宮中の新年行事である『歌会始の儀』。起源は明らかではないが、鎌倉時代にはすでに催されていた記録が確認されている─。
今年も、皇居・宮殿の松の間で『歌会始』が行われた。
「昨年は新型コロナの影響で3月に延期されましたが、今年は1月18日に開催。出席者は事前にPCR検査を受けるなど、感染対策が講じられました」(皇室担当記者)
陛下本人が手を差し伸べられて
今年のお題は“窓”。国内外1万3830首の一般公募から入選した10人と、天皇陛下や皇族方の和歌が披露された。
「皇室の方々がご自身の考えを公にする機会は、記者会見や節目の文書、公務でのスピーチなどに限られます。内面に触れられることはあまりないため、和歌を通してお気持ちを発信できる『歌会始』は貴重な機会なのです」(同・記者)
最年長入選者として参加した西村忠さん(85)は、感慨深げに語る。
「この年になって、皇居へ足を運ばせていただけるなんて夢のようで、ようやく親孝行ができたと思っています(笑)。『歌会始』の終了後、入選者が1人ずつ両陛下とお話しさせていただきました」
西村さんが住む富山県は、両陛下にとっても思い出深い地だ。
「陛下は高校時代、県内にある“合掌造り”という茅葺屋根の民家に宿泊されたことがあります。その家が今も使われていることをお伝えしたら、家主の姓まで覚えておられたのには驚きました。
皇后陛下は“親戚が新潟県に住んでいたこともあり、富山県にもよく遊びに行きました”と微笑み、懐かしんでいらっしゃいました」(西村さん)
一連の会話の後には、こんな一幕も。
「儀式中にお手洗いで離席しないように前日からほとんど飲まず食わずだったので、当日ふらついていたのかもしれません。陛下がわざわざ手を差し伸べながら“どうぞお座りください”と声をかけてくださいました」(同・西村さん)
国民のことを第一に考える陛下のお心は、和歌にも表れている。
《世界との 往き来難かる 世はつづき 窓開く日を 偏に願ふ》
「陛下は昨年に引き続き、新型コロナの収束を願うお気持ちを、雅子さまは昨年9月に赤坂御所から皇居に引っ越された際に感じた、上皇ご夫妻への感謝を詠まれました。愛子さまは、学業優先のため儀式は欠席されましたが、成年となられたことで今回初めて和歌を披露されました」(前出・記者)
英国に関する和歌を詠まれた喜び
現在、学習院大学の文学部日本語日本文学科に通われる愛子さまは、幼いころから歴史や古典などに興味をお持ちだった。
「小学6年生の夏休みに作成された『藤原道長』というレポートは、論理的な内容で小学生が書いたものとは思えませんでした。中学の卒業文集では『世界の平和を願って』と題し、原爆の悲惨さや平和の尊さを書かれています」(宮内庁関係者)
すぐれた文才で、たびたび周囲を驚かせてきたプリンセスの気になる“初和歌”は、
《英国の 学び舎に立つ 時迎へ 開かれそむる 世界への窓》
「愛子さまは、高校2年生の夏休みにイギリスのイートン校で約3週間の留学を経験されました。初めて外国の学校を訪問し、歴史の重みを感じる立派な建物を目にされた際に“ここから世界が開かれようとしている”と、胸を弾ませたお気持ちを詠まれたそうです」(前出・記者)
陛下が披露された和歌と同様に“世界”という言葉が含まれることについて、ある宮内庁OBは感嘆する。
「愛子さまだけではありませんが、多くの大学生はコロナの影響で思い描いていた学生生活を送れていないでしょう。その現実を嘆くのではなく、未来を見据えた明るい歌を詠まれた点が、さすが天皇家の長女だと思いました」
英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんは、英国に関する和歌を詠まれたことに喜びをにじませる。
「皇室と英王室は深い親交関係にあります。昭和天皇は、ジョージ5世から多大な影響を受けていますし、上皇さま(当時皇太子)はエリザベス女王の戴冠式に出席されました」(多賀さん、以下同)
'20年春には令和初の海外訪問として、両陛下の訪英が予定されていたが、新型コロナの影響で延期に。
「次回はぜひ、愛子さまも含めてご一家で訪問していただきたいですね。イートン校は、英王室のウィリアム王子やヘンリー王子の出身校でもあります。“母校トーク”に花が咲くのではないでしょうか」
英王室のみでなく、ベルギーやスペイン、ノルウェーなどヨーロッパの王室には、愛子さまと同世代のプリンセスが多くいる。'06年に、天皇ご一家がオランダで静養された際、愛子さまと手をつないでいたアマリア王女もその1人だ。
雅子さまの分まで努力を重ねられて
「語学が堪能な愛子さまは、英語を“手段”として日本文学や文化を世界に発信できるお方です。“和魂洋才”を体現される稀有なプリンセスとして世界中から注目を集め、素晴らしいお役目を果たされると思います」
和魂洋才とは、日本人固有の精神をもって西洋伝来の学問や知識を活用する生き方を指し、愛子さまにピッタリなように思える。
文化学園大学客員教授で皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんも、内親王としての矜持を感じたという。
「学びのスタートラインに立たれたという、すがすがしいお歌で、高校時代の英国留学の思い出だけでなく“また留学したい”という夢や希望も感じられました。両陛下はイギリスのオックスフォード大学へ留学された経験をお持ちですので、愛子さまもご両親のように長期留学を経験して視野を広げたいとお考えなのでしょう」
世界へ羽ばたく準備を着実に進められる愛子さま。
「お手本はもちろん、雅子さまでしょう。雅子さまは、ロシアやアメリカでの生活だけでなく、大学時代にはドイツやフランスへ留学されています」(前出・宮内庁OB)
若いころから広く世界に向けられた視野は、外交官時代にも遺憾なく発揮された。
「陛下とのご結婚に際して、雅子さまが心を動かされたのが皇室外交。国際親善は雅子さまがお力を発揮できる場だと周囲から期待されていました。
しかし、実際はお世継ぎに注目が集まり、外国訪問もほぼできなかった……。愛子さまは、ご体調を崩された雅子さまの分まで活躍しようと努力を重ねていらっしゃるのでは」(同・前)
“母の背中”を、追駆される愛子さま。目前には果てしない世界が広がっている─。