「今だから学びたいことがあって、頑張ったらこの先の人生、必ず違うと思える」
来春に大学受験に挑戦することを表明した小倉優子。これはバラエティー番組『100%アピールちゃん』(TBS/毎日放送)の放送で発表され、ドラマ『ドラゴン桜』の監修も務めた、現役東大生の西岡壱誠さんが勉強法を伝授するのだという。しかも狙うは難関校の早稲田大学ーー。
「彼女は法政大学文学部第二部に在籍していました。仕事が忙しくなり中退していますが、番組で告白していたように、10代でおろそかになってしまった勉強をやり直したいというのがきっかけのようです」(芸能事務所関係者)
とはいえ、3人の子どもの母親で主婦をしながら、タレントとしても活動している“社会人”だ。勉強時間を1週間で15時間は確保する、としていたが、番組内で全国統一模試の英語の過去問題に挑戦した彼女の点数は、200点満点で、52点だった。
「正直、ちょっと難しいかなという印象ですね」
こう話すのは、大学ジャーナリストの石渡嶺司さん。
「今までほぼほぼ勉強にノータッチだった方が、1日2時間程度の勉強時間で受かるかなと。しかも小倉さんは母親でもありますので、育児なども当然あるわけです。育児には病気などの突発的な出来事も起こります。勉強の計画も立てにくいのではないでしようか」
吉永小百合や島田紳助らも挑戦
振り返れば、芸能人やタレントが大学受験に挑戦するというニュースが報じられたことは多々ある。
「古くは1965年に吉永小百合さんが早稲田大学の第二文学部に入学しました。おそらく、これがタレントとして仕事をしながら大学に入った走りかなと思います。
その後、1982年に島田紳助さんがテレビの企画で東大を目指しました。これがテレビ番組が絡んだ、初めてのケースですね」(石渡さん)
社会人の立場で芸能人が大学受験をする場合、ふたつのパターンに分けられる。ひとつは自分の意思で“学びたい”と挑戦するパターン。
「吉永さんのほか、2000年に早稲田大学の第二文学部に社会人入試で合格した東国原英夫さん。当時は、そのまんま東さんでしたね。あと、2015年には萩本欽一さんが駒澤大学仏教学部に入学しています」
最近では、高校を卒業して大学へと進学するタレントも増えてきている。こういった流れについて石渡さんは、
「2000年代の半ばくらいからジャニーズ系タレントを中心に大学進学者が増えています。タレントにとって高学歴という“箔”(はく)がつくことと、2010年代後半以降になるのですが、テレビ局が炎上リスクを恐れるようになり、その対策として大学進学が求められたことが背景にあるのでしょう」
タレントが非常識だったり的外れなことを言ってしまい、炎上する可能性が増えている昨今。大学で勉強する中で、社会性などを積んだタレントの需要が増えたことなのだという。
そしてもうひとつは、番組の企画として受験するもの。ある意味、こちらは仕事の延長線といえる。
「島田紳助さんがこのパターンです。彼は共通一次試験の会場で、彼の受験阻止を訴えるグループや取材陣とトラブルを起こし、ブチギレた紳助さんが受験しないで終わってしまい、当時は話題になりました。
みなさんの記憶に残っているのは、『進ぬ!電波少年』の企画で受験した、芸人の坂本ちゃんではないでしょうか」
拉致されて1日12時間の受験勉強
2000年に『電波少年的東大一直線』という企画で東大を目指した坂本ちゃん。東大にはセンター試験で点数が足らず、受験することができなかった。しかしその後、私立大学入学に目標を変更。結果、8校に合格し、日本大学文理学部に進学した。前出の石渡さんは、
「一般入試での合格でしたし、企画としては大成功だったと思う」
と振り返る。さて当のご本人の坂本ちゃんは、当時どんな気持ちで受験したのか? その胸の内を聞いてみた。
「あたくし、大学というのにすごく憧れていたんです。日大附属高校だったんですけど、内部の推薦入試に落ち、一般入試でも不合格で……。
キャンパスをみんなで笑いながら歩いて、テニスサークルとかに入って青春するという理想があったのに(笑)。『進ぬ!電波少年』企画のオーディションの時も、大学生になりたい! の一心でした。その結果、拉致されて受験勉強することになったんですけど」
1日、10時間、ときには12時間以上も勉強したという坂本ちゃん。東大は残念だったが、見事大学生になった。しかし、7年間在籍して中退ーー。
「今振り返ると、大学生になりたかっただけで、その後の勉強までは考えていなかったんですね(笑)。入学したのが34歳。クラスメートはみんな年下なんですよ。20歳近く離れている生徒と一緒の中で、完璧に浮きまくっていて(笑)。
あと、『進ぬ!電波少年』のおかげであたくし、当時“旬”でしたから、ちょっと動くだけで周囲の視線を感じるわけです。もう見せ物になっている感じで……」(坂本ちゃん)
自身が商品でもあるタレントならではの悩み。これは小倉にも当てはまることだろう。1日の大半を勉強に費やした坂本ちゃん、当時は早稲田大学の第二文と社会科学部にも挑戦しているが、残念ながら不合格に。坂本ちゃんと比べて、勉強時間に費やせる時間が圧倒的に少ない小倉だが、“秘策”があるという。
「大学入試改革」で受験が変わる
「番組を拝見したところ、試験が記述式ではなく4択の選択問題である教育学部を狙うようですね。確かに他学部に比べて競争率も低いので、受かりやすいというのは、今の時点でいえば正しいと思います」(石渡さん)
“今の時点”ということを強調する石渡さん。そこには『大学入試改革』という、国の取り組みが関係してくると話し、こう続ける。
「具体的に言いますと、入試内容が大幅に変更される可能性があるんです。それも突然に。2021年には早稲田大学政経学部の入試に数学が必須になりました。また、青山学院大学では総合問題という記述式の試験を導入しています。
昨年、センター試験から共通試験に変わリました。世間一般ではこれで改革が終わったと思われているかもしれませんが、大学が個別で試験を変えてくださいというのが文部科学省の方針です」
この流れの中、2023年から2025年にかけて各大学で改革が急速に進む見込みがあるという。
「それこそ、早稲田大学の教育学部で記述式が採用されたり、数学が必須になったりなんてこともありうるわけです。一般入試については前年の7月までにこうした変更を発表すればいいので、万が一試験内容が変わりましたら、今の“秘策”は通じなくなります」(石渡さん)
こうした動きを踏まえた上で、石渡さんはこうアドバイスする。
「一般入試にこだわるのであれば、全教科を勉強するのは難しいので、まずは英語に集中することです。改革の流れの中で、英語民間試験の結果を反映させようというものがあります。『実用英語技能検定』ですとか『TOEIC』です。すでに上智大学が導入していますが、『実用英語技能検定』の準一級レベルを取得していれば、英語科目の免除や、試験結果への加点を行うというものです」
確かに、1教科に絞れば効率はよくなる。
「1年で準一級レベルまで達するのもハードルは決して低くはありません。でも、全教科のレベルを上げるよりはまだ現実的。英語を勉強する合間に、ほかの教科を勉強するというのがいいかなと。
英語なら万が一大学に入れなくても、小倉さんの芸能活動のプラスになりますし。でも、どうしても大学に入りたいというなら、受験科目が減ったり、書類審査や面接などで人間性を評価する社会人入試をオススメしますが、テレビ的にはまったく面白くないですね(笑)」(石渡さん)
そして、大学入試の“先輩”坂本ちゃんはこんなエールを小倉に送る。
「早稲田大学を受けたとき、英語の長文問題が日本語のように読めたんです。これが辛い勉強を重ね、知識がたまってきた結果なんだ、とびっくりしたことは今も覚えています。もう快感でしかなくて(笑)。本当に頑張って欲しいです」
さて、来年の今ごろ、彼女の元にサクラは咲くのかーー。
取材・文/蒔田 稔