左上から時計回りに松本潤、黒木華、吉田鋼太郎、成田凌

 菅田将暉が主演を務める月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)第1話の見逃し配信が、動画配信サイトTVerで民放全ドラマの初回として歴代最高となる424万回再生を記録するなど、絶好調だ。

「菅田さんは現在、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にも出演するなど、多忙を極めています。どうしても出演してほしかったフジテレビは、彼のスケジュールに合わせて1年以上前にクランクイン。すでに全話撮り終わっています。

 オミクロン株の感染拡大が芸能界にも広がり、撮影がストップする作品も出ている中、完走が確約されているという点でも、今期の“勝ち組”でしょう」(スポーツ紙記者)

“覗き屋”みたいな松潤

 視聴率や見逃し配信だけでなく、視聴者の満足度も高い月9とは裏腹に、今期は放送後に評判を落とす作品が続出している。

 視聴率は2ケタをキープしているものの、評判が散々なのが松本潤主演の『となりのチカラ』(テレビ朝日系)。『家政婦のミタ』など大ヒットドラマを手がけてきた遊川和彦氏が脚本を担当。松本演じる思いやりにあふれた主人公が、悩みを抱える同じマンションの住人たちを救う社会派ホームコメディーだが─。

《こんなのただの変質者だわ。迷惑極まりない。見ていて気持ち悪い。出ている俳優豪華なのに、ほんと無駄遣い》

 と、SNS上では主人公の行動に不快感を示す人も。

 第1話では児童虐待、第2話では認知症の祖母の面倒を見るヤングケアラー(家族の世話や介護などを行っている、18歳未満の子ども)を取り上げるなど、現代社会の問題に切り込む同作。

キャストが発表された直後は原作のファンから不満の声も上がっていた『ミステリと言う勿れ』

「児童虐待の疑いがあるとはいえ、隣人の部屋にズカズカ上がり込んだり、小学生の女の子が1人のときに声をかけたり、マンションの向かいのカフェから住人の部屋の様子を覗き見したりと、主人公は不審者そのもの。SNSで、も賛否が分かれています」(テレビ誌編集者)

 自身もマンションの管理組合の理事長を務めているライターの吉田潮さんは失笑する。

「私自身が組合理事長をやっていることもあり、このドラマには期待していたのですが、松本さん演じる主人公はただの覗き屋にしか見えず、リアリティーがなさすぎます。とにかく主人公が隣人の私生活に踏み込みすぎですね。ヤングケアラーなど社会問題をテーマに扱う意欲は買いますが、取っ散らかった感じで終わってしまう気がします」

関係者から失笑されるゴシップドラマ

 ドラマウォッチャーの神無月ららさんにも話を聞くと、

「遊川さん作品の“あるある”ですが、テーマを詰め込みすぎていて、風呂敷をちゃんとたためるのかなと……」

 成田凌主演の『逃亡医F』(日本テレビ系)は同名の漫画が原作とあり、第1話から現実ではありえないシーンが満載。“トンチキ”ドラマとしてSNSを賑わせている。

「成田さん演じる恋人殺しの容疑をかけられた天才医師が、真犯人に復讐をするために逃亡。行く先々で目の前の命を助けるためにひと肌脱ぐというストーリーです。逃亡するために乗った船で起きた事故で、森七菜さん演じるヒロインは腕がちぎれかけるほどの大ケガをしているのにもかかわらず、冷静に話し続けるなど、漫画原作とはいえツッコミどころが多すぎます」(ネットニュース編集者)

成田凌が船上で大ケガをした森七菜の腕を切断し、そのまま縫合手術も行った第1話

 前出の神無月さんは、「この枠にリアリティーを求めてはダメ」と笑う。

「日テレの土曜ドラマ枠は若い視聴者向けで、漫画原作が多い枠です。今回の演出家も『サイコメトラーEIJI』や『金田一少年の事件簿』などを手がけてきた方ですし、リアリティーを求める視聴者にはハマらないでしょうね」

 今回、ネット上を中心にツッコミが相次いでいるのは、そのキャスティングに理由があると分析する。

「演技派の成田さんが主人公を演じたため、ファンタジーの世界に振り切れず、違和感が出てしまいましたよね。SNSではやりすぎな演技と指摘されている松岡昌宏さんですが、この世界観なら松岡さんぐらいのオーバーな演技が正解でしょう」(神無月さん)

 ネットニュース編集部を舞台にした黒木華主演の『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』(フジテレビ系)。月間50万PV(ページビュー)の弱小ゴシップサイト『カンフルNEWS』を立て直すべく、経理部から異動してきた主人公が、事件の真相に迫るというストーリーだが、メディア関係者からは失笑の嵐だ。

「月間50万PVの収益では、編集部員1人分の給料を払うのがやっとでしょう。ドラマでは編集部員が5人もいるし、黒木さん演じる主人公は、記者の域を超えて刑事や探偵ばりの取材をしますからね。

『うっせぇわ』のAdoさんを彷彿とさせる覆面シンガーの正体を暴いたスクープ記事が10万PVを突破したと喜ぶシーンがありましたが、ワイドショーで取り上げられるようなスクープなら、ケタが2つ違いますよ」(前出のネットニュース編集者)

 週刊誌で連載を持つ吉田さんも、違和感を指摘する。

「出版社やネットニュース事情を知らない視聴者には普通に映るのかもしれませんが、周りのメディア関係者からはブーイングだらけです。まずネット時代の今、会社のデジタル部門があんな端っこに追いやられているわけがない。

 経理部から来たばかりの主人公はSNSにアップされた写真から真実にたどりつきますが、記者経験もない主人公が気づくようなことなら、ネット民の“特定犯”がとっくに指摘していますよ(苦笑)」

『日曜劇場』不評の理由

 佐々木希主演の『ユーチューバーに娘はやらん!』(テレビ東京系)は、YouTube風の演出が話題だが……。

「ドラマだからデフォルメするのは仕方ないとはいえ、『ユーチューバー~』のスタッフは最近のYouTubeをチェックしていないの? と思うほど、劇中で出てくる動画の編集が古くさい。動画クリエイターへのリスペクトが感じられませんね」(動画編集スタッフ)

 朝ドラ『おかえりモネ』の好演が光った清原果耶が主演を務める『ファイトソング』(TBS系)。朝ドラ『ちゅらさん』や『ひよっこ』などヒット作を手がける岡田惠和氏が脚本を担当と、期待値が高かったものの、視聴率は1ケタ台と苦戦している。

「間宮祥太朗さんが恋愛経験のないバンドマンを演じているのですが、そもそもバンドマンで恋愛経験がないのが気になるし、色気のある間宮さんがそういう役を演じるのも説得力がない」(吉田さん)

 第3話では間宮が清原とデートした際、キスをしようと迫るが……。

《本当に恋したことないんか? 恋愛偏差値低い人はあんなにスッと手繋げないしキスできねーぞ!!》

 というツッコミがネット上で相次いだ。

『逃げ恥』など話題の恋愛ドラマを生み出してきた『火10』だが、『ファイトソング』は胸キュン要素は少なめ

 ハリウッドの大手制作会社とタッグを組み、本格的な水中ロケが話題の日曜劇場『DCU』(TBS系)。阿部寛が主演を務め、横浜流星などの人気俳優が顔をそろえたとあり、3話まですべて15%超えと、絶好調に見えるが……。

《大袈裟な組織な割に、扱う事件が小物すぎない?》
《阿部ちゃんの無駄づかい》

 と、期待値が高かったぶん、ガッカリする視聴者が続出している。

「毎回ラストに敵をやり込めるシーンがあった半沢直樹などに比べて、事件が切れ目なく続く定番の犯罪モノの作りになっているので、見終わった後のスッキリ!感が足りないのも不評の理由かもしれません」(神無月さん)

 天才的な診断能力を持ち、現役医師たちの誤診を正していく正体不明の主人公を浜辺美波が演じる『ドクターホワイト』(フジテレビ系)。

《浜辺美波が可愛いだけで脚本も演出もクソチープ》

 SNSでも出演者を褒める声は多いものの、ストーリーや演出を残念がる声が多い。

浜辺さん演じる主人公は“それ、誤診です!”と指摘はするものの、実際に手術をするのは別の医師。天才的な女性医師が活躍する『ドクターX』を見たあとだと、モヤモヤしてしまいますね。悪の組織らしき人々が主人公の居場所を突き止めて追ってくるシーンがありましたが、少し怪しまれただけで、すぐに退散するのもおかしい(笑)」(神無月さん)

今期だけで3本もある「秋元康」ドラマ

 視聴率では苦戦しているものの、好意的な意見が多く見られるのが堤真一主演の『妻、小学生になる。』(TBS系)。10年前に亡くなった妻が生まれ変わり、小学生になって現れる……というファンタジーな家族再生物語だ。

「石田ゆり子さん演じる妻の生まれ変わり役を子役の毎田暖乃さんが演じているのですが、石田さんに見える瞬間があるぐらい演技が抜群。ほかにも神木隆之介さんや吉田羊さんなど好みの役者がそろっているのに加え、優河さんが歌う主題歌も作品にマッチしていて心をつかまれています」(吉田さん)

堤真一や石田ゆり子など豪華キャストと子役の毎田暖乃の演技が話題

 前出の神無月さんは、東海テレビが制作する『おいハンサム!!』(フジテレビ系)をイチ推しに挙げる。

「主演の吉田鋼太郎さんのプロモーションビデオかと思えるほど、彼の魅力を生かした作品になっていますね。性格も愛情深さもまさに“ハンサム”で、娘の危機にはステテコにパターを握りしめた“変態ルック”で駆けつけようとする姿も愛おしい。私もあんな父の娘に生まれたかったです」

 吉田さんは、アロマンティック・アセクシュアル(恋愛感情も性的欲求も抱かない)の男女を描いた『恋せぬふたり』(NHK)を評価する。

「世間一般ではマイノリティーに括られる人々をテーマにできるのはさすがNHKという感じですよね。この作品を見ると自分がいかに多数派で、恋愛に限らず、自分の感覚を他人に押しつけてしまっていたかと反省します」

 民放では扱わない“非恋愛ドラマ”として楽しんでいるようだ。

「トランスジェンダー女子を描いた『女子的生活』、腐女子とゲイ男子を描いた『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』、に続く三部作というイメージ。今回の作品もそうですが、高橋一生さんは人と距離を置きたいけれど、決して世捨て人でもない……という役柄を演じさせたらピカイチですね」(吉田さん)

 吉田さん、神無月さんがともに指摘したのが、秋元康作品の多さだ。今期は2クールをまたいで放送中の『真犯人フラグ』(日本テレビ系)のほか、『ユーチューバーに娘はやらん!』(テレビ東京系)『もしも、イケメンだけの高校があったら』(テレビ朝日系)と、3作品で企画・原作を担当している。

「秋元さんに頼りすぎているテレビ業界は、問題だと思います」(吉田さん)

 人気漫画の安易な映像化や人気作家への依存度を減らすことが、ドラマ業界を盛り上げる近道かも?

吉田潮 『週刊新潮』で連載するほか、多くの雑誌やウェブメディアで記事を執筆するライター、イラストレーター。著書に『親の介護をしないとダメですか?』などがある
神無月らら 昭和生まれの地方在住ドラマウォッチャー。ブログ『ラララ☆オトノハ』や、ツイッターでも芸能に関する情報を発信している