生理用品は同じタイプのものを継続して使いがちだけれど、使い捨てタイプの布ナプキンや身体につけるタイプの生理用品など、気づけばニュータイプが続々登場。周期が不規則になったり、経血量が多くなるなど悩ましい更年期の生理も自分に合う生理用品を選んで快適に過ごそう。
毎月お世話になっている生理用品。「生理用品はただの消耗品」などと思っていたら大間違い。今、私たちが想像する以上に進化を続けているのだ。その開発秘話や人気の秘密を聞いた。
ファンサイトができるほど人気の商品
まず筆頭に挙げられるのが、『ソフィ シンクロフィット』(ユニ・チャーム)。
一見すると餃子のように見える形状に「どうやって使うの?」という声が思わず出てしまいそうになるが、特長はいつものナプキンにプラスして使う“身体につける生理用品”であるということ。デリケートゾーンに挟むようにして使うことで、経血をしっかり吸収し、気になるモレを防ぐタイプの生理用品だ。
「シンクロフィットはナプキンでもタンポンでもない、身体とナプキンの隙間に入れる、新しいカテゴリーの生理用品で、今から16年前の2005年に開発されました。
まったく新しいタイプの商品だったため、実は長い間、店舗では認知されずに一部のドラッグストアにしか置いていない日陰の商品だったのです。商品特長と使用方法をCMなどで理解してもらうのが難しいというのが、その理由でした」(ユニ・チャーム(株)ESG本部広報室・清水さん)
ところが2018年にユーザーがイラストも交えたシンクロフィットの使い方をSNSに投稿したことで売り上げが3倍以上にまでアップ。ツイッターで『#がんばれシンクロフィット』という投稿が広がり、今ではファンサイトが立ち上がるまでに。
「メーカー目線で一方的に伝えるよりも、実際に使っていただいたお客様の声が重要だということを改めて教えてもらえた商品です」(清水さん)
夜、寝返りをしたときのモレの不安なしへ
紙ナプキンで悩むのが、経血のモレ。“多い日”は常にモレていないかどうか気にしなければならず、わずらわしさを感じている人も多いのではないだろうか。
『ロリエ 朝までブロック 安心ショーツ』は、ナプキンとショーツがひとつになった、いわゆる「はくナプキン」。2001年、『ショーツになった!スーパーガード』として、業界初のショーツ型ナプキンを花王が発売。
以来、改良を重ねて現在の形になった。現行品の特長は、(1)48cmの超ロング吸収体で腰の位置までしっかりカバー (2)おしりの谷間にぴたっとつく設計で不安なおしりの隙間をつくらない、というもの。
「一貫して“モレない安心吸収”を追求してきました。ナプキンとショーツの一体型だからこそつけ心地にこだわり、ショーツ生地にあたる不織布に柔らかい素材を採用するなど、細部にまでこだわっています」(花王(株)PR戦略センター 事業PR戦略部・菅原さん)
愛用者からは、「夜、布団で安心して寝返りを打てるようになった」など、よくフィットして不安から解放されたという声が多く届いているという。更年期の生理は経血量が増えたり減ったりと不安定。ショーツタイプなら心配な夜も安心感が違う。
“使い捨て布ナプキン”という新しい発想
布ナプキンは洗って繰り返し使うもの。この常識を打ち破って売り上げを伸ばしているのが、『使い捨て布ナプキン フリーナ』。使い捨て紙ナプキンや通常の布ナプキンの上に重ねて使うタイプの布ナプキンで、言ってみれば紙ナプキンと布ナプキンのいいところどりをした商品だ。
「布ナプキンは着けごこちがよくて好きだけど洗うのが負担」「家では布ナプキン、外では使い捨て紙ナプキンを使っているけれど、紙ナプキンを使うのに罪悪感がある」といった声を受けて2016年に発売。ほぼインターネットのみの販売にもかかわらず、売り上げはシリーズ累計10万個に及ぶ人気商品に。
「ふわふわした風合いを出すために、数え切れないほどの改良を重ねてきました。『普段の布ナプキンの洗濯が楽になった』『肌荒れやかぶれ、かゆみなどのトラブルがなくなった』などの声をいただいています。
布ナプキンからスタートしたメーカーなので、最初は使い捨ての販売には正直、抵抗がありましたが、お客様から想像以上の反響をいただきびっくりしました。それだけみなさん生理用品に不便や面倒を感じていたのだと思います」(匠ソリューションズ(株)ジュランジェ事業部・只野さん)
デリケートゾーンが乾燥しやすい更年期にも、やさしい使い捨て布ナプキンなら安心できる。
求められていたシンプルなデザイン
数ある生理用品のなかでも「欲しかったデザイン!」「生理用品らしくないところがいい」という声で多くの人に選ばれているのが『エリス 素肌のきもち 超スリム シンプルデザイン』。
必要な情報を最低限にしたシンプルなデザインと薄さ、高級ホテルのアメニティーのようなブラウンのしっかりした不織布素材が特長だ。
シンプルながらもしっかり吸収し、吸収後もサラサラ感が続く表面シートと、つけ心地にこだわった独自の形で多くの“大人女子”に選ばれている。
「シンプルデザインを開発し始めたとき、SNSで『生理用品にはどうしてパステルカラーが多いのか』という投稿が上がり、多くの人が共感していました。
そこで、パッケージを見て『かわいい』と言われないものを目指しました。ネットで先行販売をしたところ、3時間で完売。その後、店頭販売を開始し売り上げも好調です。
それまで生理用品は“ついで買い”されるアイテムでしたが、買い物カゴに1、2番目に入れられるようになりました」(大王製紙(株)マーケティング本部 フェミニンケア・ブランドマーケティング部・本さん)
ポーチやバッグに入れても生理用品とわかりにくいデザインは、大人女子にも喜ばれそうだ。
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「更年期になると、生理周期が長くなったり短くなったり、量も増えたり減ったりとバラバラになるため、生理に備えるのが難しくなります」
そう話すのは、産婦人科医の高橋怜奈さん。生理の間隔が開いていき、1年以上生理がなければ閉経となるが、それまで不定期に訪れる更年期の生理を快適に過ごすにはどうすればいいのか。
「更年期になると女性ホルモンの減少から肌が敏感になってきます。萎縮性膣炎といって、膣が萎縮することでかゆみを生じ、生理用品でかぶれることも。
更年期の生理用品選びで大切なのは、何より肌に合うものを選ぶこと。今までと同じ生理用品を使い続ける人が多いですが、更年期だからこそ、自分に合うものを見つけ、生理期間を快適に過ごせるようにしましょう。また、更年期だからと生理不順や不正出血を放置せず、気になる場合は婦人科を受診しましょう」(高橋さん)
お話を伺ったのは…高橋怜奈さん ●2009年東邦大学医学部卒業。産婦人科専門医、医学博士。東邦大学医療センター大橋病院産婦人科勤務、四ツ谷レディスクリニック非常勤医師スタッフ。「産婦人科医YouTuber」としても活躍。監修に『おとなも子どもも知っておきたい新常識 生理のはなし』(主婦と生活社)がある。
〈取材・文/樋口由夏〉