'21年7月29日、福岡県中間市の私立『双葉保育園』であってはいけない事故が起きた。園児の倉掛冬生ちゃん(当時5歳)が帰りの送迎バスに乗っていなかったことから、母親が同園に連絡した。
「同園は2台の送迎バスがあり、その日は朝と帰りでバスを替えていた。冬生ちゃんは、駐車場にあったバスの中で倒れていた」(地方紙記者)
朝の送迎バスは前園長みずからが運転していて、その日は7人の園児が乗っていたが、
「冬生ちゃんは後部座席で寝ていたため、前園長は気づかなかった。バスから降ろし忘れて、そのまま駐車場に止めていたんです」(同・記者)
車内の温度が50度以上になったバスの中、冬生ちゃんは9時間も放置されることに。発見後すぐに病院に搬送されるも、間もなく死亡が確認された。死因は熱中症によるものだった。
園児への虐待が指摘されて
事故から5か月がたった'21年12月17日、福岡県警は業務上過失致死の疑いで職員4人を福岡地検に書類送検した。送検されたのは当時、バスを運転していた前園長(44)、降車補助の保育士(58)、当時の担任保育士(29)、副主任保育士(53)。4人とも容疑については認めている。
その後、福岡県は同園の安全管理体制に複数の問題があったと指摘。同園は県に対して改善案を提出するも、
「“園長が朝の出欠確認をすることが記載されていない”と内容が不十分として再提出を求めました」(福岡県庁の子育て支援課担当者)
園児への虐待を指摘する保護者からの意見もあり、
「再度、特別指導監査を実施して調査を行いました」(同・担当者)
同園は前園長の祖父が40年以上前に設立。叔父が2代目の園長に就任したが、10数年前に他界して、後を継いだのが前園長だ。だがこの事故を機に、前園長はもちろん、理事長兼主任保育士を務めていた前園長の母親も辞任。前園長の姉も保育士として働いていたが、現在は休養中だ。
園児の数は130人から90人に
「こうした悲惨な事故を二度と起こしてはいけない。送迎バスはなくしました」
そう話すのは、9月から同園の新園長で、別の保育園で園長経験のある梅田典子さん(75)。事件後、送迎バスの運行はやめていたが、10月の保護者会で正式に廃止することを発表。同園はもともと送迎バスの利用者が少なかったため、保護者からの反対はほとんどなかったようだ。
だが、事故の影響で園児の数がおよそ130人から90人へと激減したという。
「不安になった保護者の方が子どもさんを転園させたんです。でもそれは仕方のないことでしょう」(新園長、以下同)
前園長らについては、
「尊い園児の命を奪ったわけですから、その責任は取らなければいけない。それがどういう結末になるかは想像がつきませんが……」
私たちの役目は預かった子どもをしっかりと守りながら、導いていくことだ、と新園長。
「大変なことですが、子どもたちのために頑張りたい」
幼くしてこの世を去らなければならなかった冬生ちゃんの無念。決して無駄にしてはいけない─。