1月クールの連続ドラマが次々とスタートし、いよいよ2022年のドラマ界が幕を開けた。今年も百花繚乱、見た目麗しく個性豊かな若手俳優陣が私たちの目を楽しませてくれそうだ。
昨年は山田裕貴、松下洸平、赤楚衛二、眞栄田郷敦、仲野太賀と実力派から、永瀬廉、松村北斗といったジャニーズのほか、イケメン、二世と幅広いカテゴリーの俳優たちがブレイクしたが、今年はどんな若手俳優が頭角を現すのだろう。長年ドラマウォッチャーとして活躍するカトリーヌあやこさんに予想してもらった。
「本命は高橋文哉さん。ブレイクってインパクトから始まると思うんですね。視聴者の心にどれだけの爪痕を残せたかということですけど、そういう意味では昨年秋クール放送の『最愛』での高橋さんは素晴らしかった。ヒロイン・吉高由里子さんの謎めいた弟役でしたが、ちょっと頼りなさげで儚げな感じが母性本能をくすぐる。そりゃあ彼のためならお姉さんも人生すべて投げうっちゃうだろうなっていう強烈な吸引力がありました。
1月クールは医療モノの『ドクターホワイト』で研修医を演じます。お調子者の愛されキャラらしいので、『最愛』とはまた違う弟属性を発揮してくれるのでは。本人のキャラもなかなか立っていて、調理師免許も持っているので、バラエティーや情報番組でも重宝されそう。ドラマや映画はもちろん、今年はいろんな分野で活躍が期待できるんじゃないでしょうか」(カトリーヌさん以下同)
ギャップ引き立つ若手俳優は
カトリーヌさん曰く、昨今の若手俳優がブレイクするにはイケメンだけではないプラスαが必要なのだとか。『ヒルナンデス!』のような情報番組でも芸人や女性タレントのほかにイケメン枠があることでもわかるように、バラエティーで弾けられるかどうかは結構重要。番宣などで出演した際に、役を演じているときとは違う一面やギャップをいかにうまく見せられるかでその後の好感度も変わってくる。その点を考慮しても高橋さんが大本命なのだろう。
では、続いて対抗は?
「板垣李光人さんです。彼は大河ドラマ『青天を衝け』で民部公子さまと呼ばれた徳川慶喜の弟・昭武を演じていたのですが、そのときの彼がまぁ気高く、尊い……本物の王子さまって感じで(笑)。そんな彼がこの冬出演しているのが『シジュウカラ』という山口紗弥加さんの主演ドラマ。板垣さん演じるのは主婦で漫画家の山口さんに近づく、心に闇を抱えた18歳年下の青年なんですが、“これがキラキラしていた民部公子さまと同一人物なの?”っていうくらい目に全く光がないんです。こんなにも光の出し入れができるのかって驚きました。
演出を担当している映画監督の大九明子さんは恋愛モノでもどこか不穏な画作りをする方なので、彼の濡れたようなエロさや闇の部分をうまく引き出していて、大河との対比がとても面白い。不倫モノでもあるし、奥様方のハートにかなり響くと思います」
3番目に挙げてくれたのも、前作とのギャップが際立つような若手俳優。
「清水尋也さん。彼は朝ドラ『おかえりモネ』で清原果耶さんの同僚の気象予報士をやっていました。すごくダサかったのがテレビに出ることで垢ぬけていくという役でしたが、実際は186cmの長身で、ものすごくスタイルがいいんです。
彼に初めて注目したのは15、6歳の頃で、映画『渇き』で壮絶なイジメを受ける子、映画『ソロモンの偽証』ではものすごい不良という両極端の役をほぼ同時期に演じていて、振り幅がスゴいなとびっくりしました。その後、坂元裕二さん脚本の『anone』で広瀬すずちゃんが恋する彦星という不治の病の子を演じるなど、普通とはちょっと違う役で光る不思議な存在感を持っている個性派イケメン。この冬の『となりのチカラ』で演じるのも、世間を震撼させた凶悪事件の真犯人と噂される陰のある青年という、まさに十八番の役柄。世間的には『おかえりモネ』での気象予報士の“まもちゃん”のイメージが強いと思うので、そのギャップに驚く人も多いのでは」
ブレイク間違いなしの“鉄板コース”とは
もちろん、ほかにもネクストブレイク候補の若手俳優はたくさん。そんな中でも、青田買いが好きな人にはぜひ注目してほしいドラマが『もしもイケメンだけの高校があったら』だ。
「『ビーチボーイズ』と『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』は定期的にリメイクすべきだと主張している私としては見逃せないドラマです(笑)。3年前に『PRINCE OF LEGEND』というLDHが制作した作品があったんですけど、“王子が大渋滞”というコンセプトでなになに系王子っていうのがこれでもかと出てくるんですね。そのフォーマットで秋元康さんがドラマを作ったらどうなるのかというのがこの作品。主演の細田佳央太さんは『ドラゴン桜』で学習障害のある子、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』では全盲の子と難しい役をやっていましたが、彼が演じるとハンデを暗く感じさせない愛すべき役になるんです。すごく面白い役者さんだなと思います。このドラマの生徒役のイケメンたちはネクスト・ネクストブレイク俳優なので、ここでツバをつけておいて損はないです(笑)」
ところで、近年のブレイク俳優を見ていくとある傾向があることに気づく。特撮から朝ドラという流れだ。『侍戦隊シンケンジャー』から『梅ちゃん先生』の松坂桃李、『仮面ライダーフォーゼ』から『あまちゃん』の福士蒼汰、『仮面ライダーW』から『ごちそうさん』の菅田将暉などなど、ここに乗ればブレイク間違いなしの鉄板コースなのだ。
「高橋文哉さんも板垣李光人さんも元仮面ライダー。特撮って1年かけて撮影するじゃないですか。そこで芝居のイロハを叩き込まれてから朝ドラでガツンと知名度を上げるというのがブレイクの美しい形なんだと思います。なので、この2人の出演も近いうちにあるのではないでしょうか。
もう一つ、最近ブレイクのきっかけになっているのがBL系ドラマです。『おっさんずラブ』の大ヒットを機に数多くのBL作品がつくられるようになって、そこに将来性豊かな若手がどんどん投入されているんです。去年も『チェリまほ』(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)で赤楚衛二さんと町田啓太さんがブレイクしましたし、『消えた初恋』ではなにわ男子の道枝駿佑さんと、Snow Manの目黒蓮さんが主演とジャニーズまで進出してきた。最近の男女のラブストーリーがキュン系に特化されているのに比べると、BLというフックがあるから逆に王道の純愛ラブストーリーをやれるんですよね。で、イケメンにそれをやられると女子はバタバタと倒れちゃう(笑)」
そんなネクストブレイク俳優たちのなか、ほかとは違う存在感を放っているのが二世俳優たちだ。1月クールにも『ファイトソング』の窪塚愛流(窪塚洋介の息子)、『ゴシップ』の寛一郎(佐藤浩市の息子)、『鎌倉殿の13人』の市川染五郎(松本幸四郎の息子)などが次なるブレイクを狙っている。
「私、二世俳優成功の秘訣の1つが兄弟であることだと思っているんです。古くは坂東妻三郎さんの息子の田村3兄弟(田村高廣、田村正和、田村亮)から、高嶋政宏&政伸兄弟、松田龍平&翔太兄弟、柄本佑&時生兄弟、新田真剣佑&眞栄田郷敦兄弟と兄弟の二世俳優はどちらも成功している例が多い。二世の大変さって、どうしても親の影がチラついてフラットな目で見てもらえないことだと思うんですけど、兄弟であることで親の印象が薄れるんですよね。しかも、なぜか二世の兄弟って個性が全然違うから、このふたりが兄弟なんだっていうのにびっくりしちゃって親にまで気が回らなくなる。兄弟であることでプレッシャーも二分できるし、いいこと尽くしなんですよね」
かつて二世といえば、親の七光り頼りになるケースも多かったが、昨今の二世たちはその点でもかなり印象が違う。そもそも親の威光を借りることを潔しとせず、太賀(現仲野太賀、中野英雄の息子)や趣里(水谷豊&伊藤蘭の娘)、SUMIRE(浅野忠信&CHARAの娘)などあえて苗字を外して、違う名前で勝負する人も多い。
「寛一郎さんなんかもそうですよね。彼の場合は二世というよりも三世ですが。むしろ二世として苦労したのは彼の父親の佐藤浩市さんですよね。三國連太郎さんの晩年にようやく、映画『美味しんぼ』で共演。海原雄山と山岡士郎の親子の確執にふたりの関係性が重なって、感慨深かったです。いつの日か、今度は浩市さんが海原雄山、寛一郎さんが山岡士郎でやってほしいですね(笑)。
歌舞伎俳優さんは仕事も親の名前を継ぐのも当たり前ですから、ジュニアであることに葛藤はないし、自覚もある。市川染五郎さんは8代目ですからね。染五郎さんのお父さんの松本幸四郎さんも父親の松本白鸚さん主演の大河ドラマ『黄金の日々』に出演していましたし、やはり歌舞伎俳優の息子はドラマでも大河という華やかな舞台を踏んでいくんだな、と。
二世俳優は親の名声という確固たるものがあるから、二世であるという葛藤さえ乗り越えられれば強いんですよ。特に芸能は何よりも才能がものを言う世界ですから、これからはますます二世、三世の俳優さんが活躍すると思いますよ」
このようにブレイク俳優にもさまざまな形がある。これからどんな道を通って花開いていくのか……? そんなふうにお気に入りの俳優の未来を想像しながら冬ドラマを楽しむのも面白いかもしれない。
Profile●カトリーヌあやこ…漫画家、ドラマウォッチャー。『週刊ザテレビジョン』にてイラストコラム『すちゃらかTV』、『週刊朝日』にて『てれてれテレビ』を連載
取材・文/蒔田陽平