「デカデカと誌面に書きなさいよぉ! イベント開催できなかったって。あなたたちが何に掲載しようが、負けるつもりはないので!!」
電話口から怒鳴り散らす男の声が響く……。電話の相手は2月11日から3日間、鹿児島県で開催する予定の音楽イベント『サンユニットフェス』主催者のSだ。
実はこのフェスで、ありえないトラブルが起こっている。発端は1月21日。ネットニュース編集者が説明する。
「総勢37組のアイドルグループが出演するという大規模なイベントだったのですが、突然26組のアイドルの一斉降板が発表されたのです。なんでも、開催3週間前になって、主催者が会場の使用許可を得ていなかったことが発覚したみたいで……」
前代未聞の出来事に、主催者には批判が殺到。
「降板を発表したのは主催者ではなく、キャスティングを担当していた企業でした。発表後も、数日間はチケットが販売中のまま。イベントの公式ツイッターにはチケットの購入者から“詐欺だ!”と批難する声が集まったのです。それなのに主催者は開催すると言い続け、チケット代の返金についての案内も当初はないまま。26日になって、やっとツイッターで案内しました」(同・ネットニュース編集者)
「Sに企業が騙された」
イベントのチラシには、『SKE48』『STU48』といった人気グループの出演や、元AKBの矢倉楓子と元HKTの村重杏奈がメインMCを務めるなど、アイドルの名前と写真がギッシリと掲載してあるのだが……。
いったい何があったのか。
キャスティングを担当していた企業から相談を受けていたという、芸能プロダクションの幹部が内情を明かす。
「簡単に言えば、主催者のSにキャスティングを担当していた企業が騙されたんです。よくよく調べればわかることなのに……」
アイドルの降板は決定してもチケットは販売され
アイドルに出演の依頼をしていたのは『一般社団法人芸能研究生』(以下、芸研)と『ASUM株式会社』だった。
「『芸研』はアイドルが所属する芸能プロダクションで、昨年11月に主催者のSから“イベントに出演してほしい”と依頼が来たのです。そこでほかの出演者がまだ決まっていないことを聞き、『芸研』は“ほかの出演者を紹介しましょうか?”と言ったのです。するとSは“有名どころを呼んでほしい”と言うので、予算を聞くと“助成金や協賛金があるので1億円”と言ったとか。そこで『芸研』は実績のある『ASUM』にブッキングのお願いをしたのです」(同・芸能プロ幹部、以下同)
イベントのチケットの販売が開始された12月20日、『ASUM』の担当者は、鹿児島へと赴き、Sと会っていた。
「契約書を渡すと言うので、Sが住む鹿児島に行ったそう。しかし、3日間滞在したけれど、結局Sは契約書を渡さなかった。すでにブッキングをすませていたので、各事務所に出演料や足代で計4000万円を支払わないといけない。そのため12月末に必ず支払いをするよう、Sと約束を取りつけたそうです」
だが、事態は急転。帰京翌日の12月23日にSからこんな連絡があったというのだ。
「『芸研』から出演するアイドルユニットへのギャラの支払いが24日だったのに、Sは“支払いができない”と言ってきた。ビックリして電話をすると“信頼できないので、取引を停止する”と」
理由も説明されないまま、一方的な連絡だった。
何を言っても聞く耳を持たないSに、『芸研』と『ASUM』は弁護士を立てて話し合いをしようとしたが、回答はなく……。
「アイドルの降板は決まっていたのに、1月1日には出演者のタイムテーブルが発表され、チケットの販売は継続されたまま。各事務所への連絡に追われるなか、一向に降板について発表されない。もしかしたら開催するのかと思い、鹿児島県に確認すると、1月19日にSが会場使用の許可申請を取り下げていたことが判明。これが騒動の一連の流れです」
事実確認のため『芸研』に問い合わせると、
「今はお話しできることはありません。降板を公表したのは、コロナによる不可抗力を理由にイベントを中止して、Sがチケット代金を返金しない可能性があると思ったため。今回は主催のSと私どものトラブルであり、出演者様には何の責任もありません。チケットを購入してくださったみなさま、出演者さまには、本当に申し訳ありません」
と話すのみだった。
主催者のSはどう思っているのか。イベントの問い合わせ先で記載されている携帯番号に電話をしてみた。
「偽造書類を出したと思うんです」
「もしもし」
男性の声が聞こえてきた。
─Sさんですか?
「そうですけど」
─イベントにトラブルが起きているようですが、開催はされる?
「規模を縮小して行う予定です。今回のトラブルの発端は昨年の12月28日に『芸研』が“うちはもうできない”と言ってきたんですよ。なにより『芸研』はうそばっかり」
─会場の申請を取り下げたのはなぜ?
「県の窓口に行ったら、すでに取り下げの書面が準備されていて“サインしてください”って言うので、名前を書きました。おかしいでしょ? 誰かが仕組んだんですよ」
そこで週刊女性は会場となるはずだった施設を管轄する鹿児島県地域振興局に確認すると、
「1月19日にイベント開催に関する話し合いの中で、主催者が申請を取り下げたいと言うのでこちらで書面を準備し、サインをいただきました」
とのこと。これについてSに聞くと、
「きっと『芸研』が偽造書類を出したと思うんです。おかしいですもん」
─会場の使用許可を得てないのに、チケット販売を?
「許可はもらっていないけど、許可をもらうように動いていましたから。そもそも、アイドルヲタクを鹿児島に呼ぶイベントをするつもりはなかったんです。ブッキングも『芸研』がやると言ったんですから」
─コロナを理由に中止にして、チケット代金を得ようとしていたのでは?
そう問い詰めると、電話は切れた。約1時間にわたってSと話したが、途中、冒頭のような発言もあった。
Sについて取材を進めると、こんな話も聞こえてきた。
大手食品卸の広報が話す。
「昨年もSはイベントを企画していましたが、弊社の名前を勝手に協賛に入れていたんです。本当にいい迷惑でした。確か、そのイベントはコロナで中止になったはずです」
これ以上、Sの被害者が増えないことを願う。