羽生結弦が、3月にフランスのモンペリエで行われる『世界選手権』に出場しないことを発表した。
「感動を呼んだ北京五輪から帰国し、3月1日の0時ちょうどに隔離期間が明けると、翌日の3月1日に欠場が発表されました。理由は、北京五輪の練習中に負傷した右足の捻挫がまだ完治していないためです。羽生選手の代わりとして補欠の三浦佳生選手が繰り上がり、日本男子は、北京五輪銀メダルの鍵山優真選手、銅メダルの宇野昌磨選手を含めた3選手が出場します」(スポーツ紙記者)
羽生のピンチヒッターとなった三浦はどんな選手なのか。フィギュアスケート評論家の佐野稔さんに聞いた。
「今年1月に行われた『四大陸選手権』で3位になったのが三浦選手です。『四大陸』では日本選手の活躍が目立ち、2位が友野一希選手、4位が三宅星南選手でした。三浦選手は16歳とまだ若いですが、4回転トーループ、サルコウが跳べて、ループもあと少し。非常に早くから注目されていた選手で、『世界選手権』では“台風の目”となることもありうる有力選手です」
どんな展開になるのか注目が集まるが、羽生のファンのSNS上では、今回の欠場を機に引退を心配する声が上がっている。
《これでもし引退したらロンカプ様も競技では観られなくなるのか》
《引退しないでっ!! 広いリンクで、もう一度(いや何度でも)見たい見たい見たいー》
羽生引退後のスケート界に不安
いまだ羽生の口からは語られない進退だが、いつかは訪れる“羽生不在の未来”には不穏な空気が漂う。
「金銭的な問題が心配されているんです。日本スケート連盟は、フィギュアスケートによる収入をその競技だけで使うのではなく、スピードスケート、ショートトラックも合わせた3競技に振り分けていますから、フィギュアだけでなく、ほかの競技にも影響が……」(スケート連盟関係者)
そんな懸念が生まれるスケート連盟のお金の流れについて、スポーツライターの梅田香子さんが教えてくれた。
「日本スケート連盟の収入源のひとつは“選手の登録費”です。区分ごとに決められた1人1万円程度の金額で、選手は連盟に登録をしていないと、試合には出られません。ですが、登録している人数が多くありませんので、さほどの収入にはなりません。やはり“テレビの放映料”や“スポンサー料”が重要な収入源です。羽生選手のようなスターがいるかいないかで、大きく金額が変わってきます」
その使い道は、主に選手の育成だという。
「スケート連盟はリンクの運営はしていませんが、費用を負担したうえで一般企業が運営するスケートリンクを貸し切り、強化選手のために練習の機会を設けているのです。放映料などによる収入が増えたことによって、日本の多くのリンクでこういったことができるようになりました」(梅田さん)
“フィギュアの顔”ともいえるスター選手が不在になると……。
「もしも羽生選手が競技を引退する場合、テレビの放映料などが今ほど入ってこない可能性はあります」(梅田さん)
“ポスト羽生”の期待がかかる選手
では、羽生ほどの存在になりうるような選手はいるのだろうか。
「『世界選手権』に出場する三浦選手は羽生選手を尊敬していて、食事に関するアドバイスも受けたことからファンからも“弟分”のように見られています。また、『四大陸選手権』で世界のスケートファンにその存在を知らしめた三宅選手は王子様のようなルックスでも知られています。ただ、羽生選手はその圧倒的な人気を10年以上揺るぎないものにしていますから、ここまでの選手はなかなか現れないのではないでしょうか」(フィギュアスケートファンの女性)
前出の佐野さんも続ける。
「羽生選手の今までの実績は“超一流”にさらに“超”がつくくらい。“100年に1人”と言えるほどの選手なのは間違いありません。また、俳優やアーティストと違って、羽生選手のように世界規模でファンがいるスポーツ選手はなかなかいません。この先“羽生の再来”と言われる選手が出てくるのは限りなく不可能に近いと思います。私たちは、羽生選手と同じ時代を生きていることをラッキーだと思っていたほうがいいくらいでしょうね」
羽生の次を担う存在がいなければ、やはりスケート連盟の収入減の可能性は否めない。それにより、さらなる次世代へも影響し、先細りの危機が。
「スケート連盟の費用負担によるリンクの貸し切り練習の機会が減ることが考えられます。すると、選手が自費でリンクを借りたり、練習場所を求めて海外に行ったりする必要が出てきて、経済的に余裕のある家庭以外はスケートを続けることが難しくなってしまう。結果、限られた選手しか育たなくなり、世界で活躍する“第二、第三の羽生選手”も出てきづらくなりますよね」(梅田さん、以下同)
競技人口を増やすことに注力
それを防ぐために、スケート連盟は別の手を打とうとしている。
「放映料による収入を当てにはせず、フィギュアが盛んな外国にならって、競技人口を増やすことに注力しようとしています。そうすれば、登録費による収入も増えますし、できることの幅も広がりますから」
さらに、梅田さんは“ファン組織の構築”も重要だという。
「会費制のサポーターシステムを作って、例えば、ファンが判定をしてそれをプロの審判による判定と照らし合わせるなど、ファンが楽しめる仕掛けをすれば、競技全体が盛り上がり、競技人口の増加にもつながって、レベルも上がっていくでしょう」
これからも、国際大会の上位を日本選手が占める光景を見続けるために、ぜひ実現してほしい!