新御三家(郷ひろみ、野口五郎、西城秀樹さん)と花の中三トリオ(桜田淳子、森昌子、山口百恵さん)

 2月に惜しまれながらこの世を去った、西郷輝彦さん。その訃報に「橋幸夫、舟木一夫とともに『御三家』として人気を集め」という記述が多くみられたが、ふと感じたことがあった。

女子アナまで『三人娘』くくりに

 そういえば最近は、芸能界での“トリオ売り”をあまり見ない気がする。前記の「御三家」に続き、

たのきんトリオ(近藤真彦、田原俊彦、野村義男)

・郷ひろみ・野口五郎・西城秀樹さんの「新御三家」
・美空ひばりさん・江利チエミさん・雪村いづみの「三人娘」
・森昌子・桜田淳子・山口百恵さんの「花の中三トリオ」
・田原俊彦・近藤真彦・野村義男の「たのきんトリオ」
・薬師丸ひろ子・原田知世・渡辺典子の「角川三人娘」
・宮沢りえ・牧瀬里穂・観月ありさの「3M」

 などなど、昭和から平成の頭にかけて、ソロでデビューしているのに当時の人気者“3人をひとくくり”にした露出が多かった。ある芸能評論家は、ほかにもまだいると以下のような“3人組”をあげる。

「吉田栄作・織田裕二・加勢大周が『トレンディ御三家』、フジテレビの女子アナ、有賀さつきさん・河野景子・八木亜希子は『フジ三人娘』と呼ばれていましたね。さらにバンドブームの起爆剤となったインディーズブームを牽引したバンド、ラフィンノーズ、有頂天、ウィラードが『インディーズ御三家』と呼ばれたり。とにかく3人でくくることが、芸能界全体に多かった気がします」

右より、有賀さん、八木亜希子、河野景子('88年)私生活でも仲良しだった

 そもそも、なぜ3人なのか。前出の芸能評論家は、ひとつの説としてこう分析する。

「『御三家』という言葉は、徳川幕府の中でも特に重要な存在だった『徳川御三家』にあやかったものだと思われます。さらに、戦国時代の織田信長・豊臣秀吉・徳川家康は『三英傑』、大相撲の大関・関脇・小結は『三役』と呼ばれますし、『三種の神器』や『三羽ガラス』という表現もよくありました。これは日本だけでなく、海外でも『三銃士』や旧約聖書をもとにした『三本柱』などがありますし、“3”というのが何か心理的にアピールするまとめ方なのかもしれません。

 4人の場合の『四天王』や二人の『双璧』や『両巨頭』、7人の『七賢』や『七福神』、AKB48の『神7』などもありましたように、3人以外のくくり方はたくさんありますが、とくに芸能界では3人でくくられることが多かったですね」

 ジャニーズだけでも前出の「たのきんトリオ」をはじめ、シブがき隊、少年隊があり、V6は6人グループだったが、“トニセン”“カミセン”というトリオでの活動もあった。しかし近年は、中山優馬・山田涼介・知念侑李によるユニット『NYC』、King&Princeの前身であるMr.KINGとPrince(各3人組)以来、トリオユニットはみられない。

花の中三トリオ(森昌子、山口百恵さん、桜田淳子)

 あれだけ“トリオ売り”で成功してきたのに、なぜ芸能界のトリオは減ってしまったのだろうか。

お笑い界の「トリオ」は健在

大人数のアイドルやK-POPグループのように、たくさんいる中からそれぞれが好みを見つけ出す多様化ですね。それと個々の個性が強くなり、俳優やアーティストが単独で十分魅力をアピールできる時代になったこともあるでしょう。さらにいえば、かつての御三家や三人娘のように、所属する会社をまたいで売り出すことがなくなっていった。メディア側が主導して売り出すことも、時代とともになくなったことも理由のひとつとして考えられます」 

 というように、トリオ売りはめっきりなくなったが、お笑い界に目を向けると活躍するトリオは多い。東京03、パンサー、ロバート、ジャングルポケット、森三中、若手でいうと、ハナコや四千頭身、3時のヒロイン、ぼる塾(正式には4人組、1人は現在育休中)などといったところか。

ぼる塾

「以前、ネプチューンやダチョウ倶楽部ら一部をのそいて、“トリオは売れない”という時代がありました。番組に呼ぶときも、3人のうち1人だけ人気が出ても全員呼ばないといけない。それでやや敬遠されることもありましたね」

 というのはある放送作家。しかしここに来て、そんな環境が時代とともに変化していったという。

「ぼる塾がまさにそうですが、3人の仲よしさや楽しそうにしているところがウケています。ハナコの菊田さんがニコニコしてほかの2人を見ている様子だけで、それが楽しげな空気になる。お笑いやバラエティーでは、世の中が求めるものが変わってきたとともに、トリオの需要は高まったと思います」(同前)

 芸能界で3人組の文化を継承していくのは、お笑い業界なのかもしれないーー。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉