「また桜田門たちに会えて『嬉しい〜!』と思いました。あのドラマは私にとって本当に忘れられない経験で、今でもInstagramなどで桜田門の口癖の『がんばれ私、ファイトだ自分!』って、使ってしまうんですよ」
こう語るのは、女優で歌手の鈴木紗理奈さん(44)。週刊女性で好評連載中の『OLヴィジュアル系外伝 アラフィフヴィジュアル系』(作・かなつ久美)を読んでの第一印象だ。
『OLヴィジュアル系』は、週刊女性で1999年に連載がスタート。
素顔は超地味なものの、卓越したメイク技術で美人としてふるまう桜田門真恵を主人公に、桜田門の後輩で全身整形美女の目黒川さゆり、仕事一筋で美容には全く興味がなかった先輩の堀切美江子という、同じ会社に勤めるOL3人が、恋に仕事に全力投球。ついでにさまざまなトラブルもポジティブな性格とパワーで解決していく、笑いと感動に溢れたストーリーだ。
また、当時はネガティブなイメージもあった美への努力をポジティブにとらえ、最新情報を提供する内容も話題となった。
2000年には、鈴木さんが桜田門役でテレビドラマ化。好評を博し、翌年には第2シーズンも放送され、スペシャルドラマも2本制作された。
紗理奈が語る『OLヴィジュアル』秘話
その後、週刊女性では『OLヴィジュアル系外伝』シリーズを定期的に掲載。今回の『アラフィフ〜』は、タイトルどおりアラフィフとなり、仕事や家庭環境などさまざまな変化を迎えた“元OL”3人組の日常を描いている。
自身のSNSでも再三『OLヴィジュアル系』についての思い入れを語ってきた鈴木さんに、3人組との“再会”の感想と、あの頃の思い出などをうかがった。
「まずドラマのオファーが来たとき、初めての主演ということで気合が入りましたね。
当時はとても忙しくて、私も当時のマネージャーもあんまり睡眠時間が取れない日々が続いていましたが、出演者さんたちも同世代が多くて現場がとっても楽しかったので、乗り切れた気がします。視聴率もよくて、各回の視聴率が現場に貼り出されていたりして、スタッフさんたちも活気がありましたね。
ほぼ毎回“メイク前の地味な顔”という特殊メイクをしたのですが、これが仕上がるまでに1、2時間かかるんです。そのメイクをすると表情があまり動かせなくなって大変でした」
しかし、このメイクの経験は、鈴木さんにとって“財産”ともなった。
「おもしろかったのが、その地味顔メイクをすると、心も見た目に影響されていくんですね。心も地味っぽくなるんです。その顔を見られたくないと、必死に隠したくなる。だからいいアドリブも出せました。メイクの力のすごさを知ることができましたし、演技が自分から湧いて出てくるといういい経験となりました」
桜田門たちの生きざまに、自分を重ねるところがあるという。
「私が演じていた当時の桜田門は20代後半で、恋も仕事も自分のためにがんばっていました。憧れの存在である上司の関口さんに、全身全霊で愛をアピールしていたし、目黒川や堀切さんとは愛ある悪口を言いあうけれど、彼女たちになにかあったらなりふり構わず親身になったりと、あり余るエネルギーを直接ぶつけていた。
私も、息子や私の母に対する現在のやりとりがそれに近いかもしれません」
12歳の息子はイギリスに留学中
鈴木さんの息子さんは現在12歳。この年齢で親元を離れ、イギリスに留学中だ。
「普通の親子より距離が離れていることもあってか、連絡を取るときは全力で“愛してるよ”“いつもありがとう”と伝えあっています。息子は私のすべてです。息子のおかげで今の私がいる、というくらい。現在12歳ですが、まだ反抗期が来てないのか(笑)、普通に仲よしです。
母にも、私も親になって親の大変さを知ることができたから、感謝の気持ちをいつも伝えるようにしています。家族のことになると、自分のコアな部分から思いがあふれてきますね。自分の支えでもあるし、自分もいつまでも支えでありたいと思います。
桜田門のように、気持ちを素直に伝えるって、本当に大切なことだと思いますね」
恋愛、仕事、結婚、出産、離婚など、鈴木さんも桜田門たちも、さまざまな人生の節目を駆け抜けてきた。
「演じていたときは、実際の桜田門よりはちょっと年下でしたが、やはり恋愛とか仕事とか、悩んだりしたことがありましたね。あの当時はまだ、仕事を取るか結婚を取るか、という時代でしたし。そのうえ女性たちが、男性に好かれるためのモチベーションが高かった時代でしたしね。
今回漫画を読んで、とっても嬉しかったのが、自分をキレイにするために必死にメイクをしていた桜田門が、そのテクニックを使って悩んでいる人をキレイにする立場になっていたこと。桜田門が自分のためではなく、人を幸せにするために自分の力を使うようになったなんて、もう感激、胸アツですよ。そして、3人の友情がまだ続いていたこと。感情をぶつけ合える存在がいるって、本当に幸せなことだと思います。
あと! 桜田門と堀切さんの元に戻ってきた目黒川が、相変わらず完璧な美人だったのもさすが! と思いました。40歳すぎると注意しないとてきめんに体型が変わってしまうじゃないですか。目黒川はこうでなくちゃ!って(笑)」
CG技術の発達で“再ドラマ化”もOK
鈴木さんのInstagramには、いつも家族や仲間への愛情があふれている。どうしても鈴木さんと桜田門を重ねてしまう。またぜひ、鈴木さん演じる桜田門の姿を見たいものだが……。
「もちろん、また桜田門を演じたいです。あの作品はコメディーがベースなので、コメディー演じるの大好きだからめっちゃ楽しみです!
桜田門は関口さんと結婚できて、子どもも大きくなっているし、あの当時とは違ったテーマになってくるとは思います。そこで、大人になっても友情は続くし、いろんな生き方があっていい、ということを伝えられるといいですよね。
あと、あの当時は特殊メイクをしていましたが、今はCGの技術がすごいから、地味顔にするのもそんなに大変ではないと思うんですよ(笑)」
作者のかなつ久美先生もこう語る。
「収録を観に行った際、紗理奈さんは桜田門が漫画から飛び出してきたみたいにイメージがピッタリで感激しました。桜田門の憧れの存在である関口隆太郎役の原田龍二さんも、本当にカッコよかったです。
紗理奈さんが演じる『桜田門』をぜひともまた見てみたいです。あ、でも、『仕事ができてイケメン』という完璧な存在で、今は桜田門の夫である関口さんですが、現在の原田さんが演じるとなるとあの“騒動”がチラついて、複雑かな……(笑)。
彼女たちにはこの先もどこかで生活していて、年を重ねていくでしょう。その後をずっと追っていきたい。できればこの先『アラ還ヴィジュアル系』も描きたいので、私自身もがんばらないと、と考えています」
「がんばれ私、ファイトだ自分!」。鈴木さんも大切にしている桜田門のこの台詞は、いつまでも色褪せない――。
すずき・さりな 1977年生まれ、大阪府出身。グラビアアイドルとしてデビュー後、バラエティを中心に活躍。2003年からは、レゲエシンガー・MUNEHIROとして音楽活動を行う。2010年2月、第1子男児を出産。2017年、主演映画『キセキの葉書』で、スペイン『マドリード国際映画祭』の最優秀外国映画主演女優賞を受賞。
4月13日(水)22時〜スタートのドラマ『ナンバMG5』(フジテレビ系)に、主人公の母・ナオミ役で出演。 ※初回15分拡大(22時~23時9分)
かなつ久美 神奈川県出身。1990年漫画家デビュー。1999年に週刊女性で連載した『OLヴィジュアル系』が大ヒット。趣味は美容と保護犬ボランティア。最新刊は絵本『もしボクにしっぽがなかったら』(みなみ出版)
取材・文/木原みぎわ