ナジャ・グランディーバ(47)といえば、マツコ・デラックスやミッツ・マングローブのお仲間として、彗星のごとく現れたドラァグクイーンでタレントのひとり。関西を中心に、切れのいい軽快なトークでファンを増やしている。
そんな彼女が、初めてのエッセイ『毎日ザレゴト』を3月24日に発売する。本の中で、“60%ぐらいで淡々と生きてる”と語っているが、生き馬の目を抜くような芸能界やオネエ業界においては意外なイメージ。メイクの奥の“素顔”を知るべくご本人を直撃してみた――。
「私たちゲイって、テンション高いと思われがちだけど、私なんて“テンション高いときあるの?”って聞かれるぐらい、いつものんびり。60%ぐらいで過ごしてるの。根底にあるのが“頑張るのが面倒くさい”って気持ちだから。いわゆることなかれ主義で、何に対してもあんまり関わりたくないっていう距離感を保ってきた結果、そうなった感じやね」
それは、もともとの性格に由来する。
「子どもの頃からずっと、通信簿に“もっと欲をだして頑張りなさい”って先生に書かれてたの。小さい頃はみんなと違う仕草やしゃべり方で、いじられたりとかはあったけど、スルーできてたというか。そういうのを受け止めるフィルターっていうかザルの網目がすっごい大きかった気がする。
“こうなりたい”なんて欲もないし、人にどう思われてもあんまり気にならない。人と比較することもしない。欲がないぶん、思い通りにいかなくて悩んだりもしないし、人は人、自分は自分って思うほうがラクやねんな」
幸せも6割でいい
「贅沢するわけじゃないけど、食べたいものは食べられるし、誘ってくれる友達も3~4人はおるし、いちばん好きでドハマリしていた女装が仕事になってるし……。今のところ幸せだなと感じられてるから、まぁそれでいいかなと。そこも欲がないんですよ。
100%の幸せを知ってしまうと、そこから6割になったら、“あの頃は良かったな”って思いにとらわれるし、幸せって、思ったもん勝ち、みたいなところがあると思う」
満点を目指さずに生きるからこそ、毎日そこそこ幸せで、大きく悩むこともない。“欲”は必要だけれど、欲張りすぎずバランスが大事と語る。芸能界にも流れに身を任せていたら行きついた。
「もともとテレビに出たいとか、有名になりたいなんて思ってなかったのよ。よくわからないうちにとんとん拍子に行きついた感じね。そんなんだから、最初から前に出ようとか視聴者に覚えてもらおうって気もなくて。
ただね、生放送で“こう言えばよかった”とか番組が終わってから反省はするんですよ。ちっちゃい落ち込みやクヨクヨは毎日するし、それは普通の人よりムダに多いかも」
小さくても人並みに悩みがあると聞き少し安心! とはいえ持ち前の“6割の処世術”で大きな悩みとは無縁のナジャさんを、唯一といっていいくらい精神的に落ち込ませるものがある。それは病気だ。
「健康面が脅かされたときは、メンタルが落ち込む性格みたい。去年コロナにかかったときも落ち込んで。もう治ってるってお医者さんも太鼓判押してくれてるのに勝手にダメって思い込んでご飯も食べられなくなったり……。健康に不安があると異常にメンタル弱くなるのよね。
だから、普段からなにかあるとすぐ病院に行くんよ。毎月、採血もしてるし、ちょっと喉が痛くても目がかゆくても病院行くし。で、なんも悪くないけど病院に行ったっていうんで、気分的にすっきりして健康になってるんですよ。“病院行く健康法”です。ほんま迷惑ですね(笑)」
失恋がきっかけで“恋愛恐怖症”に
ナジャさんが落ち着ける時間はとにかく“ダラダラ”過ごすとき。ボーッとしながら干し芋を食べて、YouTubeを見るのがお気に入りだ。
最近はタイのボーイズラブのドラマもよく見る。年下男子の恋愛に胸キュンなんだそう。そんなナジャさん、実は20歳のときにした初めての恋愛で、失恋と友達の裏切りに同時にあい、それからは1回も恋愛しないまま今に至るという。
「相当傷ついたんやろうね、私。それ以来、恋愛恐怖症みたいになって、ずっと恋愛してない。だから、47歳になったいま、後悔をいちばんしてるのがそこかも。BLドラマを見てると、みんな肌もキレイでシミもなくてピチピチで、あぁ、若いころに恋愛しておけばよかったなぁって。
いまは恋愛はしたいけど、付き合ったとして、顔近づけたときにシミだらけの顔とか、いざベッドに入ったら背中とかすごいシミあるし、変なとこから毛が生えてたりとか……そういうのをさらけ出すっていうのがネックで踏み出せない。
付き合うか付き合わないかで、うだうだしてる若い子がいたら、若いうちにいっぱい恋愛しておいたほうがいいよってアドバイスするわ!」
恋愛に関しては、普通の人と同じように悩み、乙女のように恥じらいを見せる可愛らしい一面も。
「街歩いててもタイプだなって思う人は山のようにおるけど、いかんせん自分から行くタイプじゃないから。タイミングかなと思う。死ぬまでに1回は経験しとかなあかんって思ってる。そのときは報告します」
いつか幸せな報告を聞ける日を待ちたい。
兵庫県出身。大阪在住のドラァグクイーン。『ゴゴスマ』(CBC)、『よんチャンTV』(MBS)、『バラいろダンディ』(TOKYO MX)、『ウラのウラまで浦川です』(ABCラジオ)などにレギュラー出演するなど、各種メディアで幅広く活躍