「このノートを書き始めて数ヶ月。信じられないけど旦那が本当に死にました」
「世の中のクソ旦那ども! よく聞け!」
「死んでほしいけど、実際死んだらいろいろ困る。死なない程度の嫌がらせって何してます?」
物騒な文章がずらりと並ぶサイトがある。その名も『だんなDEATH NOTE』。
開設は2015年。2017年に、その書き込みを集めた書籍『だんなデス・ノート 〜夫の『死』を願う妻たちの叫び〜』(宝島社)が発売され、Amazonの本カテゴリ『家庭生活』部門の売り上げランキングで1位に。メディアでも大きく取り上げられ、話題になった『だんなDEATH NOTE』は、ここ数年でどう変わったのか。
「コロナ禍に入り、書き込みの内容が少しずつ変わってきたように思います」
そう話すのは、このサイトの創設者であり、現在も管理人をしている“死神”こと、牧田幸一朗さん。現在も1日に約100件近く書き込まれ、具体的な内容としては、「コロナにかかって死ね」「ワクチンの副反応で死ね」など。仕事がテレワークになり、家にいる時間が増えた旦那への文句や愚痴が増えたのだそう。
「コロナ前は、旦那さんが飲み歩いている、遅くまで連絡が来ないといった不満が多かったんです。特に金曜日の夜は、アクセス数やコメントが一気に増える傾向にありました。でも、コロナが流行してからは、飲み会への不満がめっきり減り、最近では“家にいるんじゃねぇ”というような不満を多く見ますね」
家にいてもいなくても文句を言われる旦那は、相当嫌われているのだろう。
検索ワードで見えた男女の違い
書き込むためには会員登録が必要となる。『だんなDEATH NOTE』の現在の会員数は2万9000人ほど。
そもそも、なぜこのようなサイトを立ち上げたのだろうか。
「僕の両親は仲が悪く、幼少期の思い出は嫌なものばかりだったからです。小さいころの経験は今でもトラウマとして残っていて、同じようなつらさを今の子どもたちには感じてほしくないと思ったことがきっかけです。女性の不満や愚痴を吐き出せる場所を作ろうと生まれたのがこのサイトでした」
もともと、ブログのアフィリエイトや集客リサーチに関係することもやっていたという牧田さん。
「Googleの検索で“妻”や“嫁”と打つと、予測変換で出てくるのは“誕生日”や“プレゼント”など前向きなワード。それに対して“夫”や“旦那”と打つと、“嫌い”や“死ね”というワードが出てくるんです。男性は女性を喜ばせるための答えを探そうとしますが、女性は感情をぶつけて検索するんだなと気づきました」
デスノートに寄せられた書き込みは、牧田さんがすべて目視で確認したあとに、サイト上に掲載される。
サイト内にはアクセス数ランキングが設置されており、上位には「本当に旦那が死んだ」という報告もチラホラ。それに対して、「おめでとうございます」「羨ましすぎる」と大量のコメントがついているのも衝撃的だ。
ホームページのトップには「死んだ旦那8名」との文字も。
「8人死んだなんて、冗談ですよ(笑)。会員の数や書き込みの内容は事実ですが。基本的に何かで話題になる、注目されたいときは“尖る”しかない。ときにはファンタジーや空想も大事。それも含めてエンタメなんです。
本当に死んだという書き込みを初めて見たときは、さすがにびっくりしました。でも亡くなった事実確認まではできませんからね。本当かもしれないし、嘘かもしれない。それは僕にもわからないです」
多くのメディアにも取り上げられ、知名度が一気に上がった際には、批判も多くあったという。それらを、どう受け止めたのだろう。
「批判は受け止めるというか、まぁ、そうでしょうねと(笑)。でも、本当に夫婦関係が良好ならまだしも、リア充アピールとか、キレイゴトを言うくらいなら、文句を言っている方が正直でいいと思います。僕はその方が健全なんじゃないかなと」
電話相談、離婚届の証人にも
そんな牧田さんは、サイト上に自身の顔や連絡先、住所を公開している。
「僕は逮捕されてもいいくらいの気持ちでやってます。電話番号や住所は、どんな人間が管理しているか分かることにより、多少は怪しさが半減するんじゃないかと思って、公開しているんです。殺害予告や爆破予告が届いたこともありますが、被害に遭ったことはありません。
実際、電話をかけてくれる女性もいますよ。誰にも聞いてもらえない思いを話すために。頻度は1か月に2〜3件くらい。電話をしてくる女性は基本的に追いつめられている状態で、9割くらいの人は、話してる最中に泣いてしまいます」
なかには、「本当にデスノートの効果がありました」といったお礼の電話もあるのだとか。コロナが流行する前は、会員同士のオフ会も行なっており、そこで離婚届の証人になったこともあると明かす。
「その方には、今でも1年に1回は連絡を入れています。自殺未遂をしたこともあるので、生きてますか? と生存確認メールを送るくらいですが」
会員たちの書き込みに向き合い、大泣きして電話をかけてくる女性の話にも耳を傾ける。赤の他人の離婚届の証人にもなる。どうして牧田さんは、そこまで女性に寄り添ってくれるのだろうか。
「自分が作ったものが話題になり、いまだに投稿が続いている。必要としてくれる人がいて、活用もされている。そこに自分の生きる意味や価値を感じているんです。これは仕事ではなく趣味の一つなので、労力とも思いません。“DEATH NOTE”という名前に対して、(漫画を発行している)集英社さんから苦情が入ってこない限りは、続けていこうと思っています(笑)」
『だんなDEATH NOTE』は妻の希望となるのか、それともーー。