(左から)「ミキ」の亜生と昴生、「ぺこぱ」のシュウペイと松陰寺太勇

 いよいよ『M-1グランプリ2021』の決勝戦が行われる。

「今年の決勝は、初進出が5組。いわゆる正統派漫才ではない異色のコンビが多いことで注目されています」(お笑いライター)

“知名度がカギ”敗者復活戦

 注目が集まるのは、それだけではない。

「決勝直前に行われる敗者復活戦でも、例年以上の熾烈な戦いが予想されています。ラストイヤーの『ハライチ』や『アルコ&ピース』、テレビでもブレイクした『見取り図』や『ニューヨーク』など、誰が勝ち上がってもおかしくないでしょう」(同・お笑いライター)

 お笑い評論家のラリー遠田さんに、今年の敗者復活戦について聞いてみると、勝利のカギは“知名度”だという。

'15年以降の敗者復活戦は、視聴者投票で結果が決まります。もちろん、その日にウケた人が勝ちあがりますが、知名度があるほうが圧倒的に有利なのです。近年は、知名度の低い人は勝ち上がっていません。

 今年の敗者復活戦は、テレビ出演の多いコンビがたくさんいるので、その中の誰かが勝ち上がるのではないでしょうか」

 そんな注目の戦いが行われるのは、真冬の野外だ。

「『千鳥』が勝ち上がった'05年と『サンドウィッチマン』が勝ち上がって優勝も果たした'07年の2回、現場で敗者復活戦を見ましたが、'05年は神宮球場、'07年は大井競馬場で行われ、広い野外で風も直接当たるので、本当に寒かった」(ラリーさん)

'05年のM-1グランプリで敗者復活戦から勝ちあがり、優勝したサンドウィッチマン

 寒さだけでなく、これまで敗者復活戦は多くのハプニングに見舞われてきた。

「'02年から'04年の敗者復活戦は、有明の『パナソニックセンター東京』に設置された特設会場で行われていました。

 当時は無料で観覧することができて、'02年と'03年は、目と鼻の先の会場で行われていた『コミックマーケット』と日程が被っていたことで、アニメファンの野次馬がたくさん集まって、現場は混乱したそうですよ」(前出・お笑いライター)

毎年のように起きるトラブル

 現在の会場になってからは、立地の影響も受けることに。

'15年から使用されている『六本木ヒルズアリーナ』は、すぐ近くに広い道路があって車の走る音が当たり前のように聞こえてしまう場所。当然やりにくいですよね」(ラリーさん)

 この言葉どおり、ここ数年は何組もの芸人が音のハプニングに見舞われている。

'17年の敗者復活戦では『囲碁将棋』のネタ中に救急車のサイレンが鳴っていて、'18年には『ミキ』の出番にバイクらしき騒音が鳴っていました。『ミキ』はこのトラブルにもしっかり対応して勝ち上がっていたので、さすがでしたね」(現地で見たファン)

「ミキ」の亜生と昴生

 昨年は、2組の芸人が“被害”に遭った。

『ぺこぱ』のネタ中に、まるで妨害するかのように宣伝カーの音が聞こえていました。『ニッポンの社長』のネタ中には『夕焼け小焼け』のチャイム音が。チャイム音は流れる時間が決まっているはずなので、運営の段取り次第で避けられた気もしますが……」(同・現地で見たファン)

「ぺこぱ」のシュウペイと松陰寺太勇

 前出のラリーさんは、こういったハプニングについてこう語る。

「『ミキ』は、ツッコミの昴生さんが声を張り上げるスタイルのネタです。屋外でも騒音に負けないパワーがあった。逆に、『ニッポンの社長』はセリフとセリフの間が長いネタだったので、余計にチャイム音が目立ってしまった。

 ハプニングも、芸風やネタによって相性はありますよね。騒音のハプニングに関しては、派手な芸風のほうが対応しやすいでしょう。

 過酷な野外で頑張った人が決勝に上がってきたという演出として、あえてあの環境でやっていますが、基本的には芸人さんも室内でやりたいと思います」

 最後まで何が起きるかわからない敗者復活戦。予想外のハプニングも乗り越えて逆転のチャンスを手にするのは誰か――。