昨今、西島秀俊(50)の活躍が目覚ましい。2021年10月からスタートした連続ドラマ『真犯人フラグ』(日本テレビ)で主演を務め、12月末に公開された松本潤主演の映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』では物語の鍵を握る重要な役どころで出演。さらに、'21年夏に公開された主演映画『ドライブ・マイ・カー』は、第79回ゴールデングローブ賞にて日本映画では62年ぶりに「非英語映画賞」を受賞する快挙を達成した。
同世代でも一味違う西島の活躍ぶり
西島と年の近い50歳前後で、主役を張る男性俳優といえば、大泉洋(48)、堺雅人(48)、竹野内豊(51)、福山雅治(52)、内野聖陽(53)、大沢たかお(53)、佐々木蔵之介(53)、江口洋介(54)、織田裕二(54)らだろう。このほか、少し上には仲村トオル(56)、阿部寛(57)、堤真一(57)、唐沢寿明(58)といった面々がそろう。
まさに「ベテラン」「大御所」といった顔ぶれだが、西島は出演作の傾向がやや彼らと異なる。バラエティー番組などへの出演も多い大泉洋を除き、このクラスの俳優になるとドラマや映画への出演本数は決して多くないのだが、西島は'21年だけで連続ドラマに3作、映画は4作に出演。しかも主演連続ドラマが2作、主演映画も2作という大車輪の活躍だ。
演じる役どころも多彩だ。役どころでは、映画『劇場版「奥様は、取り扱い注意」』で公安エリートを演じて激しいアクションシーンを披露したかと思えば、映画『劇場版「きのう何食べた?」』では内野聖陽とともにゲイのカップルの日常を丁寧に演じてファンの心をつかんだ。
さらに、出演する作品の規模感も注目したい。『おかえりモネ』(NHK)や『真犯人フラグ』など朝ドラやゴールデンタイム作品に出演し、『劇場版「奥様は、取り扱い注意」』や『劇場版「きのう何食べた?」』はともに興行収入が10億円を突破するなど大作に目が行くが、規模の大きくない作品にも出演している。
例えば、'21年5月スタートの主演ドラマ『シェフは名探偵』(テレビ東京系)は、23時台という“深夜ドラマ枠”で放送。話題の映画『ドライブ・マイ・カー』は、全国で100館程度という中規模で公開がスタートした作品だった。このほか、『NHKスペシャル』を中心にナレーションの仕事にも積極的に取り組んでいる。
新人俳優のようにフットワークが軽いワケ
誤解を恐れずに言えば、まるで“売り出し中の20代俳優”のように、精力的な活動を見せるのが西島の特徴だ。いったい、このフットワークの軽さはどこから生まれるのだろうか。
西島は、1993年に連続ドラマ『悪魔のKISS』(フジテレビ系)と『あすなろ白書』(フジテレビ系)に相次いで出演し、ブレイク。特に『あすなろ白書』では筒井道隆演じる掛居保に思いを寄せる同性愛者の友人役を演じて、アイドル的な人気を集めた。
だが、様々なインタビューで「映画が好きで俳優になった」と語っているように、役者として目指す方向性が違った西島は、当時所属していた大手芸能事務所から移籍。その後、1998年から2001年までは、民放ドラマに出演できないという状況に陥った。
一見、不遇ともいえる2000年代だが、西島は精力的に映画出演をしている。'05年の7本を筆頭に、'02年・'06年・'08年にそれぞれ5本の出演作が公開という、驚異的な出演ペースを見せた。
ルックスや肉体美に目が行くが、様々な作品で経験を積んだ西島は演技の評価も高い。昨年末には、米紙ニューヨーク・タイムズの名物企画「グレート・パフォーマーズ/ザ・ベスト・アクターズ・オブ2021」に選出されたが、同紙は「西島秀俊の控えめで憂いを帯びた存在は、鋭いウイットと切り裂くような批判的知性を隠し持っている」と評している。
40代に再びブレイク
中山美穂と共演した映画『サヨナライツカ』('10年)、竹内結子さん主演の連続ドラマ『ストロベリーナイト』('12年)、大河ドラマ『八重の桜』('13年)など話題作への出演が続くなど、'10年以降に再び注目を集めるようになったが、『八重の桜』時点で西島は43歳。
演じる役柄の広さ、作品の規模感を問わないフットワークの軽さは、まさにこういった彼の経歴から生まれてきたものだろう。日刊スポーツが昨年12月に行ったインタビューにて、西島は次のように語っている。
「僕は本当に遅咲きと言うか、遠回りしてきた人間なので、もしかしたら皆さん(他の俳優)が20、30代で経験してきたことを40、50代で、ようやく形になりつつあるのかな、これから始まるのかなというふうに思っています」
今年は、「仮面ライダー生誕50周年記念プロジェクト」の1作として春に配信が予定されている『仮面ライダーBLACK SUN』にて中村倫也とともにW主演を務め、役柄が不明ながら映画『シン・ウルトラマン』(5月13日公開予定)への出演も決まっている。3月29日に51歳を迎える主役級の俳優が特撮作品に挑戦――。まさにフットワークの軽い、西島らしい選択だろう。
次は一体、どんな顔を見せてくれるのか。『ドライブ・マイ・カー』の好演をきっかけに、世界にその名を知られるようになった彼だが、我々の予想を裏切る演技を見せてくれるに違いない。
(文/千歳康一)