藤井隆

 50年以上続く人気長寿番組『新婚さんいらっしゃい!』(朝日放送テレビ)の4月からの新司会者が、桂文枝からお笑いタレントの藤井隆に、アシスタントが山瀬まみからタレントの井上咲楽にバトンタッチされることが発表された。

 文枝は1971年の放送開始以来、山瀬は1997年から、長年にわたりお茶の間に親しまれ、「同一司会者によるトーク番組の最長放送」としてギネス世界記録にも認定されている。

いまなぜ「藤井隆」なのか

 52年目を迎える番組の新しい顔として抜擢された藤井隆。

 そんななか、藤井隆の“知り合い”で“歌手兼モデル兼俳優兼ジャーナリスト”、ゼロ年代に『Matthew’s Best Hit TV』(テレビ朝日系)が放送され人気を博したマシュー南が、“緊急来日”。ポッドキャスト番組『Matthew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』をスタートさせ、第1回のゲストが活動休止中の松浦亜弥だったことも話題を集めた。さらには東野幸治の「ライト東野」とタッグを組み、「あらびき芸人」たちを次々さばき、はるな愛やハリウッドザコシショウ、ガリガリガリクソンらを輩出した「あらびき団」も、ゴールデン特番として復活した。

藤井隆の“知り合い”のマシュー南

 ここにきてにわかに訪れた「藤井隆の波」。いま、なぜ藤井隆なのか。

「ほかの芸人さんたちが時代に合わせていく中、藤井さんの場合は逆に、やっと時代が合ってきた、ということだと思います。彼のやっていることや姿勢は、基本的に昔と変わっていません」

 というのは、人気バラエティーなどを手掛ける放送作家。今のお笑いの流れとして藤井隆は「ちょうどいい」と、続ける。

「基本的にすごく物腰が柔らかくて優しいのですが、いきなりズバッと切り込むところがあったり。昔から“いい人の中にある狂気性”のようなものが、バランスよく存在していているんです」

 現在の“流れ”とはあちこちで言われる「やさしい笑い」「人を傷つけない笑い」のことだ。

 もはや芸人ではなく名MCとして活躍する、『ヒルナンデス!』(日テレ系)のウッチャンナンチャン・南原清隆、『ひるおび!』(TBS系)のホンジャマカ・恵俊彰など、優しさや物腰の柔らかさが好感度を得ている昨今。

「そこに、さらに面白さを求められて抜擢されたのが『ラヴィット!』(TBS系)の麒麟・川島(明)さんですよね。好感度だけでなく面白さを兼ね揃えている部分では、藤井さんのバランスとも重なる気がします」(同前)

YES /NOマクラはどうなる!?

 情報番組とは異なるが『新婚さんいらっしゃい』に抜擢された藤井隆には「ドンピシャの人選」「“椅子コケ”しても違和感なし」「今から楽しみ」「藤井さんなら見たい」など、巷では早くも評価されている。

「高感度の高さや知名度、そして奥さんである乙葉さんとの夫婦のイメージもいい。クセの強い素人の新婚さんをさばくのが番組の肝ですが、『あらびき団』でクセの強い芸人を、笑いに導いた藤井さんですから間違いないでしょう。まさにぴったりの人選だと思います」

 と、テレビ局関係者も太鼓判を押す。

2005年5月、婚約発表記者会見をした藤井隆と乙葉

 では、50年以上続く歴史のある番組なだけに、引き継ぐことへのプレッシャーや大きな変化はあるのだろうか。

「ほとんど変えずにやると、それは単なる“代役”にしかなりません。新アシスタントの井上咲楽さん同様、これからも長く愛される番組作りを意識していくはずです。これまでの桂文枝さんの空気も生かしつつも、新しさを見せることも求められると思いますよ」(同前)

 とはいえ、『新婚さん』ファンの視聴者には、どうしても変えてほしくない場面もあるはずだ。

「例えば『水戸黄門』で演じる人が変わっても、必ず印籠は出す。それと同じで『新婚さん』も、オープニングの“いらっしゃ〜い”や、景品選びやタワシにYES/NOマクラなど、守っていかないといけない部分はありますよね。ただ、桂文枝さんが椅子から転げ落ちる名場面は、藤井さんオリジナルになるかもしれませんよ(笑)」(同前)

 4月からの新たな『新婚さん』の幕開けが楽しみだ。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉