「ニュースを見て“アイツらしい情けない事件を起こしたな”と妙に納得してしまった。相手をみて態度を変えるヤツだから。年下の高校生ならば優位に立てると思ったのだろう」
と容疑者を古くから知る男性は呆れる。
この大人げない事件があったのは1月23日の日曜日、正午ごろのこと。JR宇都宮駅始発の宇都宮線直通・湘南新宿ライナー逗子行きが次の雀宮駅を発車したころ、友人3人と乗り合わせていた高校2年の男子生徒(17)が、優先席に寝転んで加熱式たばこを吸う男に思い切って声をかけた。
「お兄さん、たばこを吸っていますね。やめてもらえますか」
男は無視していたが、男子生徒から繰り返し注意されると、身を乗り出すように顔を近づけ威かく。男子生徒がたまらず押し返したところ、
「てめえ、手を出しやがったな。土下座しろ」
と逆ギレして暴行が始まった。
男子生徒に逆ギレ暴行して逃亡
男子生徒がやむなく土下座して「すみませんでした」と謝ると、その頭を踏み付け、
「ふざけんなよ」
とさらに逆上。
男子生徒の友人や、男の連れの知人男性、駆けつけた女性車掌が制止しても突っぱね、殴る蹴るの大暴れ。男子生徒と引き離されても再び近寄って手を出すなど怒りはおさまらず、途中下車した自治医大駅のホームでも殴っている。
「警察ざたになるのをおそれたのか、男は車掌の隙をみてホーム上の階段を駆け上がり、そのまま逆側の階段を降りて乗ってきた電車にふたたび飛び乗ると東京方面に逃走した。被害に遭った男子生徒は救急搬送されている。同日午後11時20分すぎ、JR宇都宮駅に戻ってきたところを捜査員が職務質問すると、大筋で事実を認めて抵抗することなく任意同行に応じた」(捜査関係者)
栃木県警下野署は日付の変わった24日未明、男子生徒に複数回暴行を加えケガを負わせたとして宇都宮市内に住む飲食店従業員・宮本一馬容疑者(28)を傷害の疑いで緊急逮捕した。
評判最悪の現役ホスト
同署によると、暴行の事実を認める一方、
「相手がはじめにケンカを売ってきて、自分の首に手を押し付けてきたのでやり返しただけ。正当防衛だ」
などと供述している。
男子生徒は右頬骨付近を骨折するなどの重傷。さんざんな休日となった。
社会部記者の話。
「一部メディアの取材に生徒の父親は“自分は悪くないのに結局、土下座させられて、靴で頭を踏まれた行為は精神的に辛かったろう”などと心の傷が残ることを心配していた。事件後、被害生徒は悔しさと悲しさをにじませていたという。容疑者はこの寒さの中、半袖のTシャツ姿で暴行におよんでおり、上腕部のタトゥーをチラ見せしてビビらせようとした可能性がある」
身柄確保のときは黒色のダウンジャケットを着ていたというから、車内での喫煙前後にあえて脱いだのだろう。
真っ当な注意をうながした高校生を“返り討ち”にした宮本容疑者は、宇都宮市内のホストクラブに勤務する現役ホスト。市内の飲食業界関係者によると、昨年12月に東京・新宿歌舞伎町から来たばかりにも関わらず、逮捕前から知られた存在だった。
「評判は最悪だね。ホストクラブの聖地と呼ばれる歌舞伎町から来たことを鼻にかけていた。ホスト歴が長いせいか自分の意見は全部正しいと思っていて、意にそぐわない行動を取ると、すぐに暴力を振るう。上から目線の嫌なヤツだって」(市内の飲食業界関係者)
面識のある20代ホストは
「悪いけど関わりたくない」
と言葉少なだった。
奈良県橿原市の出身。成人したころ栃木県内で暮らしていたことがある。ホストデビューは“西のホストクラブ聖地”の大阪ミナミ(心斎橋)とみられ、ここでも悪評ふんぷん。トラブルを起こし、約4年前に追い出されるようにして歌舞伎町へ。
しかし、なぜかアウトローを気取ってSNSにこんな投稿をしている。
《1万円だけ握りしめてきました。お客様も完全ゼロからなのでご来店お待ちしてます。貧乏生活スタートです》
1泊か2泊カプセルホテルに泊まったくらいで、どん底といわんばかりの雰囲気も。
前出の飲食業界関係者は、
「結局、歌舞伎町でも通用しなくなったということでしょ」と吐き捨てた。
無意味にシャドーボクシング
両腕の上腕にタトゥーを入れ、右腕には花びら少なめの桜吹雪。若いころはサポーターで隠すこともあったというが、ここ数年はSNSでも見せるようになっていた。
宮本容疑者を古くから知る冒頭の男性はその人物像をこう明かす。
「カズマは同級生とはつるまず、いつも後輩とばかり遊んでいた。どうしても自分が上に立ちたいんだろう。後輩の挨拶の仕方が半端だと“おまえら挨拶がなってねえぞ”と叱り飛ばし、一目置かれている同級生には自発的に頭を下げる。相手を見て態度を変えるんだよ。常にオラついて(いきり立って)いるくせにケンカは弱く、同級生や下級生にボコられたこともあった」
素行の悪い仲間に群がるギャルには全くモテなかったという。
こんなエピソードも……。
「路上でサラリーマンと肩がぶつかると、少し歩いてから“チッ、やっちまえばよかったかな”と手のひらを拳で叩く。よく無意味にシャドーボクシングしたり、年下相手に“肩パン(肩にパンチ)させてくれ”と言い、嫌がる様子を楽しんでいたそう。そうやって偉ぶるくせに後輩とは割り勘なんだって」(同・知人男性)
事件当日、宮本容疑者は都内に向かうところだったといい、乗車したときから大声で連れと話すなどマナーが悪かったという。
同じ車両に乗り合わせた乗客は何もしなかったわけではなく、犯行の一部始終を録画したり、車掌に連絡するなどできる限りの“援護射撃”をしている。
民放テレビ局のニュース番組に提供された車中の動画には、土下座した男子生徒を脅す様子が捉えられていた。
「クソガキ、おまえ、オレにしゃべりかけられる分際とちゃうんや」
「ぶっ殺すぞコラ、ケンカ売ってるんじゃねえぞ」
男子生徒の勇気ある行動に感心し、どうにか助けようとした乗客は確かにいた。
SNSで、感謝の気持ちを忘れてはいけないと“男道”を説く宮本容疑者。筋の通らない逆ギレ暴行は、男道に外れると思わなかったのか。