※写真はイメージです

 デルタ株より感染力の強いオミクロン株。発症したら必要なものがあっても買い物に行くことも難しい。おまけに医療施設はパンク状態で、感染しても病院はもう頼れない。そこで、「これだけは絶対に準備しておきたいアイテム」を感染症の専門家、岡田晴恵さんにピックアップしてもらった。

経験者が語る「なくて困ったもの」

「夫が発熱したと思ったら私と息子もすぐに熱が出て……」

 そう話すのは沖縄県の比嘉雅子さん(54・仮名)。

 比嘉さんは夫と大学生の息子との3人暮らし。今年1月下旬、一家は新型コロナウイルスに感染した。

「夫も私も40度近い熱と身体の痛みで本当につらかったです。オミクロン株は軽症、なんて言われていますがそんなことありませんでした。幸い息子は私たちに比べると症状が軽くていちばん最初に回復をしたので、私と夫の看病をまかせました」(比嘉さん)

 列島に押し寄せる新型コロナウイルスの「第6波」。現在、感染が広がるオミクロン株はデルタ株よりも感染力が強い。そのため感染者は増える一方で、再び医療施設は逼迫状態に陥っている。

 そこで東京都などでは50歳以下の無症状、軽症の患者に対して自ら健康観察を行ってもらうように切り替えた。

 自宅療養をせざるをえない状況。自分や家族が感染したとき、何も備えがなかったらどうなるのだろうか─。

「当然、買い物に出ることはできません」

 感染症の専門家で白鴎大学の岡田晴恵教授は指摘する。

 冒頭の比嘉さん一家も発症後の生活に苦労したという。

「うちは大丈夫、なんて甘いことを考えていたのでスポーツドリンクも冷却ジェルシートも数が足りませんでした。最終的には大量に作った氷で熱を下げていました。回復した後の食事もおかずがなくて、きつかった」

 そこでこれまでも自宅療養について訴えてきた岡田さんに絶対にそろえておきたい10アイテムを聞いた。現在、ネットで無償公開している著書『自宅療養完全マニュアル』を参考に見ていこう。

どのくらいの準備が必要?

「自宅療養をしなければならない場合には何が必要かを一日も早く家族と一緒に考えましょう」(岡田さん、以下同)

 重要なのが食料品。保存でき、温めるだけで食べられるおかゆやスープなどのレトルト食品、カップラーメンなどのインスタント食品はマスト。

「療養のとき、回復したとき、それぞれの食料品を準備しましょう。忘れがちなのが回復したときの食事。このころには食欲は戻ってきます。感染した友人に送った支援物資でいちばん喜ばれたのはレトルトのサムゲタンのスープでした。ボリュームがあるものも食べたくなるようです。お米やうどんなどの主食もストックしておきましょう」

 濃厚接触者となり外出できない家族や、回復してからの食事がカップラーメンだけだとわびしさもある。お湯を注げば食べられるフリーズドライタイプのかつ丼や親子丼の具など食べ応えのあるものを用意してもいいかもしれない。

 熱を冷ますジェルシートや薬類、体温計も必須。『軽症』といっても38度、39度の高熱が出るケースも少なくない。総合風邪薬や解熱剤も忘れずに準備しておくこと。

「血圧の薬など、普段から飲んでいる薬がある場合は多めにもらっておきましょう」

 家庭内感染を防ぐための消毒用アルコールや不織布マスク、ビニール手袋などの衛生用品も必須。ティッシュペーパー類やゴミ袋もストックしておきたい。必須の10項目には入っていないが、乳児がいる家庭ならミルクやおむつなどの準備を。自分や家族が日常的に欠かせないものは何なのか話し合い、それも加えるといざというときに困らない。アイテムは使う家族の人数×1週間分は最低でも準備しておくこと。

「2、3日熱が出たときのことを想定すると食品も2つ3つでは足りません。家族の好みなどもよく聞き、人数分を準備することが大切です」

 実はこれらは自宅療養だけでなく、地震などの災害時を想定した防災備蓄にもなる。そして時間的に余裕をもって準備することにも理由がある。岡田さんが説明する。

「これ以上の流行がきてから慌てて買いに行くと必要なものが売り切れになっている可能性があります。おまけに人が集まることで売り場が『密』になります」

 感染力の高いオミクロン株。人が密集すればそこで感染リスクは上がるのだ。

「風邪の症状ですむ人もいますが、中等症以上、肺炎になる人もいます。基礎疾患がある人や50代以上の人は侮ってはいけません。オミクロン感染がきっかけになり、持病が悪化する場合もあるのです」

 そのためにもなるべくかからないよう十分注意するに越したことはない。

 冒頭の比嘉さん一家のように親が感染したとき、子どもがどう看病するかも話し合っておきたい。中学生が親を看護する、大学生が両親と祖父母を看護する、といったことも十分ありうることだ。

「看病するときは感染した家族が寝ている部屋の加湿、家中の換気、こまめな手洗いも心がけましょう。換気はただ窓を開けるのではなく、家中の空気を入れ替えるつもりで。換気扇をつけたままにしておくのも効果的です」

 まだまだ収束が見えない新型コロナウイルス。

「かからないことがいちばんですが、現状では難しい。なのでかかったときにも慌てることがないように備えてほしい。自分の生活に何が必要なのか、家族と話し合い、イメージすることも大切です」

これだけはそろえておこう!

★レトルト・インスタント食品
発症中に食べるもの(おかゆなど)と回復時に食べるもの(カレーなど)

★スポーツ飲料・経口補水液

★主食
米やうどん、パスタなど。回復時に食べるもの

★薬 総合風邪薬や解熱剤など

★氷枕・冷却ジェルシート

常用薬
普段飲んでいる薬を少し多めにもらっておく

除菌アイテム
塩素系漂白剤・せっけん・
アルコール除菌スプレー

ペーパー類
ティッシュペーパー・
トイレットペーパー・
ペーパータオル

★感染防止アイテム
使い捨て不織布マスク・ビニール手袋・ゴミ袋

体温計(一家に1本あればいい)

※そのほかにも家族にとって必要なアイテムをそろえておく(おむつや生理用品など)
※特に★がついているものは家族の人数×2週間分の量を準備しておく

自宅で簡単・経口補水液の作り方

 自宅にある調味料で手軽に経口補水液を作ることができる。発熱したときの汗はただの水分ではなく、ミネラルなどが含まれている。そのためただの水ではなく、経口補水液などで失われた栄養素を補わなくてはならないのだ。作り方は非常に簡単。そのため、準備していたものをすべて飲み切ってしまったときでも慌てずに!

●材料
白湯1リットル/砂糖40グラム
塩3グラム/あればレモンやオレンジなどの柑橘類

●湯冷ましに材料をそれぞれ入れてよく混ぜること。柑橘類を加えることでよりスッキリと飲みやすくなる

参考にしたのはこの本!

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お話を聞いたのは
感染症対策の専門家 岡田晴恵さん

感染症対策の専門家岡田晴恵さん

 岡田晴恵さん●白鴎大学教育学部教授。医学博士。専門は感染免疫学。著書の『秘闘 私の「コロナ戦争」全記録』(新潮社)は2年間のコロナ報道や政治家、専門家とのやりとりなどを克明に記録したもの。1か月で5刷となり大反響。

※白鴎大学の「鴎」は、正しくは區に鳥