いまや若者にも広がりつつある現代人の目の悩み。当然、年齢が進めばその度合いも深刻になっていく─。老眼、緑内障、白内障、近視、さらにドライアイ……。一度発症すると改善が難しく、日常生活に支障をきたす場合も出てくるだけに厄介だ。スマホはもちろん、仕事でもパソコンを使う頻度が圧倒的に増え、慢性的な眼性疲労に苦しめられる現代人はほとんどがその予備軍だといえる。
目の不調は血流改善でよくなる
だが朗報が! たった10秒の「顔さすり」をいくつか組み合わせれば、ほとんどの目の不調は改善できるというのだ。
「顔さすりで目のまわりの血流を促すのは不調改善にとても効果的。目薬などではなかなか効果が表れなかった患者さんでも、老眼や近視の症状がよくなったケースも少なくありません」と鍼メディカルうちだの内田輝和先生は言う。
そもそも不調のいちばんの原因は、目の使いすぎからくる血流悪化。目のまわりの筋肉が固まってしまい、ピントを合わせる機能が低下する。
そこで自宅でできる「顔さすり」療法で、目のまわりのツボを刺激し、滞った血流を促進させる。「さすり」という呼び方のとおり、顔にあるツボの周辺を全体的にやさしくさすっていくことで、これまで嫌というほど付きまとわれていた目の不調がなおると評判だ。
たった3ステップで視力アップ
顔さすり療法は「脳天さすり」「顔さすり」「眼筋トレーニング」の3ステップでひとまとめ。1ステップごとに10秒ずつ、それを5セット繰り返そう。
コツは人さし指と中指を使うこと。消しゴムを使うくらいの強さで軽く皮膚に圧をかける。1日1回、もしくは朝晩の2回、特に入浴後などの血流がよくなっているタイミングで行うのがポイントだ。通常より高い効果が得られるという。
ステップ1
ステップ1の「脳天さすり」は目のあらゆる症状に効果がある。「脳天」は、首の中心に沿って髪の生え際に人さし指を置き、そこから頭頂部に向かって指3本分のくぼみから左右5ミリの所を指す。ここの血流が滞り、しこりのように硬くなっていると、目の不調が表れやすい。人さし指と中指を当て、左右に10回リズミカルにさすろう。
ステップ2
ステップ2は「症状別の顔さすり」だ。特に老眼に効くのが「魚腰」というツボで、ここを刺激すれば前頭葉に作用し、近いところにピントを合わせやすくなる。もちろん近視を改善する顔さすりもある。「中谷眼点」と「太陽」という2つのツボを押さえることで側頭葉に刺激を与え、視覚に関わる筋肉が正しく働くようになるのだ。
そのほかにも、緑内障に効く「攅竹」というツボは眉の始まりにあり、白内障に効く「陽白」というツボは眉の中央の少し上にある。これらのツボも同様に、人さし指と中指を使い、その周辺のゾーンをやさしくさすってあげよう。
このように症状ごとにさする部位が違うステップ2。もちろんすべてのツボをさする必要はなく、日ごろ気になる症状に合わせたツボを中心に刺激すればいい。その日ごとに異なるツボを押すと、目の不調に満遍なく効果が得られるという。
ステップ3
最後のステップ3は、目全体を鍛える「眼筋トレーニング」。両手の人さし指で、上下、左右、右斜め、左斜めに目を引き伸ばす。このとき指の力に逆らってまぶたを閉じるように力を入れることで、周辺の筋肉が鍛えられるように働く。この仕上げのステップによって、視界が広くなり視力がアップするだけでなく、垂れ下がったまぶたが上がり、見た目の若返り効果も期待できる。
目の不調は身体の不調を表す
顔さすり療法で筋肉がほぐれると、直後にはその効果で視力が向上したように感じられる。ただ、ここで油断は禁物。たった1回の顔さすりで不調がしっかり改善できたと勘違いしてはいけない。多くの場合、その効果は一時的、すぐに戻って元のもくあみになってしまう。ぬか喜びを本当の効果に変えるには、やはり多少の時間は必要だ。もっとも、それほどたいへんなことではない。だいたいひと月ほどで改善がしっかり定着してくる。
眼科専門の回生眼科山口康三院長も、顔さすりが皮膚や筋肉の滞った血流をスムーズに整える点を高く評価する。一種の生活習慣病的な傾向が目の不調につながるというのだ。
「白内障や老眼の症状は加齢が原因だと思われがちですが、実は年齢だけの問題ではありません。目の不調を訴える患者さんたちは、生活習慣が似ているケースが多いのです。生活習慣を整えることによって、目の症状も改善する患者さんは少なくありません」
睡眠不足や運動不足は言わずもがな、喫煙、アルコールの過剰摂取、過労、ストレス……これらが原因で視力の低下やかすみ、またドライアイの症状が表れることも多い。
顔さすりによる血行促進が効くだけでなく、例えば、身体全体の血行改善のために健康な食生活を心がけるのはさらに効果的だ。食生活の見直しでは、日本人が長い間慣れ親しんできた和食中心の食事を意識するのがいい。肉・乳製品のとりすぎはNG。ほかにも食事は腹八分目を意識することや、朝食を青汁にかえる、主食を雑穀や玄米にかえるなど、食生活の改善は目の疾患をよくする基本だと山口先生は言う。
目をよくする方法は目薬以外にもたくさんある
食生活以外にも日々の小さな習慣で、視力アップや目の症状を改善するさまざまな方法がある。眼科専門医の視点から見ても、やはり血流促進にはウォーキングが最適だそうだ。まずは数十分、毎日継続するところから始めるといい。ただし激しすぎる運動は逆に血流を悪化させてしまうので、注意しよう。
また、ドライアイが気になる人は、毎日目を温めることを習慣にしてみるのもおすすめ。方法は簡単で、水で濡らしたタオルを軽く絞り、ほどよく温めた蒸しタオルを、目をつぶってまぶたに当てる。目薬だとあくまでその場しのぎの効果しか得られないが、目を温めることで涙の質がよくなり、ドライアイの改善が見込める。これだけで日々のストレス軽減にもつながり一石二鳥だ。
これらの小さな習慣を意識し、顔さすりとあわせて行うことで予防策としても、高い効果が期待できる。まだ自覚症状がない人も、毎日テレビ、スマホ、パソコンなどのブルーライトを浴び続けていれば、目に疲労がたまっていることは確実。最近では小学生でも目の疲労が原因で視力の低下に悩み、眼科を受診する患者も多くなっている。実際、深刻な病気や症状が表れてからでは遅く、日ごろから予防をしておくことが重要になってくる。
「どうしても現代の生活では目を酷使してしまいがちですが、きちんと目を休ませる時間が必要です。さらに眼精疲労が取れることによって脳の疲れも取れますよ。仕事や家事の合間で軽くマッサージをすることを心がけてみてください」(前述、内田先生)
目は「脳の出先器官」ともいわれるほど、私たちの身体の中でも非常に重要な器官。だからこそ、目に表れる症状は身体の不調の警告だと認識し、予防や改善に努めることが欠かせない。年齢や症状の有無にかかわらず、ぜひ今日から10秒でできる「顔さすり」を試してみてほしい。
「顔さすり」3ステップを記者(50歳女性・老眼ぎみ)が2か月試した結果
パソコンやスマホで細かい文字を追い続ける仕事柄、とにかく目が疲れて疲れて……。視力の低下(老眼の悪化?)でこの1年で2度も眼鏡の度数をかえたほど。遠くを見たりしょっちゅう目薬をさしたりとアイケアには余念がないけれど、いまイチ効果は実感できず。
「さするだけ?」と半信半疑でためしたコレ。目まわりがほんのり温かくなって、さすったあとは心なしか目がぱっちり大きくなっている!
さする前には自分の手をこすって温めておくと、ホットタオル効果に。脳天さすりは、目の疲れからくる首肩のコリにもバッチリ。
寝る前や、朝起きてすぐにやさしくさすって「手当て」すると心までほぐれます♪
教えてくれた人は……内田輝和先生
●鍼メディカルうちだ院長、岡山県鍼灸師会会長、岡山大学医学部非常勤講師。著書に『10秒顔さすりで老眼、近視、緑内障はよくなる』(主婦の友社)など。
<取材・文/オフィス三銃士>