナウィルスに感染してから、いいことがありません。不要不急の外出自粛令が出ていたのにゴルフに出かけ、その後に感染したことがバレて、猛バッシングされました。イメージダウンしたことでCMなどの仕事も減り、収入は大幅にダウン。12月7日配信の『女性自身』の記事によると、石田が知人に「離婚するかもしれない」とこぼしていたことや、豪邸を売却したのは、離婚のための財産整理の可能性があると報じられています。
石田は3回結婚しており、俳優・いしだ壱成は初婚時にもうけた子どもです。壱成も結婚を3回していますが、24歳年下の妻と離婚をしていたことを12月15日に配信された『女性セブン』の記事で明かしています。原因は金銭苦。うつ病をわずらっている壱成は仕事を見つけることができず、幼子を抱えている妻との生活は行き詰ってしまったようです。
純一は2回、壱成は3回離婚しているわけで、壱成は同誌に「ぼくと父は何か欠落している。やっぱり“同じ生き物”な気がします。ダメなところが似ている」とコメントしています。確かに複数回離婚しているという意味では似た者親子なわけですが、本当に内面も似ているのでしょうか?
恋愛や結婚は「個人の選択」としてとらえられがちですが、心理学ではそれらを「育ってきた家庭の焼き直し」と解釈します。どういうことかというと、育った家庭によって、結婚相手はある程度決まってしまうということ。「女性はお父さんに似た人と結婚する」とか「親が離婚していると、子どもも離婚する」というような結婚にまつわる俗説を一度くらいは聞いたことがあるでしょうが、これにはある程度の論理的な裏付けがあるのです。
娘のお受験時に不倫したヤバ男・純一
石田純一の人生を見ていると、「がまんできないオトコ」という印象を受けます。純一の2回目の結婚相手は女優・松原千明で、二人の間に女優のすみれが生まれました。下積みを経てトレンディドラマの常連となり浮かれたのか、石田はモデル・長谷川理恵と不倫関係に陥ります。芸能界には美しい女性がいっぱいいますから、誰かを好きになることだってあるかもしれません。しかし、私が心底呆れたのは、不倫の時期がすみれのお受験の最中だったことなのでした。娘の人生に関わる一大事の最中に不倫している父親はヤバいでしょう。
すみれは2020年3月14日放送の『おかべろ』(関西テレビ)に出演した際、当時を振り返って「お受験のときに、ちょうどこの(石田の不倫に関する)記事が出ちゃって入れなかったんですよ」とお受験失敗を明かしています。不合格の理由が純一の不倫だったと断定することはできませんが、常に自分の欲望が優先で、父親としての自覚や責任は持てないヤバいタイプと言えるのではないでしょうか。
お金にもだらしがないようです。『週刊女性』2021年11月16日号では、壱成本人が90年代に大活躍したころの億単位のギャラを、純一が失敗した事業の補填のために使い込んでしまったと明かしています。純一の現在の妻、東尾理子は2018年放送の『梅沢富美男のスバっと聞きます』(フジテレビ系)に出演し、純一が相談もなしに沖縄で冷麺屋をはじめ、お金が足りなくなったのか「保証人になって」と頼んできたと話していました。
そんな純一と比べると、壱成は不安定で行動もわかりにくいところがあります。2017年12月11日放送の『なかい君の学スイッチ』(TBS系)に出演した壱成は、別れた2番目の妻に課していたルーティーン7か条を明かしていました。実際に挙げてみましょう。
(1)毎朝コップ一杯の水を用意
(2)次に白湯を用意
(3)シャワー中にバスタオルと洋服を用意
(4)サラダを食べるときに7種類のドレッシングを用意
(5)帰宅時に45度のお風呂を沸かしておく
(6)入浴中に洋服を洗濯機に入れ、カバンを部屋に運ぶ
(7)カバンから領収書を取り出してまとめて精算
同番組に出演した心理カウンセラーはこれらをモラハラ行為に当たると話していました。壱成曰く、これらのルーティーンは過去の彼女が作り上げたもので、自分が言い出したものではないそうです。しかし、次第に「(壱成が)ルールを課して、(相手の女性が)それに応えることが愛情表現」と思うようになったそうです。
上記のルーティーンひとつひとつは、それほど難しいものではなく、手際のいい人なら数分でこなせてしまうレベルのものでしょう。それだけに、これのどこがモラハラかと思う人もいるかもしれません。ポイントはこのルーティーンを守れなかったときに相手がどんな態度に出るのかということなのです。壱成は同番組で「無言でにらみつける」などの“罰”を与えることを明かしています。ここまで行くと甘えん坊の夫と世話焼き妻という範疇を越えて、命令する人、される人という上下関係になってしまっていると言えるでしょう。
また、この理論で言うと、壱成が女性に無理難題をたくさん押し付けるのは「愛しているから」となりますし、女性もそれらすべてに応じなければ「愛している」と認めてもらえなくなるでしょう。愛されれば愛されるほど女性は仕事が増えて、疲弊していく。なぜそんなヤバいことをするのか。答えは簡単で、それは愛ではなく共依存だからではないでしょうか。
壱成と妻が陥る“共依存”の関係
精神科医の斎藤学氏は『家族依存症』(新潮文庫)内で、共依存を「他人に対するコントロールの欲求で、他人に頼られていないと不安になる人と、人に頼ることで、その人をコントロールしようとする人との間に成立するような依存・被依存の人間関係」と説明しています。
モラハラも共依存の一種で、モラハラ夫は「愛しているなら、これくらいできるはずだ」とルーティーンを要求しますし、モラハラされる妻も必要とされることが嫌いではないので「私が〇〇しなかったから、夫は怒っているのだ」と自分を責めてしまいます。それで二人が満たされているのならいいのですが、斎藤氏は共依存について「互いに相手をむさぼりつくす」関係とし、その結果、「憎みながら離れられない」「軽蔑しながら、いないとさみしい」という、外野から見たら理解されない関係であることを指摘しています。
壱成は3番目の妻とは公開キスをするなど、公衆の面前でイチャイチャを繰り返してきました。前妻にはモラハラでつらく当たったのに、なぜ今回はラブラブ? と思う人もいるかもしれませんが、これも“共依存”の一種かもしれません。
特に人生経験の少ない若い女性は愛情表現が多いと「それだけ愛されている」と思って相手にのめりこむでしょう。公衆の面前でオトコとキスするオンナを口説こうとする男性はまずいないでしょうから、公開イチャイチャで女性を孤立させ、自分に依存させることができるのです。人前でベタベタする有名人カップルほど破局も早いイメージがありますが、それらが共依存によるものなら、相手を支配し、縛り付けるのが目的ですから、関係性が長続きしなくてもおかしくはないでしょう。
斎藤氏は共依存の根底にあるのは「怒りとさみしさ」と解説しています。他人サマの親を悪く言う権利は誰にもありませんが、「がまんできないオトコ」純一を父に持ち、壱成は怒りやさみしさをずっと「がまんすること」を強いられてきたのではないでしょうか。親によってもたらされたさみしさから逃れるための手段がモラハラや公開イチャイチャだとしたら、誰も壱成を責められないでしょう。
しかし、そうは言っても、壱成自身も子を持つ親です。いつまでも、親がああだからとは言っていられないでしょう。まずは健康を回復させて、仕事をすることが大事ではないでしょうか。「親の因果が子に報う」ということわざがありますが、今度は自分がお子さんを苦しめないために奮起を期待したいところです。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」