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 年明け早々、パンやコーヒーなどが10~20%値上がり、次は冷凍食品、パスタやポテトチップスなども予定されている。今年の値上がりは食品だけにとどまらず、公共料金や医療費など広範囲に及ぶ。収入増が見込めないなかの物価高。さらなる家計引き締め……ため息しかない。

値上げはこれからが本番

「どうにかこうにか値段据え置きで頑張ってきたメーカーなども限界。値上げラッシュは避けられません」というのは消費経済ジャーナリストの松崎のり子さん。

 原油高、原材料や輸送費の高騰、コロナ禍による世界的な需給変化、異常気象が日本経済を脅かし続けている。

 昨年は大豆や小麦、トウモロコシといった穀物価格の国際相場が急上昇、小麦粉や食用油の価格が引き上げられた。影響を受け、食用油を多用するマヨネーズや調味料、パンなどのメーカーも相次いで値上げを発表。価格を変えず内容量を減らすという手を打ってきた企業も本体価格を上げざるをえなくなっている。

 逆に、コロナ禍で価格が下がっている食品も。例えば米や生乳。消費が大きく下がり、在庫がダブついた結果だ。

「このような不安定な価格変動は一時的なものでは終わりません。長期戦を覚悟して『賢い消費者』としての眼力を鍛えるべき」(松崎さん、以下同)

偏った節約はキケン

「割引クーポンや貯まったポイントの消費、SNSで流行っているから、などを理由にしてつい不要なものを買ってしまう人は注意。無駄遣いをしないだけでなく、どんなときに浪費しがちなのか、自分のお金の使い方の『弱点』を知ることが大切です」

 限定モノや最新モノをつい買ってしまったり、好きなショップやブランドの前を素通りできない……心当たりはないだろうか。

 これらの支出をすることで生活が彩られて心が豊かになる。ストレスを発散する効果もあるため、やみくもに減らす必要はない。しかし、自分は何に対して見境なくお金を出しがちなのかは知っておきたい。

値上がりの時代、売り手側はあらゆる手法を駆使して商品を売り込んできます。世の中に蔓延していくそんな誘惑的な策略に踊らされないためには、自分の弱点を知ったうえで意識的に対策をとるしかないのです」

 出銭が増えるなら、さらなる節約をと考えるにも「ちょっと待って」と松崎さん。

「家計を守るために細かな節約を意識することは大事です。しかし食費や光熱費だけを削るなどという偏った節約はアブナイ。食費を削ることを意識するあまりにストレスがたまったり、健康を害してしまったら本末転倒」

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 長期化が予想されるインフレで、値上がりするたびに一喜一憂していたらキリがない。もはや食費や光熱費が上がるのは仕方ないと覚悟して、その分、ほかの支出を削る、あるいは収入を増やすことを考えていきたい。

「コロナ禍の影響でお金の使い方は変わってきています。外出用の洋服代や化粧品代、外食等の交際費も以前より浮いたのでは?まずはいま一度、家計費の内訳を見直し、削れる支出を明確にしていきましょう」

 見直しをして減らせるとわかっているものの、手をつけていない費目(通信費や保険料など)はないか。ほとんど利用していないのに口座引き落としされている費目(サブスクリプション契約料、クレジットカード年会費など)はないか。確認したい。

「増やす」策を

 節約と同時に考えたいのが“収入を増やす”。例えば、食洗機や掃除ロボット、無水調理鍋などの時短家電を購入し、家事は機械に任せる。その分空いた1時間をパートに出たり、副業などで働く時間を増やす。働きに出るのが難しい人は、家の中を整理して、着なくなった洋服や不用品をフリマアプリに出品してお金に換えることもできる。

 特に主婦層に人気なのが、自分のスキルや知識をお金に換える“スキルシェアサービス”。家事経験で得た料理・洗濯・掃除スキルを活かし、家計の足しにする人は多い。

「値上げ、物価高、出費増の傾向はますます加速するとみて間違いない。コロナで打撃を受けた企業は守りに入り、リストラに乗り出すところも。厳しい時代はまだ当分続くと考えたほうがいいでしょう。節約という守りの家計管理にも限界はあります。健康なうちに、家族みんなが協力して少しでも稼いでいくという攻めの考えが必要です」

松崎のり子さん

監修/松崎のり子  ●消費経済ジャーナリスト。雑誌編集者として20年以上、貯まる家計・貯まらない家計を取材。「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)ほか。

〈取材/オフィス三銃士〉