渡部建

 アンジャッシュ渡部建(49)が芸能活動を再開した。

渡部、活動再開も笑いづらい

 一昨年6月の「多目的トイレ不倫」発覚以来、相方の児嶋一哉(49)が単独で出演していた『白黒アンジャッシュ』(千葉テレビ)に2月15日から復帰。22日の放送では、相方の持ちネタ「児嶋だよ」をもじった新ネタも披露した。

 児嶋に「スケベさん」と呼んでもらい「ワタベだよ」と返す、というネタだ。

 ここから思い出したのが、2014年に雑誌『JUNON』でしていた発言。彼は、

「芸人にとって“恥ずかしい過去”みたいなものはすごく身を助けてくれる」

 として、同じ『JUNON』('05年1月号)で撮られたシャワー写真の話をした。「抱かれたい芸人ランキング」の常連だった彼が、上半身裸でシャワーを浴びるサービスショットを披露したもので、その後、バラエティー番組でいじられることに。これが芸人としてはすごくおいしかったというわけだ。

 そこで「多目的トイレ不倫」もまた、自虐ネタにできると期待したのだろうが──。番組を見た人も、ネットで知った人も、あまり笑えなかったのではないか。

 それはあの騒動がいわゆる「恥ずかしい過去」とは別物だからだ。多目的トイレ不倫が不快だった人にとっては、まだまだ「許せない過去」なのだろう。

 そんなわけで、前途多難な渡部。ただ、この「恥ずかしい過去」云々のインタビューはなかなか面白い。彼がなぜ、こうなってしまったのかという謎まで解けるのだ。

 まず、この時点での彼は芸人として再ブレイク中だった。シャワー写真を撮ったころは、若さと勢いで注目された感じだったが、その後「スケジュールがガラ空き」の低迷期を経て、復活。グルメや高校野球などの「情報力」を武器に、ピンでの仕事も児嶋をはるかに上回るようになった。

 それゆえ、シャワー写真のころの自分を「人生でいちばん調子に乗っていました」と振り返り、

「それにしても当時の僕は、この後の人生、いろんな波にもまれることをまだ全然わかってない顔してますね」

 と、若気の至りとして笑っていたのである。

渡部が思う「芸人が輝く瞬間」

 しかし、周知のとおり、彼はここからもっと調子に乗ることに。そして「波にもまれる」どころか、波にのみ込まれてしまうわけだ。

 '17年に佐々木希(34)と結婚。MCとしても引っ張りだこになり、公私ともに絶頂期を迎えた。が、'20年の不倫発覚で、まさかの仕事ゼロ状態に。この転落につながった原因を探るうえで、彼はインタビューの最後に気になることを言っている。

「芸人がいちばん輝くのはオンからオフに切り替わる瞬間なのかもしれないですね」

 彼いわく、芸人は本番のあと、コントで浴びた墨汁などを拭いたりしている姿がいちばんカッコよくて色気があるとのこと。彼自身、そうやってバカ騒ぎから素に戻るところを「アイドルの子」に褒められたりしたという。

 そう、彼はおそらく、オンからオフに切り替わるたび、色気があってカッコいい自分に酔っていたのだ。多目的トイレ不倫も、それを味わうための快楽のひとつだったのではないか。

 ただ、その切り替え方はあまりにも雑だった。せめてホテルでシャワーを浴びるくらいの段取りがあれば、不倫相手たちはもとより、世の女性もそこまで不快にはならず、これほどひどいイメージダウンは避けられたかもしれない。

 要は不倫にも、TPOが大切ということだ。まぁ、しないのがいちばん安全なのだけど。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)