飲食店には徐々に人が戻ってきているが、コロナ前の客足にはまだほど遠いという。安上がりな「家飲み」を続けている人も多いのだろう。
家飲みのお供になるコンビニやスーパーのおつまみ。品ぞろえは以前より充実している。パッケージを開けるだけで食べられたり、レンチンするだけで本格おつまみになったりとお手軽なものが多く、値段も手ごろ。家庭的なお惣菜や定番の居酒屋メニューなど、種類も豊富とあって、ついつい手を伸ばして一杯、とやりたくなるのもわかる。
「でも、コンビニやスーパーで売られているおつまみは添加物まみれといっていいほど。毎日のように食べ続けるのは要注意です」と長年、食品の安全性を取材しているフリージャーナリストの郡司和夫さんは言う。
いったい、どれほどの添加物が入っているのか、具体的に見てみよう。
例えば電子レンジで加熱するだけで食べられる「牛すじ煮込み」。家で居酒屋気分を味わうにはもってこいのおつまみだが、多くの種類の添加物が使われていることがわかる。
「まず要注意なのが、調味料(アミノ酸)と書かれている添加物。これはいわゆるうまみ調味料のL-グルタミン酸ナトリウムを主に指します。食品衛生法では認められていて国は安全だといっていますが、行われているのはラット実験のみ。人間で安全性が確かめられたわけではないのです」
L-グルタミン酸ナトリウムはこのおつまみだけでなく、数多くの市販のつまみに多用されていて、使われていない商品を探すほうが難しいほど。
「うまみが強いからお酒がすすみ、お酒を飲むとさらにつまみが欲しくなって食べる、という悪循環。知らず知らずのうちにこの添加物の摂取量が増えてしまいます」(郡司さん、以下同)
緑内障を引き起こし、失明の可能性も
L-グルタミン酸ナトリウムの摂取を続けても本当に人体に影響はないのか。こんな研究結果もある。
「10年ほど前に弘前大学で行われたラットの実験で、L-グルタミン酸ナトリウムは緑内障を引き起こす危険があるという論文が発表されました。L-グルタミン酸ナトリウムを多く消費している日本や東南アジアでは、失明の原因第1位が緑内障です。この一致はただの偶然でしょうか」
ほかにもこの商品の原材料表示には、pH調整剤、カラメル色素、たん白加水分解物、増粘剤と添加物のオンパレード。
「pH調整剤は、菌の増殖を抑えて食中毒防止に役立つ添加物ですが、全部で34種類あるのにどれを使ってもpH調整剤という一括表示が許されています。具体的に何がどのくらいの量使われているのかわからないので安全性に不安が残ります。最近は弁当やサンドイッチなどに広く使われているため、添加物メーカーの幹部社員も『最近は何にでもpH調整剤を入れすぎている』と嘆くくらいです。また、ひとつひとつの添加物も心配ですが、それらを食べ合わせたときにどういう健康被害があるのかも、詳しいことはわかっていません。食べ続けるのは要注意だと思います」
要注意なのはおつまみだけではない。人気の缶チューハイも問題ありだ。いま流行りのストロング缶は9%とアルコール度数が高いのに口当たりがよく、つい飲みすぎてしまうため、アルコール依存症が心配されているが、注意すべき点はほかにもある。
ある大手メーカーの実際の缶チューハイの原材料表示を見てみよう。酸味料、香料、甘味料、ビタミンC、黄色4号とあるのは、すべて添加物。お酒にこれだけの添加物が入っていることを知らない人も多いのではないだろうか。
「天然由来と勘違いしてしまいがちなビタミンCの正体は実はアスコルビン酸という添加物です。アスコルビン酸が入ったこの缶チューハイを飲みながら、例えば韓国土産のキムチを食べたりすると実に危ない。というのも、アスコルビン酸は安息香酸ナトリウムというキムチに含まれている添加物と同時に摂取すると体内でベンゼンが発生し、めまいや吐き気という健康被害がドイツで報告されているのです」
原材料がわからない海外土産
安息香酸ナトリウムは日本国内ではマーガリンなどの一部の食品にしか使用が認められていないが、韓国ではキムチなどにも認められている。
「韓国で作られたキムチや大根の酢漬けに多量に使われているのが発見され、日本で回収に至ったということもありました。お土産にもらっても、原材料表示が読めなければ避けることもできない。喜んで食べている場合ではありません」
いくら添加物や原材料の安全性が疑問視されても、添加物の使用基準はなかなか変わらない。なぜなのか。
「添加物を減らして製造、流通させるには、どうしても多くの手間とコストがかかります。それより、添加物を多用して安い材料でも簡単にうまみを出し、長期保存できる商品を作ったほうがもうかるわけです。良心的な食品メーカーもありますが、大手メーカーをはじめ市場の主流がそうだから、変わるのは難しい」
では、安心して家飲みを楽しむにはどういった工夫が有効なのだろう。
「まず、調理ずみのものを避け、できるだけ素材の原形に近いものを選ぶこと。たとえば落花生や枝豆など。豆腐を買ってきてシンプルな冷ややっこにするのもおすすめ。これなら添加物が入る余地が少ない。出来合いのおつまみでお酒を楽しむときは、食べすぎない、飲みすぎないことも大切です」
無添加の食品は高価だし、すべて手作りするのはめんどうなものだ。だが、安くて便利とばかりに、なんの疑問も持たずに食べ続けると思わぬ健康リスクがあるかもしれない。数ある市販のおつまみの中から上手に選んで、家飲みを長く楽しみたいものだ。
市販のおつまみ&酒には添加物がたくさん!
●一見素朴な「牛すじ煮込み」の原材料表示
原材料名:牛メンブレン、こんにゃく、牛肉、しょうゆ(小麦・大豆含む)、砂糖、みそ、みりん、ポークエキス、ソテーオニオン、たん白加水分解物、ビーフエキス、食塩、にんにくペースト、酵母エキス/増粘剤(加工デンプン)、pH調整剤、調味料(アミノ酸)、カラメル色素、水酸化Ca、酸味料
「たん白加水分解物」
たん白質に塩酸を加えた人工的な物質。作られる際に発がん性が疑われる遺伝毒性を持つ物質が生成される場合も。法令上は添加物ではないので、いくらでも使うことが可能。
「増粘剤(加工デンプン)」
加工デンプンという食品のようなネーミングだが、れっきとした化学化合物。発がん性があるとされているものもあり、ヨーロッパでは幼児向け食品への使用が禁止されている。
「pH調整剤」
日持ち効果のために、弁当やサンドイッチなどに広く使われている添加物。34種あるが、どれを使っても一括表示でOK。何がどれくらい含まれているのかわからないので、安全性に不安が残る。
「調味料(アミノ酸)」
化学的に合成したうまみ成分で、危険性が心配されるL-グルタミン酸ナトリウムもこれに含まれる。数種類使われていても一括表示される。
「カラメル色素」
着色に使われる添加物で4種類ある。そのうち2つに発がん性が疑われる物質が含まれているが、どれを使用しても一括表示が許されている。
●いま人気の「ストロング缶チューハイ」の原材料表示
原材料名:レモン、ウオッカ(国内製造)/酸味料、炭酸、香料、ビタミンC、甘味料(アセスルファムK、スクラロース)、黄色4号
「酸味料」
単に酸味料と表記すればいい物質は20種類以上ある。なかには天然には存在しない物質もあり、安全性に疑問が残る。
「ビタミンC」
一見すると安全そうにも見えるが、実際は活性酸素を多く発生させる合成ビタミンCのアスコルビン酸。天然のものとは別もの。
「甘味料(アセスルファムK、スクラロース)」
甘さがアセスルファムKは砂糖の200倍、スクラロースは600倍、コストは4分の1以下の人工甘味料。長期にわたる人体への影響は未知数。
「黄色4号」
見栄えをよくするために色をつける人工着色料。石油を原料に作られるタール色素系の着色料で、発色がよく退色しにくいのが特徴。
命を縮めない!家飲み3か条
1.市販のおつまみは原形に近いものを選ぶべし!
買うならできるだけ素材の原形に近いものを。ゆで卵、冷ややっこ、落花生など、素材ままの素朴なものは添加物の入り込む余地が少ない。
2.缶チューハイよりビールにすべし!
お酒では甘めの缶チューハイ類が添加物が多い。アルコール度数が高いのに人工甘味料で口当たりがよく、飲みすぎる点も要注意。ビールやハイボールは製造方法にもよるが、添加物は少なめ。
3.「レジ横惣菜」は避けるべし!
コンビニの店頭で売られている揚げ物、おでんなどには原材料表示義務がないのでチェックできない。匂いにつられそうになるが、揚げ物は酸化、おでんは添加物の心配あり。
取材・文/野沢恭恵