「まさか、そこまで酷い関係性とは思いませんでした。正体不明の不気味な一家ではありましたが……」
と容疑者宅と同じアパートに住む女性は絶句した。
インターネットで知り合った女性を自宅アパートに住まわせ売春させたとして警視庁保安課と板橋署の合同捜査本部は2月28日、東京都板橋区の無職・嵩原(たけはら)ゆき乃容疑者(33)とその夫で防水工の優力(ゆうき)容疑者(29)を売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕した。「強制はしていない」などと否認しているという。
被害女性A子さん(26)が警察に駆け込んだため発覚。
被害者の取り分は売春1回で1000円
「A子さんは容疑者夫婦からアパートの家賃や生活費を払うよう求められ、金の工面に困ると“風俗で働け”と言われるようになった。2019年7月から21年11月までの約2年4か月、自宅から近い池袋の繁華街などに立って売春相手の客を取らされ、持ち帰った売り上げは夫婦が管理した。捜査で確認できた約600回で得た計約860万円のうち、A子さんへのキャッシュバックは1日あたり1000円未満。知人の助言でようやく警察に相談する決心がついたが、助言がなければいまだに“売春地獄”は続いていたとみられる」
と全国紙社会部記者。
単純計算すると、売春1回で得たのは約1万4300円になる。容疑者夫婦はA子さんに請求する家賃月額を数万~十数万円単位でつり上げていき、最終的に月40万円の支払いを求めたという。
同じアパートの男性住人は、
「築30年ほどの古い物件で間取りは3DK。公営なので世帯収入によって家賃は異なるが、タワーマンションじゃあるまいし、どう考えたってそんなにかかるわけがない」
とA子さんが要求に従ったことを不思議がる。
同アパートの公開データによると、平均賃料は約2万3000円だから相当なぼったくりだ。なぜ、従ったのか。
「A子さんはシングルマザーで3歳になる子どもがいる。その子を産んだばかりのころ動画投稿サイトを通じてゆき乃容疑者と知り合い、育児相談に乗ってもらったのが同居のきっかけ。“行くところがないのならばうちにくれば?”などと誘われ、仕事中は子どもの面倒をみてくれるというので甘えることに。頭のあがらない支配下に置かれ、捜査当局はA子さんが一種の洗脳状態に陥っていたとみている」(前出の記者)
容疑者夫婦はA子さんの売り上げを自分たちの結婚披露宴の費用に充てたり、高級車やブランド品の購入に充てていたというからひどい。
複数のアパート住人が容疑者一家をいぶかしんでいた。
「引っ越しの挨拶もないし、周囲とのかかわりを避けていたので、若く見える優力容疑者とA子さんが夫婦だと思い込んでいた。ゆき乃容疑者は優力容疑者のお姉さんかな、と。同居は親族でないと認められないから。弟夫婦と住んでいる割には偉そうにしていて、一家の実権を握っている雰囲気だった」(古参住人)
関係者によると、容疑者夫婦には小学生の子どもがおり、子育て経験でもA子さんの先輩にあたる。
オマエと歩くのはイヤなんだよ!
優力容疑者は早朝から仕事に出かけていたが、ゆき乃容疑者は荒っぽい言葉遣いで子どもの面倒をみていた。
「幼い子どもに向かって“おい、早くこい!”とか、“だからオマエと歩くのはイヤなんだよ!”とか、乱暴な口調で叱り飛ばす姿が目立った。優力容疑者は眉毛を剃り上げ、コワモテで近寄りがたかった。いつも迷惑な路上駐車をしていたが、関わり合うのが怖くてだれも注意しなかった」
と別の住人。
ゆき乃容疑者は体格がよく、肩を揺すって歩く姿は迫力があったという。
会釈しても容疑者夫婦はそっぽを向いて返さず、A子さんはしっかり返した。
「やせ型のA子さんだけが常識的だったので“ここの家の人?”と本人に尋ねた住人がいる。優力容疑者の妹だと説明したみたい。日中は長い髪をひとつに結わいて、ラフな格好で子どもをベビーカーに乗せて散歩していた。夜になるとお化粧をして派手な服装で出かけていくので、水商売をされているのかなと思っていた。売春強要なんて卑劣すぎる」(同・住人)
容疑者夫婦は本来、同居させられないA子さん親子をかくまい、売春するときに子どもを預かることでA子さんに心理的負担を与えた。
前出の記者は言う。
「2年以上も逃げ出さなかった理由について、A子さんは“容疑者宅を出て子どもとふたりで生活していく自信がなかった”などと話している。容疑者夫婦はあらゆる面でA子さんの上位に立ち、子どもを“人質”にしていたようなものだ。A子さんは“1100万円くらいは夫婦に渡した”とも話していることから、稼いだ金額や売春の回数などをメモに取っていたのもしれない」
子育てがたいへんだったせいか、婚姻時には披露宴をしていなかったとみられる容疑者夫婦。シングルマザーを食い物にした金で夢を叶え、祝福されようとは、そろって性根が腐っている。