「いや〜、本当に驚きましたよ! 奥さんとの間で“子どもが成人するまでは仕事を変えないし、独立はしない”という約束をしたと聞いていましたから。お子さんは中学生になるころで、まだ約束の時期ではありません。何があったのかな……」(制作会社関係者)
日本テレビのエースといわれる桝太一アナウンサーが、今年3月いっぱいで退社することが明らかに。同局の制作スタッフは驚きを隠せない。
深夜まで後輩にアドバイスを
「奥さんとの約束はもちろんのこと、以前から出世願望が強かったんですよ。4〜5年前には本人がはっきりと“取締役になりたい”と話していましたから。
しかも、後輩の水卜麻美アナには“芸能プロダクションの人とは会ったりしないように”とか、“昨日は誰と会食していたんだ?”などと、定期的に探りを入れており、独立を阻止するような動きを見せていたんです。そういった背景もあって、彼の退社はまさに“青天の霹靂”でした」(同・制作会社関係者)
桝アナは'06年に日テレに入社。'11年から朝の情報番組『ZIP!』の初代総合司会として10年間、務め上げた。まじめで爽やか、さらに東大出身の博識ぶりでお茶の間からの人気を呼び、オリコンが主催する『好きなアナウンサーランキング』で'16年から5年連続1位を獲得して「殿堂入り」を果たしている。
「桝さんは人気もさることながら、アナウンス技術もずば抜けていますし、後輩の面倒見もとてもいいんです。仕事で悩んでいる後輩アナがいると相談に乗り、多忙なはずなのに深夜まで電話でアドバイスしている姿も見かけます。
収録現場でも、普通だったら制作スタッフに聞くようなVTRの演出などでも“桝さんはどう思いますか?”と、彼に意見を求めることが当たり前の雰囲気でした」(日本テレビ関係者)
昨春から司会を務めている『真相報道 バンキシャ!』の出演は退社後も継続する一方、4月からは関西にある『同志社大学』のハリス理化学研究所で専任研究所員(助教)を務める。まさに“二足のわらじ”というわけだ。
千葉県にある桝アナの実家近所で聞き込みしてみると、
「小さいころから知っていますけど、ボール遊びとか運動しているところは見たことないですね。家の庭で虫をじっと観察したり、昆虫採集をしていたイメージ。当時からほかの子どもとは違う雰囲気だったから“やっぱり東大に行く人はどこか変わっているのかな”って。まさか、こんな人気アナウンサーになるなんてビックリですよ(笑)」(近所の住民)
「研究者」として公の場に
幼いころから生物に関心の強かった桝少年は、学生時代に昆虫やアサリの研究をしていた根っからの“研究者気質”。同志社大学では『サイエンスコミュニケーション』と呼ばれる学問分野に取り組むそう。
「科学の面白さや科学技術をめぐる課題を人々に伝え、ともに考えて意識を高める活動です。研究成果を紹介するだけでなく、課題や研究が社会に及ぼす影響を人々と一緒に考えて理解を深めることが肝になる分野。時には、サイエンスカフェや研究の一般公開などの試みを行うこともあります」(全国紙記者)
同志社大学の広報部に、彼を研究者として採用した理由を問い合わせると、
「桝さんは理系の大学院を修了されていることで、科学に関する問題意識をお持ちです。加えて、世の中のみなさんに伝えることが仕事のアナウンサーとしての経験も。その2つを生かして、サイエンスコミュニケーションという新たな研究分野を切り開いていきたいという熱意がとても感じられました」
4月以降、研究者としての桝アナも、時には表に出る機会があるはずだという。
「研究成果を還元する意味合いで、大学の教育活動としてシンポジウムを開催したり、講師を務めるといった形で桝さんが学生たちの前に出る可能性はあります。
実際、'16年11月に本学で行った『サイエンスコミュニケーター養成副専攻』というプログラム内の講演会で、桝さんにも登壇していただいたことがありました。研究者とアナウンサーの2つの経験をお持ちの方はなかなかいないので、われわれが学ぶことも多いでしょうし、存分に力を発揮していただきたいと思っています」(同・広報部)
この広報担当者によれば「一般的な研究者の序列は講師、助教、准教授、教授という順番」だという。教授というポジションに就任するには先が長いように思えるが、桝アナであれば“スピード出世”もありうるようだ。
法政大学社会学部の教授で、メディア文化論などを専門とする稲増龍夫さんが解説してくれた。
妻が“GOサイン”を出した理由
「通常のケースで考えると、助教から教授になるには最低でも10年程度はかかるかと思います。ただ、桝さんのような特殊なケースであれば、いきなり教授になることもあるのではと思います。
近年では、研究成果に加えて教育面や、講演会などの学外での活動も評価されるようになっているので、そういった点でも知名度のある桝さんは、一般の研究者よりも早く教授に就任する可能性は十分あるでしょう」
研究結果を桝アナ本人が公の場で発表すれば、普段科学に興味のない人々も関心を持つきっかけになるに違いない。
ただ、出世願望が強かったという彼が研究者に転向することになった理由って?
「『鉄腕!DASH!!』のロケ企画に出演した際に海や川の生態系に触れたことで、学生時代の“研究者魂”が再燃したみたいです。『ZIP!』でも総合司会ながら、水族館や博物館でのロケに参加することも多く、現場では目を輝かせているし、明らかにテンションが上がっていて(笑)。根っからの生物好きですし、アナウンサーとしての技術も生かせる分野に挑戦してみようと一念発起したのでは」(前出・日本テレビ関係者)
約束を交わしたという妻も、彼の熱意を支える決心がついたのだろう。
「助教になると、アナウンサー時代よりも給料が低くなる可能性はありますが、週に1回の『バンキシャ!』での出演料もあるので、収入面の不安はないと思いますよ。彼は服装や時計など、趣味にお金をかけたりする浪費家ではないですし、これまでの貯金もあるでしょうしね。
奥さんとしては、お子さんが成人するまでは“安定した会社員として働いてほしい”という気持ちが強かったそうですが、研究者としての夫の熱意と収入面での不安が解消されたことで“GOサイン”が出たのではないでしょうか」(同・前)
科学の“バンキシャ”として、新しい分野での活躍を期待しています!
稲増龍夫 法政大学社会学部教授。社会心理学•メディア文化論専門。『グループサウンズ文化論 なぜビートルズになれなかったのか』(中央公論新社)ほか著書多数