榊英雄監督

《あれから4年。今もなお、声をあげられない人、自分が被害にあったことにも気が付かない人、何もなかったかのように忘れたフリをし過ごしている人、様々な人が苦しみを抱えています。》

《被害に遭ったことに気が付かない方が良かったのか、と思うこともたまにあります。でも、気が付く前だって十分に苦しくて、でもその苦しみがなんだかわからなくて、気がついてしまった今も当然苦しみは消えなくて。》

 3月9日、フェミニストとして活動する石川優実さんが更新したインスタグラムには、自身も性被害を受けた過去が綴られた。そんな経験を“Me Too”として発信する石川さんだが、かつてはグラビアアイドル、女優として芸能活動をしていた女性でもある。

 同日の『文春オンライン』では、《「性被害」映画監督による性加害を女優が告発》というショッキングなニュースが配信されていた。4人の女優が同一人物から「性的行為を要求された」「立場を利用して身体の関係を持たれた」と、性的被害を受けたことを告発したものだった。

 その“加害者”とされたのが、俳優で監督業も務める榊英雄氏。3月25日に公開される映画『蜜月』でもメガホンをとったのだが、テーマが「性被害」であることも被害者の神経を逆撫でしたのだろう。同作は公開中止の措置が取られている。

SNSに即、“鍵”をかけた榊氏

 当の榊氏はというと報道後に即、自身のツイッターに“鍵”をかけて非公開に。後に発表したコメントでも、真っ先に謝罪の意を示したのは被害者女性ではなく、プロデューサーやキャストら映画関係者。ワイドショー芸能デスクも「本当に反省しているのか」とあきれ返る。

「その女性たちにしても“事実の是非に関わらず渦中の人とされてしまった相手の方々”と称したり、また記事に対しても“事実であることと、事実ではない事が含まれて書かれております”などと、猛省を口にしている割には、自分が“加害者”扱いされていることに納得していないのが見え見え。

 おそらく榊さんにしてみれば、相手女性とは合意の上で、むしろ“売られた”という身勝手な思いを巡らせているのでしょう。業界の悪しき習慣とでも言いますか、監督と女優という力関係を大いに利用したのでは?」

 実は、石川さんは2022年2月に自身のブログにおいて同様に、映画界には地位関係を利用した性的搾取が実在し、自らも出演映画の“監督”から性行為を要求されて応じたことを明かしている。この時点では名前が伏せられていた“監督”だが、大河ドラマにも出演経験がある俳優兼監督であることを明かしていた。

《今のいままで私は、この出来事を「対等な関係で行われたセックスをした話」だと認識していました》

 当時の彼女は、“監督”に対して抵抗や拒否したことはなく、むしろ自分から望んでいるかのような態度をとったとある。それは、周囲から“それも役者の仕事”と教え込まれ、弱い立場である自分に断る権利はないと思い込んでいたからだ。

 同ブログでは、他にも似たような被害にあった女性のツイッターの文面を引用して、加害者が“監督”であることを示唆。また、2016年に『週刊大衆』12月12日号が報じた《高畑裕太出演ドラマ監督ーー若手女優強制○○悪ラツ手口》(○○は編集部伏字)という記事も添えていた。

高畑裕太出演ドラマで監督を務めた

 2016年8月に強姦致傷容疑で逮捕(後に不起訴処分)された高畑裕太。彼が出演していたドラマの監督が、若手女優に対して「地位関係を利用した性的搾取」をしていたことをすっぱ抜いたもの。

 記事中では“X氏”とされていた人物だが、石川さんは“監督”から楽屋で《ああいうのは絶対にやったって言っちゃだめなんだよ》との、罪を認めた高畑への“ダメ出し”を聞かされたことを明かしている。

 この頃に高畑が出演していたのは『侠飯〜おとこめし〜』(テレビ東京系)で、逮捕されたことにより途中で降板。そして同ドラマの監督を務めたのが榊氏だ。

「石川さんは2017年12月にも、グラビア時代に受けた性被害を《#Me Too》というタイトルで告白しています。飲み会の席で“喜ばせろよ”とセクハラ発言をされたり、実際にテレビ局のプロデューサーにホテルに連れていかれたことなど、やはり弱い立場で受けた性被害です。

 このブログ記事への反響は大きく、これをきっかけにジェンダー平等を志すようになったという石川さん。以後は被害女性が泣き寝入りすることなく、強く立ち上がれる社会を作る活動をしているようです」(ウェブライター)

「榊氏は病気、病院に行って欲しい」

3月9日、「苦しみは消えない」声を上げた元女優の石川優実さん(公式インスタグラムより)

 そして報道翌日の3月10月、新たに更新したブログには《榊英雄氏に関する週刊文春の報道を受けて》とのタイトルで、『週刊文春』の取材を受けたことを明かした石川さん。榊氏の被害者であることを勇気を持って名乗り出た形だ。

 取材を受けた経緯や、榊氏が文春取材に《相手の女性から近づいてきて関係を持ちました》との身勝手なコメントに対する反論。そして被害者としての葛藤などを綴った中で《榊氏に思うこと》として強烈な苦言を残している。

《気軽に言うべきではないと思いますが、私は榊氏は病気だと思います。依存症的なものではないですか?今回の報道をきっかけに、一度病院に行ってほしいです》

 被害者女性の声は、榊氏に届くことはないのかもしれない。