2月20日に放送された『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)の「山奥ニートの結婚~一緒に赤ちゃん育てませんか~」がネット上で“炎上”している。
同番組の舞台は、最寄駅から車で2時間の場所にある和歌山県・田辺市の集落にあるシェアハウス『共生舎』。社会や家族から距離を置いた20~30代の“山奥ニート”たちが、互いの人生に干渉せずに共同生活を送る姿を描いたドキュメンタリーで、今回は30代のももこさんと20代のアツシさんという住人同士の結婚・出産がメインで取り上げられた。
“育児を他人任せにしている”との批判
「もともと法律事務所で事務の仕事をしていたももこさんは、かつて愛し合っていた夫婦が、離婚問題でいがみ合う姿を目の当たりにして、人間を信じられなくなり、『ひっそりとどこか遠くで静かに暮らしていけたら』と、山奥ニート生活を始めたそうです。
普段、『散歩して、散歩に疲れたらマンガを描く』という自由気ままな暮らしをしている彼女にとって、妊娠と出産は、“現実に向き合わなければいけない出来事”という描かれ方をしていました」(テレビライター)
その中で、ももこさんは、共生舎での子どもを育てたい理由について「子育てが大変だから面倒を見きれない分は他の住人にも見てもらえるかなって」「10人いれば誰かしらヒマな人がいるから」と説明。
こうした態度が一部の視聴者の目に、「母親としての責任感に欠けると映り、物議を醸した」(同・前)というが、隣の山の限界集落に住む86歳の女性・中岡さんへの言動が、炎上をさらに加速させたようだ。
直売所でももこさんと知り合ったという中岡さんは、彼女の婚姻届の証人にもなった人物。ももこさんはこれまで何度も中岡さん宅に宿泊するなど、「お世話になっている」と語っていた。
「ももこさんは産後の肥立ちが悪く、代わりにアツシさんが家事と育児に奮闘していました。そんな中、赤ちゃんを見に共生舎にやって来た中岡さんの目の前で『(赤ちゃんの)お風呂誰か手伝ってくれる人いないかな?』と頼るシーンが、一部視聴者の間で“育児を他人任せにしている”と受け取られてしまったのです。
それに拍車をかけたのは、ももこさんが赤ちゃんの名づけに、中岡さんの名前『カヨ』を拝借したこと。中岡さんの困惑しきりというリアクションも相まって、『子育ての責任を中岡さんに押し付けようとしている』と感じた視聴者もいたようです」(同・前)
中岡さんは、共生舎を後にする際、「放っといてくるのが(胸が痛い)」「誰のせいでもないでしょうけどね あの子らの選んだ道やろうけど やっぱり見てたら」「新米(ママ)でも ももちゃんがもうちょっとね 動ける状態やったらいいんやけど」と涙を流しており、「山奥ニートのシェアハウスという特殊な環境での子育てを心配している様子だった」(同・前)という。
また、後日ももこさん一家を7日間自宅に泊まらせた際には、アツシさんからの「山奥にある共生舎を出て、町の近くで暮らす」という提案に、「子育てが大変になる」と難色を示したももこさんに対し、「しんどいのも含めて子育てと思ってるから」「ももちゃんは自分を中心に動いているから だから『しんどい』って言えるの」と指摘。
山奥ニート側の反論
続けて「一番苦しい時に見てくれるのは(住人ではなく)旦那さん」「それを考えたらもうちょっと、自分が楽したいって考えるんじゃなくて 大事な赤ちゃんと支えてくれる旦那さんを見守る、愛してるのを精一杯出したらどうかな」と助言したのだ。
「中岡さんからの激励を受けたこともあり、ももこさんがゆっくり育児に向き合い始めたとして、番組は大団円を迎えました。しかし、番組では終始、ももこさんが他人頼りの自己中心的な“甘ちゃん”に描かれていたため、放送後もSNSでは痛烈な批判の声も見受けられます」(テレビ局関係者)
SNSで今回の放送内容についてのコメントを確認してみると、
≪他力本願過ぎて見てて怖いんだよね≫
≪育児放棄しかねんだろ≫
≪子供はペットではない≫
≪善意の搾取っていうのはこうゆうことを言うんだよね≫
といった、ももこさんの行動や言動を非難するコメントが多く見受けられた。また、ももこさんが自身のTwitterに投稿していたエッセイ漫画も、放送後やり玉に挙げられたという。
「中岡さん宅に宿泊した際のエピソードがまとめられた漫画には、『(ネットが通じていないため)2泊が限界でした』『(夕食に続いて翌日の朝食にカニが出されたので)ちょっと飽きました』など、素直な感想がつづられているのですが、SNS上ではももこさんに『ひどい』『中岡さんがかわいそう』などとブーイングが集中。さらに、クラウドファンディングで赤ちゃんの養育費を募っていることも物議を醸しています」(同・前)
そんな中、共生舎の理事を務め、同番組にも出演していた石井あらた氏が、「葉梨はじめ」名義のTwitterで、番組の演出について反論を展開したのだ。
≪ももこさんが産後動けなくなってたのは事実なんだけど、身体に大きなダメージ受けている瞬間をピックアップして、それをなにかのメッセージや結論に結びつけるのは間違ってる≫
また、一部視聴者からの「ももこさんが他人に育児を押し付けている」といった批判に対しても、
≪ももこさん、ずっと子供と一緒にいて世話してるよ。疲れてるだろうと思って「2時間くらい見てましょうか」と声かけても、「この子見てるのが映画見るより面白くて」って言ってた≫
と、番組では取り上げられなかった育児事情を明らかにしている。
「編集がおもくそ嘘でした」
「石井氏は、≪1年くらい取材に協力してきた結果がこれなので、正直ショック大きい。精神衛生に悪いと思っても、なんでかエゴサしちゃうのよ…。この一週間ずっと》ともツイートしていますし、今回の放送内容は、極めて不本意なものだったのでしょう。
制作側が、ももこさんを未熟な存在として強調していたのは明らかで、例えば妊娠中の彼女が、共生舎での子育ての展望を語るシーンでは『そんなふうにうまくいくのでしょうか。ちょっと人頼みにも見えるももこさんが心配です』とナレーションが入っていましたし、産後のももこさんが中岡さん宅に宿泊したシーンでは、『料理もすべて中岡さんの手作りです』と説明が入ったほか、アツシさんに皿洗いを任せる様子も映されていました。こうした演出によって、SNS上でももこさん批判が巻き起こり、さらに共生舎のイメージダウンにもつながりかねないとあって、関係者は悔しい思いをしているのでは」(同・前)
『ザ・ノンフィクション』をめぐっては、過去に何度もやらせや過剰演出問題が物議を醸してきた。「マキさんの老後」シリーズの主人公・女装のゲイ「マキさん」と男装のレズビアン「ジョンさん」夫婦は、2020年7月に『週刊女性』で同番組のやらせについて告発している。
「スタッフから、とにかく“ケンカしてください”と言われ、ケンカするまで帰ってくれないから早く帰ってほしくてケンカをしていた……という明らかなやらせのほか、マキさんがジョンさんと言い合いになった際、ワイングラスを割ったような演出をされたと、過剰演出の実態まで暴露したのです。『マキさんの老後』は人気シリーズだけに、衝撃を受けた視聴者も多かったのではないでしょうか」(同・前)
2020年1月放送の「私って嫁ですか 妻ですか ~農家に嫁いだ友紀子の結婚~」の主人公・友紀子さんも、放送後に「ザ・ノンフィクションに出演してみてわかったこと」というYouTubeにアップした動画内で、「編集がおもくそ嘘でした」と放送内容に反発した。
「農家に嫁いだ友紀子さんは、農家の仕事そっちのけで婚活事業に邁進している女性なのですが、婚活応援バーの経営に失敗したため、妊活を始めた……という描かれ方をしていました。しかし実際には、以前から妊活をしていたといい、『100倍ダメな奴に描かれた』と恨み節。こうした編集のせいで『こんな奴に子どもは育てられない』と批判されてしまったそうです」(ウェブライター)
過去にこうした問題が浮上している『ザ・ノンフィクション』だけに、今回も過剰演出疑惑が拭いきれないところだ。
「『マキさんの老後』シリーズも担当した『ザ・ノンフィクション』の元チーフプロデューサーである張江泰之氏は、ウェブメディア『#SHIFT』のインタビューで、同番組を『市井の人々がもがき苦しみながら今を生きる姿を追いかける番組』と表現していました。視聴者に、出演者の“もがき苦しむ姿”を見せたいがために、演出がどんどん過剰に……なんてことにならなければよいのですが」(前出・テレビ局関係者)
反響の大きい作品はシリーズ化されることも多い『ザ・ノンフィクション』だが、「山奥ニート」はこれっきりとなってしまうのだろうか……。