「人に心配りをしてくれる、優しい人やったんじゃけどね。母の日には私に手作りのプレゼントもくれてねぇ……」
近所の主婦は、被害者を襲った突然の不幸を悼んでいた。
元夫が元妻を包丁で刺殺
事件が起きたのは、5日の夕方6時10分ごろ。広島県安芸高田市の看護師・熊谷菜美さん(36)が自宅の玄関先で腹や胸などを包丁で刺された。事件直後に家族が刺された菜美さんを発見し、110番通報。殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された元夫の無職・熊谷良三容疑者(41)だった。事件の3時間後、菜美さんは搬送された病院で帰らぬ人に。
「その日はめったにない大雪の日やった。パトカーが何台も来て、警察が大勢いると思っていたけれども、何があったのかはわからなかった。翌朝、テレビのニュースを見て、殺人事件だと知って、驚いたねぇ」(近所の住民)
警察の取り調べに対して容疑者は、
「自分が刺したことに間違いはありません」
と容疑を認めている。また、容疑者の名前はのちに通名(外国籍の者が日本国内で使用する通称名)だということが判明。
「中国籍を持つ付成亮という名前が容疑者の本名。数十年前から日本に住んでいたようです」(捜査関係者)
地元紙社会部記者は、事件について次のように説明する。
「容疑者と被害者は数年前に離婚していましたが、元夫は元妻に強い恨みや殺意を抱いていたようで、犯行時に包丁を持参していた。
一昨年の秋ごろ、菜美さんの親は安芸高田署に“押しかけてくるかもしれないので、パトロールを強化してほしい”と相談していました」
同署は菜美さんの自宅周辺の防犯対策を強化していたのだが、
「容疑者は事件まで一度も元妻の自宅を訪れたことはなかった。そんな矢先、容疑者がいきなり押しかけて凶行に走ってしまったわけです」(前出・捜査関係者)
約1年前にあった不可解な出来事
菜美さんと長男、長女、両親が現在の一軒家に引っ越してきていたのは3、4年前。
「一家5人揃って、挨拶回りにきてくれた。その時は容疑者ともう離婚しとったんでしょうね。ご両親も菜美さんも勤め人じゃけん、深い近所付き合いはしてないけど、町内会の集まりにはお父さんが必ず来ていた。きちんとした家族よ」(別の近所の住人)
一方、容疑者は菜美さんの自宅から50キロメートルほど離れた東広島市の新興住宅地にある戸建てに住んでいた。そこは約6年前、容疑者と菜美さんが結婚して間もない頃に購入した新居。
「3、4年前に奥さんが子どもを連れて出ていったのは覚えています」(近所の住人)
以降、容疑者は独り暮らしになったのだが、
「近所をぷらぷら徘徊していた。仕事をしている様子はなく、危ない薬でもやっているかのように挙動不審で怪しかった。ときどき容疑者の親族らしき人が家を訪ねてきていたが、本人はだいたい不在。すると、その人は心配して警察を呼んで容疑者を一緒に捜すなんてことも何度かあったようです。近所の人は厄介そうだから、みんな近づかないようにしていた」(同・近所の住人)
昨年3月13日、そんな危ない元夫と菜美さんはなぜか会っていた。しかも、なんとも不可解なことが起きていて……。地元のタクシー運転手はこう話す。
「容疑者のお宅から“熊谷ですけど”という女性の声でタクシーの呼び出しがあった。それで、女性を東広島駅まで乗せたが、支払いになって“今は持ち合わせがないから、あとでうちまでお金を取りにきてください”と」
熊谷と名乗った女性が菜美さんである可能性は非常に高い。
「その後、お宅を何度訪ねても留守で、いまだに料金4700円はお支払いいただいておりません」
事件が起きるちょうど3日前、容疑者はSNSのプロフィール写真を変更。その顔写真には薄っすらと笑みが浮かんでいた。二人の間に一体何があったのか。不憫でならないのは、残された2人の子どもたちだ。犯行動機の解明が待たれる。