《立ちんぼ女教師逮捕》
こんな衝撃的な見出しがメディアに躍ったのは昨年9月15日。
「東京都の区立小学校に勤務する27歳の女性教師が新宿・歌舞伎町で立ちんぼ行為を繰り返していたとして逮捕されました。客引きした男性が偶然にも私服の警察官だったため売春防止法違反の疑いで現行犯逮捕となったのですが、起訴猶予中に再び同じ容疑で逮捕となりました。
教師の資格を失うリスクを冒してまでなぜ罪を重ねたのか。警察の事情聴取によると地下アイドルへの“推し活”による借金が300万円に膨れ上がり、その返済のために売春をしていたというのです。借金を自分の体を使ってでも返済しようとしたところは教師だけに真面目というかなんというか」(スポーツ紙記者)
前述の女性教師逮捕が報じられたことで、同じく歌舞伎町で立ちんぼ行為をしていた女性たちは池袋に移動するなどはあったが、今も身体を売る公務員女性2人に話を聞くことができた。
何が彼女たちを“立ちんぼ”に走らせたのかーー。
効率の良い副業を探していた
●ケース1「 “推し活”の借金が膨れ上がってーー」三村英子さん(仮名・20代)市役所勤務
「立ちんぼ女教師さんがきっかけでこの仕事を始めました」
そう話すのは、黒髪のロングヘアが印象的な三村英子さん。
三村さんは都心からほど近い市役所に勤めている。
「地方公務員なので給与は手取りで20万円弱。給与だけでは余裕のある生活はできない状況でした。副業がバレたら即解雇なので、ウーバーイーツに登録はしたけど、働く勇気は出ませんでした。目撃されたらアウトですから。効率のいい副業を探していたところ、女教師さんのニュースを見て“なるほど”と思ったんです」
女性公務員が売春で逮捕された報道を見て売春を始めたというのだ。
「売春なら即日即金でもらえて確定申告もないから副業バレしない。ネットでの出会い系とかパパ活だと誰に見られているかわからないし、顔写真をスクショされたら終わりです。でも立ちんぼなら相手の顔を見て選べるし、立っているだけなら売春しているとはバレないし、すごくいいと思ったんです」
そのニュースを見たとき、財布の中にはわずかな現金のみ。クレジットカードは次の支払いが済むまで使用が制限されている状態だった。悩んでいる暇はないと三村さんは歌舞伎町に向かったという。
「思ったより緊張しませんでした。お酒を1杯入れてから行ったのもあるし、いろんな人がいて自分に注目が集まらないのもありました。立っているとホストやホームレス風の人など多くの男性が声をかけにきます。また、私が声をかけなくてもおじさんの方から声をかけてくれたので、最初の1回目はその中でまぁまぁ悪くなさそうな人を選んでホテルに行きました。1回2万円もらっていて、1日6万円が目標です」
淡々と話す三村さんだが、なぜそんなにお金が欲しいのだろうか。
「女教師さんと同じ“推し活”での借金です。給料日が毎月10日で、支払いが毎月27日なので、給料日まで返済を待ってもらっていました。借金を返済すると、口座に現金がなくなるので、カードを使っちゃう。それがまた払えなくなる、、、の繰り返しで。
私の推しはK-POPグループ。推しに迷惑をかけたくないので、名前は言いません。推しグループには12月生まれが2人いるんです。うち1人は1番人気のメンバーなので生誕祭もド派手にやります。推しに惨めな思いはして欲しくないので、ファン同士で広告を出したりとかそういった活動に、イベントがある月はざっと30万円かかります。さらに限定グッズを買ったり、海外遠征も含めたら月100万円あっても足りない。先ほど言いましたが来月は推しの生誕祭なので1か月前の今(取材時は11月)からお金を貯めておかないと」
電車で1時間半かけて歌舞伎町に“通勤”
そのとき、同行していた編集者が“そんなことで(身体を売るのか)”とつぶやいた。すると三村さんは身を乗り出し、
「そんなことってなんですか?! 私にとって推しはすべてです。身体を捧げる価値のある相手です。自分の価値観で判断しないでください」
と、感情をあらわにした。続けて、
「推しは彼氏であり子ども。恥ずかしい思いをさせられないんです」
と、語気を強めた。編集者は謝罪し、改めて推し活にかかる費用を聞くと、
「コロナ禍でライブが開催されなかったから今年(2021年)はほとんど使っていないです。コロナ前は給料日後の週末は韓国に行っていましたね。何するわけでもないのですが同じ国で同じ空気を吸いたいという気持ち。あと推しが身につけているものと同じブランドアイテムを買ったり。推しはハイブランドを身につけることが多いので、月に30万円はやっぱり使っていたかな」
三村さんの毎月の手取りでは足りずに、マイナス分はボーナスに繰り越していたという。
副業は本業に影響を及ぼさないのだろうか。
「大丈夫ですよ。地元から歌舞伎町まで電車で1時間半かかるので金・土しか私は立っていません。金曜日は20時から23時までの3時間、土曜日は昼12時くらいから夜20時くらいまでいますね。目標の金額に達成したら帰ります。金曜日に達成できなかった場合は土曜日に多くお客をとっています。おかげでノルマの週12万円を稼げています」
怖くはないのだろうか。
「慣れました。ネットでの出会いと違い、直接顔を見て交渉するので変な人は勘が働くというか。怖いのは客の振りをした私服警察官ですね。それだけは気をつけています。ただ取材を受けたので今後は出勤日時は変えますけど(笑)」
肌と顔のメンテナンス費用に
●ケース2「毎月の美容費と婚活費用のために」佐藤朋子さん(仮名・30代)幼稚園教諭
「相手するのが子どもからおじさんに変わるだけなので」
売春をすることに抵抗はないのかと聞くと、即座にそう答えた佐藤さん。肌がツヤツヤと輝いている。編集者が“水光肌”(韓国トレンドのうるツヤ肌)だと指摘すると、佐藤さんは嬉しそうに
「わかりますか? 水光注射打ってるんですよ。他にも白玉点滴やタブロ(フェイスリフトの一種)もやっています」
男の筆者には何のことかさっぱりだが、どうやら美容施述メニューのことらしい。
「私がここに立つようになったのはまさにこれのせい!」
と、佐藤さんは自分の顔を指す。
「この肌と顔、メンテナンスにお金がいくらあっても足りないんです」
と明るく笑った。
佐藤さんは東京郊外の公立幼稚園に勤務する先生。子どもたちからは“トモちゃん先生”と呼ばれ親しまれ、保護者とのトラブルもなく、仕事内容に不満はまったくないという。
「30代半ばで独身って世間では全然珍しくはないけど、この世界(幼稚園)だと行き遅れなんです。みんな20代半ばで適当な相手を見つけて結婚していく。うちの幼稚園では隣に小学校が建っていて公立で連携もとれているので、小学校教師と結ばれるパターンが多いです。どんどん周囲が結婚していく中で、私は安月給で苦労が多い(とされている)教師ではなく、もっといい条件の男と結婚するんだと決めて美容に力を入れるようになったんです」
最初は部分的なシミ取りぐらいだったが、ボトックス注射や糸を皮膚に入れるなどの高額施術に次第にうつっていく。さらに、
「結婚相談所にも複数登録しているのですが、高学歴高収入のハイスペック男性を射止めるには女性側もお金を支払わなければいけないので、美容費と婚活費用で月給の3分の2は出ていってしまいます」
いつの間にか借金の総額は200万円を超えた。それでも“結婚さえすればチャラになる”の思いから借金を重ねている。
「とはいえ、今はまだ結婚できていないわけだから借金を返さなくてはいけないんですよ(笑)。悩んでいるときに保護者の男性から夜のお誘いを受けました。保護者とそんな関係になることはタブーなのでお断りしたら金銭を提示されて。それでも断りましたがヒントをもらいましたね。身体を売ればいいんだ、って。なるべく見つからなくて、うちの保護者や関係者が絶対にこない場所は歌舞伎町だなって。それで立つことにしました。もう半年になります」
歌舞伎町を選んだ理由は、知人に合わないこと以外にもある。
おじさんと“幼稚園ごっこ”
「大学生のときにホストクラブにノリで行ったことがあったんです。そのとき歌舞伎町入り口のドンキホーテからコマ劇(当時)まで歩くのに、もう数え切れないほどの誘いを受けたんです。あそこならすぐに(身体を売る相手が)見つかると思いました。
密室での行為で金銭の授受を目撃されなければ捕まることはないし、副業もバレる恐れがない。だって自由恋愛だと言えば済むじゃないですか。副業って結局足がつくと思って諦めていましたが、なんで今まで気づかなかったのかと思ったくらい」
幼稚園教諭というスペックで思わぬ反応があった。
「私は本職を明かしているんです。幼稚園の先生って需要があるんですよ。昨日も昼に幼稚園でクリスマスのお面づくりをしたことを話すと、子ども返りしたおじさんが“先生、僕もお面作りたいー”って。だからお客さん用にお道具箱を作ったり、名札を作ったり。幼稚園教師という職業をフルに活かしています。
行為をしなくてもお金をくれるお客さんもいるんですよ。幼稚園ごっこっていうんですかね、それで満足される方がいたり、本当に面白いなと思います」
佐藤さんはこの仕事に充実感を覚えているように聞こえるが、やめどきは考えているのだろうか?
「もちろん。結婚相手が見つかったらスパッとやめますよ」
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公務員という職業柄なのだろうか、2人ともルールを決めて“真面目”に副業に取り組んでいるのが印象的だった。とはいえ、売春は犯罪行為。話を聞いた2人からはその自覚が感じられなかったーー。