吉岡康成容疑者(本人のフェイスブックより)

「逮捕されて“やっぱり、こうなったか”と思いました。なにしろ“カントク”として評判の悪かった人物なので」

 と容疑者を知る映画製作関係者は打ち明ける。人気映画監督・榊英雄による女優への“性行為強要”報道が過熱する中、同じような手口でわいせつ行為を行う“カントク”が存在した。

 映画の出演者を選ぶオーディションを装い応募してきた20代女性にわいせつな行為をしたとして警視庁池袋署は2月28日、強制わいせつの疑いで東京都練馬区石神井町の無職・吉岡康成容疑者(52)を逮捕した。

 1月25日午後6時ごろ、映画プロデューサーと名乗って被害女性に濃厚なキスシーン入りの台本を手渡し、「自分が相手役をします」と言ってキスをしたり、胸や下半身を触った疑いが持たれている。

 警察の取り調べに対し、

「そんなことはしていない」

 と容疑を否認している。

 冒頭の映画製作関係者は、容疑者が無職になる前を知る証言者のひとりだが、まずは犯行の手口を詳述したい。

 社会部記者の話。

「インターネットの掲示板に映画キャストのオーディション開催を告知。『海外映画祭で受賞実績のある映画監督が担当。クランクインは2022年4月、都内』と書き込み、そこに応募したのが俳優志望の被害女性。書類選考通過のメールを受けて当日、関西地方から上京した女性は東京・池袋駅近くの会場に到着。そこはレンタルルームとして貸し出されたマンションの一室で、ほかにスタッフの姿はない。異例のマンツーマンでオーディションは始まった」

 女性が渡された紙1枚の台本のタイトルは『教室』。

設定は“小・中学時代の同級生男女の再会”

 小・中学時代の同級生男女が再会し、母校の教室で秘めた想いを告白し合う容疑者自作のラブストーリーだ。

吉岡康成容疑者が犯行に使った台本(茜と淳は小・中学の同級生という設定、原文ママ、カッコ内は編集部)

 男性がキスを迫ると、女性はビンタ。呆然とする男性に「遅いよ」などと言いつつも、

《見つめ合う二人。二人は激しくキスをする》

 と都合よく展開する。

「最初は被害女性ひとりで2回演じさせ、3回目以降に相手役を買って出て何度もキスシーンをさせた。女性が映画監督の名前を尋ねると、合格者でなければ教えられないと答えたため、不審に思って警察に相談した」(前出の記者)

 捜査当局は防犯カメラの映像などから吉岡容疑者を特定。ほかにも同様の被害相談が寄せられており、余罪の可能性も含め関連を調べている。

 容疑者宅からは類似の自作台本が多数見つかったという。

主催する異業種交流会では女性に囲まれポーズ(ブログより)

異業種交流会を主催するバイタリティー

 閑静な住宅街の賃貸マンションで3LDKの部屋にひとり暮らし。容疑者の親族によると、妻子がいたが、2〜3年前に離婚している。

「家賃は月11万〜13万円台。何度か容疑者を見かけたが、多くはファミリー世帯なのでひとり暮らしは珍しい」

 とマンションの男性住人。

 不動産関係者によると、無職では入居できず、ごく最近、失職したとみられる。

 容疑者を知る仕事上の関係者は言う。

「以前は住宅や店舗の設計・管理・工事を請け負う建築会社の経営。風水学による住環境の改善に意欲的で、関連団体の役職を務めたこともある。コンサルタント業やパワースポットを巡るツアーも催行するなど仕事の幅をずいぶん広げていた。人脈が豊富で、異業種交流会を主催するなどバイタリティーがあった」

 容疑者のSNSでは積極的に異業種交流会を開いていた様子がわかる。人脈を駆使して講演会を企画したり、著名人との記念写真をアップするなど賑やか。実際に映画をつくったこともあった。

 容疑者がつくる映画に出演したことがある男性の話。

「いわゆるインディーズ映画ですが、プロデュースから監督までこなし、ストイックに取り組んでいました。例えば主人公がさまざまな出会いを通じて成長していくヒューマンストーリーとか。建築業出身のため、映画をきっかけに大工のような職人に憧れる人を増やしたいと話していました。出品した映画祭では認められず、本人から“落選しちゃいました”と報告があり、上映会が開かれました。まっとうな人物なので逮捕は何かの間違いではないかと思っているんです」

作品名は『宇宙をつなげるトラ』

吉岡康成容疑者と横綱・日馬富士とのツーショット(本人のフェイスブックより)

 自らも映画製作に出資したが、端役で映画出演させる代わりに協賛してくれる出資者も集めたのは18年ごろのこと。作品は『宇宙をつなげるトラ』など何本か撮っており、ベトナムで出演者オーディションを開いたこともあるという。映画業界は低予算の公開作品『カメラを止めるな』の大ヒットに湧き、自主制作映画が注目された時期と重なる。

 しかし、吉岡容疑者がメガホンをとった撮影現場では悪評が渦巻いていた。

 冒頭の映画製作関係者はこう話す。

「出演女性へのセクハラがひどかった。役者を目指して地方から上京してきた女優の卵を相手に、オーディションのときに台本にキスシーンを追加したり、気弱そうな子にはハグを多めにしたそう。監督なのに“オレが相手をしてやる”と言い出すパターン。ほぼほぼ逮捕容疑とやり口が同じなんですよ。撮影中に食事に誘うこともあった。出演女性たちは陰で“あいつはヤバい、本当にヤバい”と警戒しまくっていました」

 言い返すような勝ち気な女性には手を出さなかった。

「映画監督として才能は感じられず、作品にセンスもないし、人望もありませんでした。唯一、周囲のスタッフだけは優秀でした」(同・関係者)

 地元の知人によると、吉岡容疑者は中学でバスケ部、高校ではラグビー部の元スポーツマン。「まじめで優秀な青年だった」(同・知人)という。建築家を志し、都内の美術大学を卒業後、その夢は叶えたはずだった。

「離婚してからも、別居中の子どもたちと旅行に行くなど親子関係は途絶えなかった。大きなストレスがあったとは思えず、事件は信じられない。かつて映画をつくったことは家族にも話していたそうで、ヒューマンドラマだと説明したらしい」(容疑者の親族)

 容疑者の好きな言葉は『一期一会』。容疑が事実ならば、出会いを大切にしているとは言いがたい。