軽症と報じられていたオミクロン株だが重症者数は増え続け、1日あたりの死亡者数がデルタ株を超えまだまだ感染防止の手を緩めることはできない状況。日常のなかで「感染しそう」と不安になるシーンは多々ある。密になったとき、飛沫が飛んできそうなときなど不安になるシーンについて、緊急アンケートを実施。各シーンについて感染の可能性を医師に聞いた。
オミクロン株の感染爆発は止まらず、2月15日には死亡者数が過去最多の235人となった。保健所もほぼパンク状態となり、感染経路も追えなくなっているなか、いつどこで自分が感染してしまうのか、不安はますます大きくなっているのが現状だ。
「オミクロン株は感染力が強く、無症状または風邪の症状に似ていることもあり、感染に気づかなかったり、いつのまにか感染していたりというケースも多いです」
そう語るのは『豊洲 はるそらファミリークリニック』の院長・土屋裕先生。今回は全国600人を対象にしたアンケートで挙がった「感染しそう!?」とヒヤッとした場面について、感染リスクや対応策を教えてもらった。
緊急アンケート
「感染しそう」と思った瞬間
全国の30〜60代の男女600人を対象に、新型コロナに感染しそうだと思った瞬間についてのアンケートを2月14日に実施(複数回答可)。やはり「3密」と「飛沫」にまつわるシーンで不安を感じる人が多いという結果に。
1位 飲食店でほかのグループの話し声が大きいとき 251人
2位 人がマスクを下げて話しかけてきたとき 248人
3位 満員電車で大きな声で会話している人がいたとき 229人
4位 狭いエレベーター内で会話している人を見たとき 210人
5位 病院に行ったとき 207人
6位 公共のトイレや洗面所を使うとき 142人
7位 道を歩いていて、ノーマスクの人とすれ違ったとき 132人
8位 職場や学校で、あなたのそばで人が食事をしているとき 71人
9位 美容院で美容師と客が会話しているとき 59人
10位 電車やバスのつり革につかまるとき 53人
無防備だから怖い「ノーマスクタイム」
ヒヤッとした瞬間として最も多くの声があがったのが、【飲食店でほかのグループの話し声が大きいとき】(251人)。マスクをはずさざるをえない場だけに、他人のふるまいがいつも以上に気になってしまう人が多いようだ。
「食事が終わってもマスクをつけずにおしゃべりで盛り上がっているグループがいると、怖いなと思います」(49歳・女性/東京都)
「ホテルのバイキング形式の朝食時、近くに座っていた子どもたちが大声で騒いでいた。飛沫感染が怖いので別の席に移りました」(58歳・女性/広島県)
黙食が推奨されるなか、飲食店以外でも食事のシーンにリスクを感じる人は増えており、8位には【職場や学校でそばにいる人が食事をしているとき】(71人)が挙がった。
「パーテーションはあるものの、昼休みなどにお弁当を食べながら話しかけられたりすると対応に困ってしまう」(31歳・女性/大阪府)
「2月頭に理化学研究所からスーパーコンピューターを用いた飛沫感染のシミュレーションデータが改めて出されたのですが、感染者がマスクをせず対面50cm以内に15分以上いた場合、ほぼ100%感染するという結果が出ています。1席分の間隔を空けて座った場合には、感染リスクを大幅に抑えられるということです。
パーテーションを設置したり、換気を徹底したりと、お店の努力で感染のリスクは多少抑えられますが、近い距離にマスクをしていない人がいる状況が長時間続くことはやはりリスクが高いといえます。食事以外はきちんとマスクをして、大騒ぎしないことが大事です」(土屋先生、以下同)
2位の【人がマスクを下げて話しかけてきたとき】(248人)や、7位の【ノーマスクの人とすれ違ったとき】(132人)など、マスクをはずす人に対する非難の声も根強い。
「接客をしているとき、声が通るようにするためか、わざわざマスクを下げて話しかけてくるお客さんがいる」(52歳・男性/大阪府)
「マスクなしで息を切らしてジョギングしている人と道ですれ違うとき。息も荒く、飛沫が飛んできそうで嫌だ」(44歳・女性/神奈川県)
「職場の人が電話をするときにわざわざマスクをはずしているのが理解できない」(38歳・男性/滋賀県)
相手の「うっかりノーマスク」にヒヤッとするケースも。
「すれ違う程度なら感染リスクはそこまで高くはなりませんが、やはりマスクをつけていない人がいると心配ですよね。もちろんマスクは感染対策として有効で、マスクをしていないときに吐き出す飛沫の量を100%とすると、不織布マスクをつけている場合は20%、布マスクは30%、ウレタン製マスクだと50%程度まで周囲への飛沫を減らせます。また吸い込むときにおいては、マスクをしないで吸い込む飛沫の量を100%とすると、不織布マスクなら30%まで減らせます」
やはり不織布マスクをきちんとつけることが大切だ。
「3つの密」の感染リスクが知れ渡ったなか、3位【満員電車で大きな声で話す人がいたとき】(229人)、4位【エレベーター内で会話をする人がいるとき】(210人)と避けようのない密な場面にヒヤッとする人はやはり多い。
「満員の電車内で咳やくしゃみをしている人がいると、マスクをつけていても怖い。逃げ場がなく不安になる」(63歳・女性/東京都)
「エレベーターで会話をしている人と一緒になってしまうと、つい息を止めてしまう」(69歳・男性/東京都)
「日本産業衛生学会の調べでは、エレベーターの使用は換気もされ短時間であるため、マスクを着用し会話をしなければそこまで感染リスクは高くならないといわれています。
ただ、ボタンを触るなどの接触感染のおそれもありますし、密な空間への心理的な不安も。電車についても、換気を徹底している車両は多いですが、やはり密な状況だと感染リスクは高まります。きちんとマスクを着用して、基本的には会話を控えるという感染対策を利用者みんなが守ることで、公共の場の不安を軽減することも必要です」
9位には【美容院に行ったとき】(59人)という、他人と長時間接触せざるをえないシーンもあがってきた。
「スタッフの方との会話が楽しみのひとつだったけど、状況が変わった今、大丈夫かな……と思ってしまいます」(67歳・女性/福岡県)
「広さや換気の状況など環境はさまざまで一概には言えませんが、美容院も長時間、他人と密に接する場所なので、感染リスクは少なからずあります。しっかり対策しているお店が多いようですが、“感染対策としてあまりしゃべらないようにしますね”などと、お互いを気遣い合うひと言も大切ですね」
感染者がいそうな場所はやっぱり怖い
5位には【病院に行ったとき】(207人)というシーンが入った。発熱外来以外の一般診療においても、感染に対する不安の声は聞こえる。
「待合室で長時間待っているとき、感染者が近くにいるのではと不安」(49歳・女性/北海道)
「持病で定期的に病院に行かなければいけないが、体調の悪い人も多くいる場所で、ここでコロナにかかってしまうのは本末転倒だなと思う」(66歳・女性/愛知県)
また、ランキングには入らなかったものの【PCR検査会場で列に並んでいるとき】という声も複数あがった。
「帰省前にPCR検査を受けに行ったが、感染の疑いがある人が集まっている場所だから、不安が大きかった」(39歳・女性/奈良県)
「コロナ疑いの患者さんを診療する場所や時間帯で分けている病院が増えています。当院では人が触れるところのこまめな消毒や特殊な換気システムを導入してさらに感染対策を強化しています。診察を受ける前にその病院の感染対策をホームページなどで確認しておくのもいいでしょう。
それでも患者さんが不安に思ってしまうのは無理のないことです。軽々しく安心してくださいとは言えませんが、どうしても不安が強ければオンライン診療や電話診療を利用するのも一つの手です。
コロナ感染の疑いのある方は慌てて病院に駆け込まず、病院や保健所の指示に従って行動していただきたいです。ひと昔前は風邪でも気軽に診てくれたかもしれませんが、風邪の症状と区別のつかないオミクロンが流行っている現在、風邪症状で気軽に病院を受診できなくなってしまったことも知っておいてください」
トイレやつり革の接触感染が不安
6位には【公共のトイレや洗面所を使うとき】(142人)、10位には【電車のつり革につかまるとき】(53人)と、不特定多数の人が使うものに対して不安を感じる人も多い。
「コロナ前に比べると、公共のトイレを使う際に便座の除菌を徹底してやるようになった。たまに除菌シートを忘れて絶望的な気持ちになる」(34歳・女性/岐阜県)
「職場の洗面台でうがいや歯みがきをする人もいるので、手を洗うときにもウイルスがいるのではないかと心配」(51歳・女性/神奈川県)
「電車のつり革をつかんだ後、手を洗うまで目や口、マスクなどを触らないように過剰なほど気を使ってしまう」(56歳・男性/東京都)
ランキングには入らなかったが、階段の手すりやドアノブ、さらには郵便物や宅配物を触るのをためらう人も。
「ドアノブなどは誰が触ったかわからないので、基本外出時は手袋をつけるようになった。素手だと宅配便を受け取るのさえ、ちょっとイヤだなと思ってしまいます」(38歳・女性/埼玉県)
「オミクロン株の場合、プラスチックに付着したウイルスは8日ほど、皮膚に付着した場合でも21時間ほど生き続けるという研究結果が出ています。そこから接触感染をしてしまう例もありえないことではなく、不特定多数の人が触るところは濃度70%以上のアルコールで消毒をすることも重要な感染対策になりますね。
手についたウイルスは口や鼻、目を触ったときなどに体内に侵入して感染する場合が多いので、こまめな手洗いや手の消毒も大事です」
どんなに気をつけていても起こってしまう「コロナ版ヒヤリハット体験」。他人がどんなときに不安を感じるのかを知り、そのような行動をしない配慮も、安心な社会生活を送るうえで必要不可欠だ。
細かいけど、あるある!
私がヒヤッとした瞬間
上位10位には入らなかったが、日常生活でありがちなヒヤリ体験談をピックアップ。目には見えないだけに、忍び寄るコロナウイルスの気配にハラハラしてしまう人も多いよう……。
【50代女性】
テニススクールのメンバーに「実は検査で陽性だったけど、症状がなくて平気だった!」と明かされたとき。そういう問題じゃないでしょ!
【60代女性】
スーパーのレジ待ちのとき、足元に立ち位置を示す足のマークがなく、後ろの人からグイグイ接近してこられた。急ぐ気持ちはわかるけど……。
【40代女性】
息子が「仲よしの友達2人が感染した」と報告してきたとき。クラスでも感染者が増えているが学級閉鎖はなく、いよいよかと覚悟を決めた。
【50代女性】
スマホの顔認証をするのにマスクを下げたあと、元に戻す際に素手で口元を触ってしまった。外出先でいろいろ触った後だったので後悔!
お話を伺ったのは…
土屋 裕先生
日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。昭和大学の関連病院や海外で20年ほど活躍し、2020年に『豊洲 はるそらファミリークリニック』(東京都江東区)を開業。発熱外来、PCR検査、コロナ患者の往診も実施。