夫からモラハラやDVを受けているが、経済的な理由や子どものことで離婚はできない……。そんな女性のために、離婚せずにモラハラ対策を行う方法をレクチャーしているのが、「離婚しないモラハラ対策カウンセラー」のJoeさん。夫に対してだけでなく、会社の上司や親にも使える「Joeメソッド」を具体的に教えてもらった。
「愛より平和」をモットーに
モラハラとは「モラルハラスメント」の略称で、道徳・倫理に反したいやがらせで相手を精神的に追い詰める行為を指す。そして夫からのモラハラに悩む女性が多いこともわかっているが、その救世主として知られるのが人気カウンセラーのJoeさんだ。
Joeさんがモラハラ対策メソッドを考案したきっかけは何だったのだろうか。
「私は典型的なモラハラ家庭に生まれ、毎晩のように夫婦ゲンカを見ていました。冷静に、客観的にモラハラという精神的暴力の実態を見ているうちに、モラハラをする人の心理メカニズムが見抜けるようになり、同時に、被害者がどう反応すれば、モラハラをする人の攻撃欲や支配欲をそぎ落とせるのかもわかるようになったのです。
その方法を周りでモラハラ被害に遭っている方たちにも実践していただくとうまくいき、いろんなケースへの対処法のデータを蓄積して、現在のJoeメソッドを確立することができました」(Joeさん、以下同)
Joeメソッドの特徴は、「愛より平和」をモットーに、離婚せずにモラハラに対処することだ。
「私のメソッドは弱者の戦略です。経済的理由や子どもの養育などが理由で、すぐに別れるのが難しい人も多いですし、モラハラを受けて精神的に弱ってしまい、闘うパワーが残っていない人も多いです。そんな人でもできるのがJoeメソッドで、簡単に言えば、相手に自分を見せないようにするのがポイントです」
モラハラする夫は、誰にでもモラハラするわけではなく、上司や友達にはしていない。つまり、支配できそうな人を選んでモラハラをしているのだ。
「モラハラを受けやすいタイプは、いつも相手の機嫌をとろうとしてしまい、優しさを自分にも他者にも求め、誠実で、頑張ればいつか認めてもらえると信じています。夫に怒鳴られてもとっさに言い返せなかったり、自分が悪いと思ってしまうと、モラハラ体質の夫からは“支配できる人間だ”とみなされ、服従しなければ攻撃され、モラハラがエスカレートしていくのです。
夫の支配から離れるためには、ふだんから相手への言葉や反応を減らし、『何を考えているのかわからない人』になること。怒る、泣く、大笑いする、落ち込むといった自分の感情を見せないようにすると、あなたが弱いのか強いのかわからなくなり、モラハラ体質の人からは不気味な存在となります」
Joeメソッドは力でねじ伏せるのではなく、相手から攻撃されない心の距離を探すことでもある。
「別居や離婚も距離をとる方法ですが、一緒に暮らしながら心の距離をとるには、反応を減らし、接点を減らし、冷めたオーラを出し続けることです。早い人なら実践してすぐに、夫からのモラハラがなくなります」
しかし、これは夫が変わったわけではない。
「モラハラ体質の人は変わることはなく、支配できる相手を見つけるとまた攻撃を開始します。夫にちょっと優しくされたからと、メソッドをやめてしまうと、また夫からのモラハラが始まるでしょう。また、依存体質の人や、孤独感に耐えられない人、服従することがいいことだと思っている人は、メソッドを継続できない可能性があり、万人が成功するわけではありません」
子どもが物心ついた年齢の場合も、注意が必要だ。
「モラハラ夫に対する態度は、子どもには絶対にしてはいけません。子どもには明るくわかりやすいリアクションを心がけてください。ただし、子どもへの態度=本当の妻の態度だと、夫に悟られないよう、『子どもの教育のために、ふだんの自分とは違う、明るい態度をとっているんだ』というスタンスを夫に示してください」
仕事や親との関係でもメソッドは使える
Joeメソッドは、仕事の人間関係や親との関係でも有効だ。
「モラハラ体質の上司がいる場合、きちんと仕事をこなしたうえで、愛想のいい態度はとらず、心のうちを見せないようにすれば、攻撃されることはなくなります。親からモラハラを受けている人も、反応を少なくしていくことで攻撃が減っていくでしょう」
Joeさんのブログを読んで初めて、自分の夫がモラハラだと気づく人も多い。
「昭和の時代は、妻が夫に服従するのが当然とみなされていました。時代は変わったものの、まだモラハラは新しい言葉であり、自分の苦しみがモラハラによるものだとわかっていない人も多い。
優しさで生きることは美しいですが、優しさで相手が変わると思うのは幻想です。人間関係は優しさと冷たさのバランスでつくられています。腹が立った相手には冷たくする、怒っていることを伝えられる人が、本当にバランスのいい人だと知っておいてください」
Joeメソッドを実践した後の着地点は、人それぞれだ。
「離婚する人もいますし、家庭内別居のような状態を続ける人もいます。ただメソッドを続けると、依存体質から脱却し、何者にも支配されず、自分の足で生きることの心地よさに目覚める方が多いです」
最後にJoeさんはこうアドバイスする。
「身近な相手からモラハラをされているけれど、すぐには離れられない事情がある人は、まず私の本を読んでJoeメソッドを実践してみてください。また、今はモラハラを受けていない人も、今後、直面した際に役立つ内容なので、知っておいて損はないと思います」
Joeメソッドを実践したレモンけいさんの感想
「夫と暮らすことに違和感が……」
毒親育ちのため、「結婚して普通の幸せな家庭が欲しい」と願い、寂しさや自分への自信のなさから結婚したことも、モラハラ夫を引き寄せてしまった一因だと思います。幸せな家庭の妻でいたいという思いから、夫からDVを受けていても、離婚をする勇気はとても出なくて、離婚に向けて動くことを最初は避けていました。
Joeメソッドを実践するうちに、洗脳が解けていき、そのうち夫と暮らすことに違和感が出てきて、目が覚めました。精神的に弱いタイプの私でも、Joeメソッドは実践でき、今は夫と別居して、子どもと穏やかな暮らしをしています。
『マンガでわかる あなたを傷つけるあの人からの攻撃がなくなる本』(税込み1200円 飛鳥新社刊)
ブログ・メルマガでも大反響。超・実践的なテクニックで多くのモラハラ被害者を救ってきた「Joeメソッド」の、待望のコミック化。
〈取材・文/紀和静 漫画/レモンけい〉