事件現場となった被害女性の自宅アパート

「ライブ配信者と視聴者の関係に戻りましょう」

 被害女性からそんなふうに諭されたという男は、包丁を構え凶行に走った。

 事件は1月27日午後6時ごろから同23分ごろにかけて発生。埼玉県越谷市のアパートで暮らす無職・岩渕未咲さん(33)が、室内で男に腹部などを包丁で刺された。数分後に部屋を訪れた岩渕さんの母親から「娘が刺された」と119番通報があり救急搬送されたが、病院で死亡が確認された。

 現場近くの主婦が当日の様子を振り返る。

「救急車のほかパトカーが7、8台駆けつけ、何事かと人だかりができていたんです。救急隊員が懸命に被害女性の心肺蘇生措置を続けていましたが、顔は真っ白でぐったりしており、これはもう手遅れなのではないかと思いました」

 救急通報とほぼ同時刻に近くの交番に自首したのが、岩渕さんを殺害した疑いで埼玉県警に逮捕された専門学校生・古川大輝容疑者(25)だった。

 取り調べに容疑を認め、

「岩渕さんと以前交際していた」

 などと“元カレ”を名乗ったという。

 しかし、そう言い切れる関係でなかった可能性が浮上している。

事件前に会ったのは一度だけ

「岩渕さんは無職といっても自宅などからライブ動画を配信して臨時収入を得ていたとみられ、視聴者である古川容疑者と知り合ったようだ。一部報道によると、岩渕さんとは事件前に一度しか会っておらず、配信者と視聴者の関係に戻る提案を受け、“ほかの男のモノになるなら殺してしまおうと思った”などと犯行動機を述べているという。単なる復縁話のもつれではないかもしれない」(全国紙社会部記者)

 岩渕さん宅から北東方面に約36キロメートル。県境を越えた茨城県牛久市に容疑者宅はある。庭先の広い洋風な一戸建て住宅で、周辺住民によると事件後から窓のカーテンはすべて閉められたままという。

ほとんど近所付き合いがない

 近所の女性は「ほっそりしたごく普通の若い男性に見えた」と話す。

「数年前の日中、バイクか自転車に乗ってどこかに出かけるところを見かけたぐらい。母親と祖母と暮らしていたようだが、ほとんど近所付き合いのない一家だったので専門学校に通っていたことすら知らなかった」(同・近所の女性)

 一家が引っ越してきたのは約8年前。自宅を新築し、庭に天使のオブジェを飾るなど、近隣住民の目にはおしゃれな家族と映った。しかし、引っ越しの挨拶もなく、特に古川容疑者の姿を外で見かけることは少なかったという。

古川大輝容疑者の自宅に飾られた天使のオブジェ

「小型犬を飼っていて、母親はひとりで犬の散歩に出かけていました。どうも近所付き合いが得意ではないみたいで、散歩する時間帯は朝早かったり夜遅くだったり。おばあちゃんは近所の人に資産家と匂わせることもあったようですが、数年前に倒れてから姿を見かけなくなりました。息子さんは高校生ぐらいのときに制服姿を見かけただけ。ヤンチャそうには見えませんでした」(近所の住民)

 近所付き合いをしない一家のなかでも、古川容疑者は遠い存在だったという。

「自宅の庭の芝生をはがしてコンクリートに張り替えたので、息子さんが車を持つ年齢になったのかなと思ったぐらいです。自宅には250cc以上のバイクが停まっていました」(同・近所の住民)

 事件後、自宅からはバイクが消えていた。

 古川容疑者と岩渕さんのあいだでどのようなやり取りが交わされてきたのかは、捜査の進展を待つほかない。

 現場アパート周辺では、平日の日中に出歩く岩渕さんが目撃されており、時間に余裕のある生活を送っていたようだったという。

 岩渕さんと面識のある女性は、

「いい人でしたよ。やさしい人でした」

 とポツリ。

 女性を“モノ扱い”して身勝手な犯行におよんだ古川容疑者。間違った考え方を指摘する人はいなかったのだろうか。